新しいメディアのあり方として「News Picks」が注目を集めている。
急成長の背景には、ほかのメディアにはないアイデアがあった。
この記事では、News Picksのビジネスモデルを通して、現代社会で成功する事業を考えるポイントを解説する。
目次
1. News Picksのビジネスモデルは?概要を解説
1-1 90以上のメディアからニュースをピックアップ
2013年9月に公開されたニュースアプリの「news Picks」はあっという間に大反響を巻き起こした。
2019年1月時点で会員数は360万人を突破し、アプリとしては驚異的な成長率を見せている。
News Picksのビジネスモデルがユニークだったのは、キュレーションが中心だという点だ。
News Picksは90以上のメディアからニュースを厳選し、ピックアップする。
会員は各メディアから質の高い記事だけを読めるので、効率的に情報収集できる。
しかも、トピックは経済や政治からスポーツ、エンタメまで幅広い。スマホで手軽にさまざまなニュースを読みたいネットユーザーのニーズにも応えてくれるのだ。
1-2 キュレーションシステムがもたらした広がり
News Picksでは会員が気に入った記事をキュレーションすることができる。
意見や感性の合う会員をフォローすれば、読みたい記事をおすすめしてもらえる仕組みだ。
しかも、News Picksには実業家や評論家といった著名人も登録している。
彼らがキュレーションする記事はそれだけで貴重だし、コメントをチェックすることで深い見解まで読み込める。
従来のメディアでは、ニュースが掲載されているだけで、その見方まで学ぶのは難しかった。
しかし、News Picksではニュースを読みながら教養を高めることもできる。
複数のフォロワーの意見を読めば、異なる立場の見解を知れて視野も広がっていくだろう。
2. News Picksはどうやって利益を生み出している?
2-1 広告収入の限界を感じていた
通常、メディアが安定した収益を生み出すためには、広告収入が手っ取り早い。
しかし、News Picksは広告収入を否定するところからスタートした。
スマホやタブレットなどの小さい画面で見ることを前提としていた以上、広告バナーが邪魔になると考えたからだ。
また、広告収入は永続的とはいえず、どのようなきっかけで途切れてしまうかは予想できない。
そこで、News Picksは会員からの課金制による運営にこだわった。
その結果、News Picksは会員が増えるにしたがい、利益も向上していくという理想的な運営状況を築き上げている。
紙媒体のメディアが減っていく中、News Picksには先見の明があったといえるだろう。
2-2 ネイティブアドの可能性
ただし、News Picksはすべての広告収入を拒否しているわけではない。
たとえば、「ネイティブアド」のように会員が楽しんで読めるものであれば、積極的に掲載していく方針を打ち出している。
ネイティブアドとは、広告の中でもより読み物に近い形態を指す。ネイティブアドは、読者が知らなかった情報を伝えることに主眼を置いている。
読み終えた人は、商品・サービスの価値をしっかりと理解したうえで、購入意欲をあおられる。
ネイティブアドは、物量作戦になりがちなネット広告と違い、読者の満足感を引き出しやすい。会員からの課金とネイティブアド、この2つがNews Picksの大きな収入源となっている。
