各企業がビッグデータを蓄積・保管していることはすでに知られていることだろう。
しかし、そのデータをどのようにビジネスに利用すればよいのか分からない企業もあるのではないだろうか。
今回はデータビジネスの基本から、データビジネスによって賢くマネタイズした実例などを紹介する。データの活用方法に悩んでいる企業担当者は参考にしていただきたい。
目次
データマネタイズとは何か
データマネタイズとは、顧客など社内外で保有するデータを活用し、ビジネスをして収益化を実現するものだ。
データを利用して収益化をする代表的な例は情報銀行だろう。
情報銀行とは、購買履歴・ヘルスケアなどに関わるデータを銀行に預けて、ある事業主がそのデータを利用した場合、銀行に預けた情報源に利子が支払われるというサービスだ。
この際、個人は特定できないようにデータをマスキングして銀行に預けている。
しかし、今や購買履歴や閲覧履歴などから広告を出稿するなど、情報銀行だけではなくさまざまな企業がビッグデータを保有している。
さまざまな企業がビッグデータを活用する中、データビジネスでのマネタイズに悩んでいる企業も存在している。主にどのような問題で悩んでいるのだろうか。
まずは自社が抱える問題点を抽出しよう
企業が抱える問題点として代表的なものをいくつかピックアップする。自社に当てはまるものがないかどうか確認してみてほしい。
データの蓄積・保管には成功しているがマネタイズの方法が分からない
自社データのマネタイズに苦戦しているケースでもビジネスチャンスはある。
データを利用したビジネス市場は日を追うごとに成長している。
そのなかでも市場シェアを圧倒的に占めているものが運用広告型ビジネスだ。
このマネタイズ手段は今後も右肩上がりに伸びていくと考えられている。運用広告型ビジネスを実現するには大きく分けて3つのプラットフォームが必要だ。そのプラットフォームは以下の通り。
- DSPなどの広告を配信するプラットフォーム
- SSPなどの広告を管理するプラットフォーム
- DMPなどのデータを管理するプラットフォーム
広告配信型ビジネスに使われるプラットフォームは、日々複雑なものに成長を遂げており、まったく基盤がない状態でシステムを構築するには資金面でも開発・工数面でも大きなコストがかかる。
広告配信型プラットフォームはある程度基盤ができているサービスを提供している専門企業に相談するのが近道ではないだろうか。
広告の出稿率が悪い
専門企業に一任しすぎると、広告コストなどがかかったり、柔軟な広告配信ができなくなったりする。
データを活用する方法として取り掛かりやすいのが広告配信型ビジネスだ。
しかし、ゼロからプラットフォームを構築しようとすると資金や工数がかかるため、現実的な方法とはいえないだろう。
しかし、プラットフォーム提供企業に広告配信を一任してしまうと、コストが高くついたり、自社がデータを管理している顧客へ紹介したいアイテムを紹介するなどの柔軟な広告配信ができなくなったりしてしまうというデメリットがある。
そのため、専門企業にすべて一任してしまうのではなく、配信した実績データや分析結果などを共有し、改善活動に自社も関われるスタイルが理想的だ。
自社でデータ資産を増やすだけではなく、ビジネスとして利用するためのノウハウも資産として自社に残るためである。
広告の出稿率が悪い場合は、専門企業に一任するだけではなく、改善活動に自社も関わるようにしたい。柔軟に対応してくれる企業への切り替えも検討してみるとよいだろう。
データを活用したマネタイズ実例3選
ITを活用して成長している企業は、顧客のデータを保有する以上の戦略を持ってマネタイズにあたっている。各企業が推進している戦略をのぞき見してみよう。
社内外のデータをフル活用し新サービスの展開に取り組む
まずはある自動車開発のグループ企業の取り組みについて紹介する。
車両における特許情報に注目したこの企業は、世界中から特許情報を収集・解析した。
そのうえ、車両開発技術のトレンド、自動車開発メーカーが何に注力しているのかデータを収集し、自社の開発部に情報を提供している。
特許についての情報は各国の行政機関がオープンデータとして公開しており、このデータを活用することに対してビジネスチャンスを見いだしている企業は多くあるのが現状だ。
その一方で、オープンデータはデータ情報のフォーマットがそれぞれ異なる。
さらに更新頻度が高いビッグデータであるため、マネタイズするには膨大なデータをタイムリーに解析しなければならない。
そこで同社は特許のオープンデータを解析・データベース化すれば、顧客に向けた新サービスを展開できるとビジネスチャンスを見いだし、新サービスのリリースを開始してマネタイズした。
同社は特許データを解析・精査するために、専門企業のサービスを活用してデータ準備・整理に取り組んだ。オープンデータに価値をつけたサービスを展開することで収益化に成功した。
既存のサービスに付加価値をつけてマネタイズ
次に、衛生事業に取り組む企業について紹介する。
高い衛生環境を追求する衛生事業で業界トップの実績を持つ同社は、業界初のIoT導入によって有害生物を監視、24時間体制かつオンラインで管理するシステムを構築した。
このシステムは、クライアントへ向けて、即時性・データの長期間にわたる保存性の両方を叶えた情報を提供している。
さらに、IoTデータと同社が保有している既存のシステムの品質向上を図るため、同社はポータルサイトをリニューアルした。同社のクライアントはポータルサイトを通して衛生情報を知れるようになっている。
ポータルサイトのリニューアルには開発期間が長期間にわたるため、開発効率のよい方法を採択している専門企業でポータルサイトを内製した。その結果、既存システムは以前以上に直感的に操作できるようになり、クライアント向けサービスの品質向上を追求することで、ユーザー数の拡大を目指している。
そして、同社は保有しているIoTデータをより使いやすくした情報コンテンツとして提供し、データマネタイズを実現しているのだ。
業界初のIoTデータ導入に恐れずチャレンジし、新規・既存サービスの融合でデータマネタイズを実現した例である。
専門企業の選定も、スピーディーにポータルサイトを内製したいという自社の事情を受け入れられるものに絞ったことが成功の要因だろう。
SSデータを活用してマネタイズ
最後に、広告事業を展開している企業の成功例について解説する。
同社は幅広い事業展開をしており、会員データや閲覧・購買履歴データなどを活用した広告事業を展開していた。
同社はPC向けの事業では強みを持っていたが、急速に普及したスマートフォンへのデータ不足や広告運用への対応は遅れているという弱みがあった。
そこで、スマートフォン領域でのデータ獲得を行いたいと考え、専門企業に依頼した。
専門企業の広告配信プラットフォームを利用し、スマートフォン領域でのデータ獲得に成功→ノウハウを専門企業と共有することでさらなる売り上げ規模拡大へとつなげたのだ。
データマネタイズを一般企業が実現するには、やはり専門企業へ依頼することが近道。
しかし、ノウハウを共有する機会を設けなければ専門企業にマネタイズを一任するしかなくなり、コストは高くついてしまっていただろう。
データビジネスは専門企業との連携で賢くマネタイズしよう
データビジネスを一般企業が展開するには、ゼロからシステムを構築しなければいけない。
しかし、それには開発コストと工数がかかってしまうため、本来の業務に注力できない社員が出てくることだろう。
データビジネスのマネタイズは、専門企業と連携することが大切だ。
しかし、ただ一任するのではなく、自社も参加してデータビジネスのノウハウを企業資産とすることも大切だといえるだろう。