【事例紹介あり】企業が追求すべきサステナビリティについて

サステナビリティとは、もともとはグローバルな環境の持続性を表現する概念だったが、今やこの言葉は、さまざまな領域で用いられるようになった。

この記事では、企業におけるサステナビリティの意義についてその基本概念、CSRとの違い、また日本企業の事例を用いて説明する。

グローバルな地球

1.「サステナビリティ」の意味を理解する

サステナビリティ(sustainability)の基本概念は、「持続可能性」と訳されるように、あるシステムが長期間に渡り存続できる能力を指している。この概念を理解するための前提として、まずシステムの特性を理解しておく必要がある。あらゆるシステムには外部が必要といえる。

なぜなら、活動によって生じる無秩序を「エントロピー」と呼ぶが、システムの秩序を維持するためには、エントロピーをシステムの外に放出する必要があるからだ。エントロピーを処理できなければ、秩序が保てなくなりシステムは崩壊する。

1-1.動植物の生態系について

ところが、地球上にあるシステムはエントロピーを捨てることができない。地球という生態系は有限な閉鎖系だからだ。では、どうしているかというと、動植物の生態系は食物連鎖によって結びつき、相互補完の関係をつくることで、サステナビリティを維持してきているのである。

たとえば、ある生物の排泄物や死骸が、他の生物の食料や生命維持のための重要な要素になったりしているのだ。わかりやすい例は植物と動物の呼吸に見られる。

植物は二酸化炭素を吸収し光合成を行い酸素を排出するが、動物はその酸素を呼吸で吸収し、二酸化炭素を排出している。

2.企業のサステナビリティ

工場建物と青い空

近代以降の人間とその活動は、サステナビリティを持つ自然の連鎖から離れてしまった。

たとえば、ある工場があって、排出される有害な工場廃液を川に捨てれば、工場内の生産システムは持続可能になるかもしれない。ところが、河川や近隣の土地は汚染されてしまい、そこに住む他の生物にとっての多様性と持続可能性が失われてしまうことになる。

このことに人類が気がついたのは、1980年代である。当時、公害問題による環境破壊や化石燃料の枯渇が警告されて、それまでの人間中心の考え方や方法では人類自体の存続が危ぶまれるという危機感が世界的に共有された。

そこで、今後も継続的な人類の発展を保証するための視点として、持続可能性が評価されてきたのであった。このような経緯から、持続可能性を考察する対象は、経済・政治・社会・文化などの人類の活動全般に適用されるようになった。そして、企業におけるサステナビリティもその全域を射程としている。

3.企業活動におけるサステナビリティとCSRとの違い

サステナビリティの概念を企業経営に適用したものを、コーポレート・サステナビリティ(Corporate Sustainability, CS)と呼ぶことがある。これは、企業の事業活動が経済・社会・文化などに与える影響を考慮して、長期経営戦略に組み込んでいく態度を指している。

上に挙げた3要素と自社の存在意義の関係についての意思表明といえる。つまり、人類全体の利益向上に貢献しつつ、同時にどのように自社の利益を得るのかという、企業倫理の本質を規定する問題意識の上に成り立つ概念だ。これが本来のコーポレート・サステナビリティの意味である。一方で、企業の社会的責任(Corporate Social Reponsibility, CSR)という概念がある。

これについては、消費者側と企業側、また日本企業と海外企業ではその理解が若干異なるといわれている。一般にはCSRは、企業がその本来の業務とは別に社会貢献活動としてボランティアを支援したり、芸術活動に補助金を与えたりするものと考えがちである。

これに対して、日本企業の考えるCSRとは、環境に影響を与えないように、企業の利益のみを考えた活動を抑制したり、利益の一部を社会に還元したりすることである。つまり、企業活動の本質とは関係がなく、二次的で余裕があるときに行う「施し」であり、コスト要因と捉えられている。そのため、企業の収益が悪化するとCSR活動も縮小されることが多い。

3-1.海外企業について

海外企業では、どちらかといえば、企業活動が引き起こす経済・社会・文化に対しての悪影響をどのように軽減させるかというリスクマネジメントと結びついている。ここでCSとCSRを比較すると、CSはCSRの進化した考え方といってもよい。CSRは、余裕があるときの社会的施しや訴訟リスクを低減する手法として、企業という安定した組織内部から外部環境を見る考え方だ。これに対して、CSでは、環境から組織を考えるという逆の見方で企業価値を捉える。環境の変化に対応して、社内の意思決定プロセスを見直し、従業員への教育を怠らず、常に企業を作り変えていく。要するに、CSのほうが不安定さのリスクを恐れない、クリエイティブな概念なのである。

4.コーポレート・サステナビリティのメリットとデメリット

4-1.メリット

CSを追求するメリットは、上手く機能すれば企業の存続と社会的な役割の両方が満足できる点である。自社の利益の追求と、市場占有率の向上のみを目標にするような20世紀的な企業価値のもとでは、企業の社会的役割などは積極的に考える対象ではなかった。

考えたとしても、それは外圧に対して体面を繕うためのポーズのようなもので、実態は消極的な対応が基本であった。ところが、CSという価値観で企業活動を考えれるようになれば、社会と自社の利益追求の両立を宣言することになり、従来の方法のままでは対応できなくなる。

4-2.デメリット

ここで、CSという考え方を実現するために、企業の根幹から変革に成功すれば、消費者の賛同も得られ、結果として利益が大きくなるのである。このようなプロセスにおいては、一時的に産みの苦しみとしてのデメリットが生じる。

たとえば、CS的組織に変革する際に起こりがちな既得権益者たちとの主導権争いなどがある。その際に、有能な人材がその組織から離れていく可能性はある。ただし、このようなリスクを経なければ、改革は進まないのだ。

5.資生堂に見るサステナビリティの事例

資生堂のCSR

出展:資生堂

コーポレート・サステナビリティを明確に示している企業の一つに、東京銀座に本店を置く大手化粧品メーカーの資生堂がある。

「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(ビューティーイノベーションでよりよい世界を)」という企業使命を提示して、環境・社会・文化に対しての自社の役割を示しているのだ。公式webサイトによれば「本業であるビューティービジネスそのもので社会課題の解決や、人々が幸せになるサステナブルな社会を実現」するとの宣言が見られる。

つまり、化粧品メーカーが本業の他に社会貢献をするのではなく、本業そのものとして社会貢献に取り込もうとしているのである。

5-1.サステナビリティと、マテリアリティ

企業がサステナビリティを考えるときには「マテリアリティ」とよばれる重要課題を設定するのが常道である。資生堂では、本業の「ビューティー」から離れることなく、縦軸に社会的重要度、横軸に自社のビジネスへの重要度としたマトリックスを公開している。

そこには、環境・社会・文化という3つのジャンルが措定され、そこにガバナンスのクライテリアを加えて、全部で18のマテリアリティの分布を見ることができる。

3つのジャンルはBeautyという観点から、Protect Beauty、Empower Beauty、そして Inspire Beautyと表現されている。また、マテリアリティの例としては、水資源の効率的な仕様、従業員の労働安全衛生と健康、アート&ヘリテージ、そしてガバナンスの強化と説明責任などがある。

さらに、サステナビリティの達成目標であるSDGsと自社のマテリアリティの関係も示されており、企業理念を社会に開く理想的な存在といえよう。

6.企業サステナビリティは資生堂に学べ

コーポレート・サステナビリティの概念を理解するには、実際の事例を研究するのがよい。

とくに、資生堂の例はサステナビリティのみならず、企業理念やマテリアリティなどについて、具体的に示されている。ぜひ参考にしてもらいたい。

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