ソフトウェア開発事業は競合他社が多く、玉石混交の状態だといえる。
そんな中、ユニークなビジネスモデルで急成長を遂げているのが株式会社ソニックガーデンだ。
この記事では、ソニックガーデンが成功した秘訣を解説する。
目次
1. ソニックガーデンはどんな会社?業界内での評判は
1-1 ソフトウェアは庭と同じ
2011年7月、倉貫義人さんによって株式会社ソニックガーデンは設立された。
事業内容は ウェブアプリケーションの受託開発からソフトウェア開発、社員教育まで多岐にわたる。
2019年の時点で数多くの大企業と取引を重ねており、IT業界を代表する企業のひとつになりつつある。
ソニックガーデンという名前には、「ソフトウェアとは庭と同じで手塩にかけて育てるもの」というメッセージがこめられているという。
そして、倉貫さん率いるソニックガーデンは、顧客との関係性やプログラマーの育て方などの面で、革新的な方針を打ち出して注目されるようになった。
1-2 さまざまな媒体から高評価を得る
ソニックガーデンの進歩的なビジネスモデルは、業界内で高く評価されている。
2018年02月には「第3回ホワイト企業アワード イクボス部門賞」を受賞、翌年2月にも「第19回テレワーク推進賞特別賞」を受賞するなど、勢いに乗っている企業といえるだろう。
中でも、2018年02月 に「働きがいのある会社ランキング」5位でベストカンパニー賞に選出されたときは大きな話題となった。
ソフトウェア開発はともすれば、激務続きでプログラマーから「やりがいのない仕事」との烙印を押されてしまう。
しかし、ソニックガーデンの社員たちは日々の作業に前向きな姿勢で取り組み続けている。ソニックガーデンが急成長したのは、社員のモチベーションの高さが大きな要因だろう。
2. どうしてソニックガーデンのビジネスモデルは内外から愛される?
2-1納品のない受託開発
まず、顧客とソニックガーデンの絆を強くしているのは「納品のない受託開発」という取り組み方にある。
従来のソフトウェア開発では、顧客の願望を叶える商品を完成させて納品することを目指す。
しかし、ソニックガーデンは納品という概念を取り払った。顧客からソフトウェア開発を受託した時点で、長期的に意見を吸い上げながら微調整を繰り返していく。
つまり、ソニックガーデンの仕事には終わりがない。顧客からすれば、ビジネススタイルに合わせて永続的にソフトウェアを調節してくれるのだから安心だ。
こうしたビジネスモデルがソニックガーデンの信用を高めているのである。
2-2 職人としてプログラマーを扱う
納品のない受託開発を可能にしているのは、プログラマーの高いプロ意識だ。
ソニックガーデンのプログラマーは商品を完成させて終わりではなく、長期的に顧客から必要とされる状況にやりがいを感じている。
プログラマーに単なる流れ作業を求めて、とにかく量産体制を築こうとする会社も多い。
しかし、ソニックガーデンではプログラマーをプロの職人として扱い、仕事を通じて成長できる環境を整えているのである。
これまでのソフトウェア開発では、プログラマーはエンジニアの指示に従うポジションとの偏見も色濃かった。
ソニックガーデンのプログラマーは能動的にアクションを起こし、自由に仕事をすることが許されている。
3. ソニックガーデン成功のポイント!ライバルに差をつけられた理由
3-1 コストを抑えられる仕組みを確立
ソフトウェア開発でソニックガーデンが突出した存在になりつつあるのは、「コストパフォーマンス」が大きい。
特に、社内システム開発を外部委託する場合、できるだけコストを抑えたい企業は多いだろう。
しかし、納品されたソフトウェアに支障があったり、時間が経過して操作性に不備が出たりすると、細かな追加料金が発生してしまう。
想定した予算を超過するケースも珍しくない。
その点、ソニックガーデンは月間定額制を基本にしているので企業は予算をとりやすい。
たとえ追加作業が発生しても追加料金はとられないので、経費の心配がなくなるのだ。
3-2 ITの知識がない企業も安心
ソニックガーデンは一部の、ITへの意識が強い企業を相手にしているわけではない。
むしろ、ソニックガーデンは積極的にITを苦手としている企業とも取引をし、好印象を得てきた。
なぜなら、ソニックガーデンはソフトウェアやシステムの企画段階から、親身になってヒアリングを行う姿勢を貫いているからである。
そして、ときには最高技術責任者(CTO)を企業に紹介し、雇ってもらう。
CTOが窓口となってプログラマーと会話をしてくれるため、企業側の知識不足はカバーされるのだ。
もちろん、CTOにふさわしい実力をそなえた人材を自社で育てるだけのノウハウも持っている。
ここまで企業に寄り添う姿勢がライバルとの差になっているのだろう。
4. ソニックガーデンと仕事をした会社の感想は?