3. News Picksの成功の秘訣は?
3-1 質にこだわったメディア運営
ニュースアプリやニュースサイトを見ていると、ソースも不透明な俗っぽい記事が後を絶たない。
中には、炎上目的としか思えない、扇情的な内容の記事さえもある。広告収入がメインになってしまうと、PV数を稼ぐためにメディアが極端な方向性に走るのは致し方ない。
しかし、News Picksは有料会員を増やして利益を得ようとする方針が明確だった。
そのため、「読まれる記事」ではなく「質が高く満足度の高い記事」にこだわることができたのだ。
News Picksのオリジナル記事は充実しており、鋭い視点が会員から好評を得ている。
いまや、News Picksが時事問題にどう切り込むかは、多メディアからも注目されているほどだ。
3-2 コミュニティ形成という新しい発想
News Picks立ち上げの際、運営元である株式会社ニューズピックスは積極的なプロモーションを行い、有名な識者たちを巻き込むことに成功した。
News Picksがリリースされてすぐに盛り上がったのは、「この人の意見を聞きたい」と思える会員がたくさんいたからである。
そして、一般の会員同士でもNews Picks内ではコミュニティが形成され、活発な意見交換へとつながっていく。
鋭いコメントを連発している会員がいたら、社会的な知名度が上がる可能性もあるのだ。
単に読み物として優れているだけではなく、人とのつながりをサポートしてくれるのもNews Picksが新しかった理由のひとつである。
4. News Picksの会員はどう思っている?評価をチェック
4-1 口コミからNews Picksの評判を調べる
インターネット上にはNews Picksについての意見がたくさん投稿されていた。
その中から、会員のものと思わしき意見をまとめてみる。
・経済的
News Picksの有料会員プランは月額1500円である。
ただ、ピックアップしているメディアには有料のものが多く、それらすべてと契約する負担を思えばかなりお得といえるだろう。高品質ではあるものの高額な月額で有名なメディアの記事も読み放題だ。
「読みたかった記事が読めるようになった」との感想がネットでは見つかった。
・動画でわかりやすく経済を学べる
「たまにアップされる動画が面白い」という口コミもある。
News Picksでは旬の評論家・実業家などによる動画が制作されており、読者にとって有益な情報をわかりやすく解説してくれているのだ。
・オリジナル記事が充実
さまざまなメディアの記事を読めるのがNews Picksの特徴ではあるものの、オリジナル記事への高い評価も散見された。News Picksが決してただのキュレーションアプリにとどまるメディアではないことを指し示している。
・News Picks疲れ
「ニュースを読むと、コメントをしなければいけないという気持ちにさせられる」との意見もあった。
その結果、プレッシャーを感じてしまい、気軽にニュースを読めなくなったというのだ。
いわゆる「News Picks疲れ」を感じてしまう人もいる。
逆をいえば、News Picksが会員と密接な関係を築いている証なのだろう。
5. News Picksの理念が日本のメディアを変えていく
5-1 人々の発見と理解
ニュースを通じて人々の発見と理解を導くのが、News Picksの基本理念である。
メディアとは、情報を羅列するだけの場所ではない。
掲載した情報に対して、読者が知覚を刺激されるからこそメディアは役割を果たしているといえるのだ。
News Picksの運営は「儲けるためにやっているのではない」と語る。
既存のメディアではカバーしにくくなっている部分を、自由度の高いアプリによって実現しようと試みているのである。
News Picksが多くの人に支持されているのは、ほかのメディアからは感じとれない興奮を彼らが覚えているからだろう。
5-2 今後の課題と対応策
もちろん、News Picksにも課題はある。
たとえば、会員数が増大したことにより、コメント欄の質に変化があった。
かつては目につかなかったレベルの稚拙な文章が散見するようになってきたのである。
ただし、こうした現象はメディアが成長していくうえでは十分に予測できたことだ。
News Picksでは実名登録の会員を優先するなどして、責任ある行動をとってもらえるよう呼びかけている。
こうした動きに対して、会員から反発の声が出ていないわけではない。
しかし、匿名文化が浸透したニュースサイト、掲示板などがどのような末路をたどったのかを考えれば、News Picksの方針はあながち排他的ともいえないだろう。
むしろ、日本のメディアが誇りを取り戻すための意義ある挑戦なのだ。
6. News Picksのビジネスモデルは「質優先」
質の高いコンテンツを作れば、消費者はついてくる。
News Picksのビジネスモデルの根底にはそんな考えがある。
すべてのビジネスパーソンは仕事を進めていくうえで、戦略やノウハウよりも先に「質」への意識を再確認するべきだろう。