原価で販売する自身の著書『実験思考』や、品ものを一瞬で現金に換えるアプリ「CASH」などで一躍時の人となった光本勇介氏。
彼がビジネスの世界において成功した要因は一体どこにあるのだろうか。
こちらの記事では、光本勇介氏の経歴やビジネスにおいて大切にしていること、世間の話題をさらう「実験」などについて詳しく解説していく。
目次
1. 「光本勇介」とはどんな人物か?
神奈川県出身の光本勇介氏は、10~18歳までを海外で過ごした帰国子女だ。
初めの4年間は父親の仕事の都合でデンマークに暮らし、その後彼一人だけがヨーロッパに残ることを決め、中学時代にイギリスにあるアメリカンスクールへと進学する。
もともと日本が大好きだった彼は、高校卒業のタイミングで日本に帰国し、青山学院大学国際政治経済学部へ進学することに決めた。
2008年には株式会社ブラケット(現ストアーズ・ドット・ジェーピー株式会社)を創業し、短時間でオンラインストアが作れる『STORES.jp(ストアーズ・ドット・ジェーピー)』のサービスを開始するも、2013年にはスタートトゥデイ社へ売却。
その後、ブラケット社の取締役会長、株式会社バンクの代表取締役を経て、2018年にhey株式会社を設立し取締役に就いている。
2. インターネットの可能性に衝撃を受けた高校時代
イギリスで過ごしていた高校時代、長期の夏休みを利用しては日本へ帰国していたという光本氏。
当時流行っていた裏原系のファッションに興味を持ち、少ないお小遣いの中でブランド物の洋服を買っては楽しんでいたと話す。
当時はまだヤフオクもない時代なので、個人で物を売るのがメジャーではなかった。
インターネットに関心のあった彼は、ある時パソコン通信の掲示板で物を販売している人の存在を知る。
その真似をして、使用済みの洋服を半信半疑で売りに出したところ、なんとすぐに地方の人から注文があったという。
しかも、販売価格は新品の値段だったというから驚きだ。
これに味をしめた光本氏は、さっそく翌日洋服を買い込み同様に販売するという経験を繰り返す。
「安く仕入れて高く売ることで利益が得られる」というビジネスの基本的な考え方に彼が触れた瞬間だった。
また、インターネットを介することで、距離を超えて売買ができることにも感動した体験だったという。
面白いほど洋服が売れることで日給に換算すると10万円ほどの利益を得ることができた。高校生のお小遣いとしては莫大な金額だっただろう。
その後、ヤフオクが登場し、競合が増えたことで商品はなかなか売れなくなっていく。
3. 大学時代にクラウドソーシングの先駆けとなるサービスをスタート
また、大学時代には翻訳のクラウドソーシングサービスを立ち上げて多くの仕事を得る。その方法とは、まず電子掲示板で翻訳の仕事を募集し、応募してきた翻訳者の連絡先をリスト化する。
当時、インターネットがまだ一般に普及していなかったので、地方に住むフリーランスの人にとっては仕事を探すのが至難の技だった。
そのため、短期間で翻訳者の数は思った以上に集まったという。
その後、まるで翻訳会社であるかのようにホームページを作成し、企業などから翻訳の依頼を受けることとなったのだ。
まだ企業がホームページを持つ以前の頃だったので、光本氏のホームページは検索の上位に登場し大企業からもどんどん仕事の依頼が来るようになった。
学生には十分すぎる収入を得ることができ、お金を稼ぐことをゲームのように楽しんでいたと話す。
これらの経験が、自身で起業しビジネスをつくり出していきたいと思うきっかけになったようだ。
4. 大企業への就職を経て独立
意外に思えるかもしれないが、光本氏は一度大企業への就職経験がある。
自分で試行錯誤しながらビジネスを成功させていた彼だったが、大企業の人たちと対等にやりあえなかったという苦い経験もしていた。
一度大企業に就職し、組織の構造やビジネスの基本的な作法などを学ぶことで、今後自分が起業する際にもその経験が活かせるのではないかと思ってのことだった。
そのため、さまざまなビジネスの実態を見て学べる場所として、当時興味を持っていた広告業界の中から外資系広告代理店の「Ogilvy & Mather Japan」を選んで入社することとなる。
こちらの企業では営業を5年ほど経験し、大手企業のマーケティング支援を担当していた。
その後、折しもリーマンショックの中、ビジネスチャンスを見つけ出して独立することとなる。
はじめは自宅をオフィスにして一人で立ち上げたビジネスだったが、彼のビジネスセンスをもって徐々に規模が拡大していったのだ。
5. ビジネスにとって大切なこととは?