4-1 顧客と社員の口コミ
インターネット上にはソニックガーデンの顧客と社員、両方の感想が投稿されていた。以下、目立った意見を紹介する。
・赤字のリスクが減った
やはり、顧客側からは予算についての高評価が投稿されていた。
ソニックガーデンの定額料金だと、契約時に正確な予算が確保できている。
よほどのことがない限り、それを超えて追加料金を請求されることはない。
企業のシステム担当者を悩ませてきた予算問題が解決されるのである。
・サービスとしての満足度が高い
ソニックガーデンは「プログラマーもサービス業である」との意識を持っている。
何しろ、月ごとに定額料金を支払ってもらっているわけだから、毎月料金分の仕事はしなくてはいけない。
常に新しい提案をしたり、システムの課題を発見したりして顧客満足度を高めないと契約は更新してもらえない。
こうしたプログラマーの姿勢が顧客にも伝わり、ソニックガーデンの大きな強みとなっている。
・プログラマーの意見
ソニックガーデンでの勤務暦を持つプログラマーの意見もネットには載っていた。
「納品のない受託開発」はプログラマー側にもメリットがあるらしく、「事前に仕事内容が決まっていないので臨機応変な対応ができる」のは余裕につながったとのことだ。
また、予算を気にせずに提案ができるのはプログラマー側からしても楽だったという。
5. ビジネスパーソンが見習うべきソニックガーデンの姿勢
5-1 部下にやりがいを与える
離職率の高い企業ではたびたび「やりがい」が取り沙汰される。
「仕事にやりがいを持てないのは自分が悪い」と主張するのは自分勝手な理屈であり、社員のモチベーションアップも上司の仕事のうちである。
ソニックガーデンは、頭数扱いされがちだったプログラマーに敬意を払い、彼らが誇りを持って働ける環境を整えた。
プログラマーが自ら顧客とコミュニケーションをとり、自分の意見を提案することをサポートしたのである。
社員にやりがいを与えれば、彼らは成長して会社に還元してくれる。そのためには、割り振る仕事の内容をしっかりと見直そう。
5-2 発想を制限しないために動く
ソニックガーデンでは「納品をしない」「定額料金をもらう」などのアイデアで、顧客と自由な相談ができるシステムを構築した。
多くのビジネスで発想を制限していた「予算」の縛りを取っ払ったのである。
革新的なビジネスを起こすためには、アイデアを押さえつけるような環境があってはならない。
プロジェクトに関わる人間すべてが、純粋に「いい仕事をする」ためだけに動ける状況を作り上げよう。そうすれば、ライバル社には思いつかなかった提案もしやすくなるはずだ。
6. ソニックガーデンのビジネスモデルからやりがいを学ぶ
「やりがい」は社会人にとって大きな原動力となる。
ソニックガーデンはプログラマーにやりがいを与えることで頭角を現した企業だ。
そのビジネスモデルは、自由に仕事のできる環境がいかに人を成長させるかを教えてくれる。