あらゆることに興味を持ち常に時代の先を駆け抜けている光本氏だが、彼がビジネスにおいて大切にしていることとはなんだろうか。2つのポイントに注目して見てみよう。
#新しい市場となる可能性を秘めているか
光本氏にとってビジネスで大切なことは、「そのサービス一つで新しい市場をつくりだせる可能性があるかどうか」。
彼が手がけてきたビジネスの一例を見てみよう。
たとえば、「shoes of pray」の登場により、これまでネット上では既製の靴しか買うことができなかったが、オリジナルのデザインや形の靴をオーダーメイドすることができるようになった。
これは、彼がインターネット上でのオーダーメイド市場に大きな可能性を感じていたことが発端となる。
また、「ModelTown」というマッチングサイトでは、モデルとモデルを必要とする企業の橋渡し的役割を担うこととなった。
アマチュアのモデルや低予算でモデルを起用したい企業は世の中にごまんといたことでマッチングがうまくいった成功例だろう。
世の中のニーズにいち早く目をつけ、問題を解決するためのサービスをつくることがビジネスのスタート地点だという。
とりわけ、彼が日常生活の中で疑問に思うことや不便に感じることなどから着想を得ることが多いそうで、今まで存在していなかったものをつくりだして一つの市場をつくる。
彼が何かビジネスを始めるときには、いつもその考えが頭を占めているのだ。
5-1 市場の選択とタイミング
新規事業を立ち上げる上で大切なのは、市場の選択とタイミングだと話す光本氏。
どんなに流行りの商材を扱っていても、儲けがなければビジネスとして意味がないのだ。
利益を得るためには市場の選択とタイミングはどちらも欠かせないもので、両者のバランスが揃ってはじめてビジネスは軌道にのるという。
6. 投資家・光本勇介の理念
自身が起業家の光本氏だが、実は投資家として起業家へ出資しているという側面も持っている。
あらゆるものに関心を持つという彼は、時間の制約から興味あるすべてのビジネスに携わることができないため、面白いと思うサービスを支援するために投資を行っていると話す。
業界ごとの課題を解決するためのアイディアを持つ人を支援することで、少しでも役に立ちたいと思っているのだ。
また、彼が投資する際には、アイディアだけでなく「センス」があるかどうかも大きなポイントとなる。
それは出資先であれ自社の採用であれ同じで、できればセンスのある人と一緒に仕事がしたいという。
7. 世間の話題をさらうのには「実験」が欠かせない!?
光本氏はこれまでに数々のビジネスを立ち上げて話題をさらってきた。
中でも圧倒的な反響を呼んだのが「CASH」だろう。
CASHとは、自分の目の前にあるアイテムが一瞬で現金に変わるアプリで、不用品などを写真に撮りアップすることで、それに見合った金額がすぐに振り込まれるという前代未聞のサービスだ。
CASHがリリースされて24時間以内に3.6億円もの現金をばら撒き、わずか16時間でサービスを停止せざるをえないほどの反響だったという。
このサービスでは利益を得るというよりも「実験」がしたかったと話す光本氏。日々実験を行うことで自分しか得られない情報や価値に気づき、大きなビジネスチャンスが生まれるというのだ。
自身の著書『実験思考』を原価で販売するという実験を行うなど、常に話題を作り続ける彼の動向は今後も注目され続けるだろう。
8. 光本勇介のセンスが光るビジネス手法を参考にしたい
学生時代からインターネットを利用したビジネスの面白さを感じ、独自の視点でさまざまなビジネスを立ち上げてきた光本勇介氏。
彼の「実験」は世間の話題をさらい、起業の先駆者として常に注目を集めている。
これから起業したいと思っている人にとっては、彼の驚くべきビジネス手法は追いかけるに値するものだろう。