ペイペイが構築する「未来を見据えたマネタイズ戦略」とは?

ペイペイという名前は、サービス開始後の大規模なキャンペーンなどで耳にしたことがあるという方も多いだろう。
キャッシュレス決済サービスの中でも急激に規模を拡大し、利用者を増加させているペイペイだが、特筆すべき点は「今のペイペイには収益化の仕組みが無い」という点だ。

ペイペイがなぜ収益を得ないまま規模を拡大しているのか、また、今後のペイペイが考えるマネタイズ戦略とはなんなのか、その仕組みや考え、打ち出した戦略について分析していく。

スマホ決済

1. 「ペイペイ」ってどんなサービス?

ペイペイとは、ソフトバンク株式会社とヤフー株式会社が2018年に設立した「PayPay株式会社」が提供するスマホ決済サービスである。
利用者は事前に銀行口座、一部クレジットカード、セブン銀行ATMのいずれかからペイペイアプリに任意の金額をチャージし、アプリのQRコード・バーコードから支払いを行う。

チャージ残高が事前に設定した金額を下回ると自動でクレジットカードからチャージされる「オートチャージ」機能も搭載しているが、オートチャージを利用できるのは現状Yahooカードのみである。

ペイペイは利用している端末に決済機能が付帯されていなくても、アプリをダウンロードすれば誰でもキャッシュレス決済が行える。ただし、ペイペイで支払いができる場所はペイペイ加盟店に限られている。

2. ペイペイは現状利益を得ていない

加盟店・利用者ともに順調に増加しているペイペイだが、現状PayPay株式会社はペイペイ決済での利益をほとんど得ていない。

本来、電子決済やクレジットカード決済の利用で企業側が支払う「決済手数料」を2021年9月まで無料にしているからだ。
事実、2019年に発表された19年3月期の決算報告ではPayPay株式会社の売り上げ収益5.9億円なのに対し、費用は371億円と、大幅な赤字を生み出している。

なぜペイペイは自社の収益を顧みないビジネスモデルを打ち出し、多額の費用をかけてペイペイという決済サービスを運用し続けているのだろうか。

3. 将来的な収益化を狙うペイペイのビジネスモデル

現状、収益を捨てた運営を行っているPayPay株式会社だが、けっして無作為に運営を続けているわけではない。

PayPay株式会社は「今得られる収益」ではなく、将来的に得られる安定した収益に着目し、それを達成するためのビジネスモデルを構築しているのだ。

PayPay株式会社が考える将来の収益をもたらすためのビジネスモデルとはなんなのか、3つのポイントに絞って見ていこう。

3-1. 消費者が「加盟店」を選択する未来

日本は世界的に見てキャッシュレス決済後進国である。しかし、今後のインバウンド(外国からの旅行客がもたらす利益)需要の増加に伴い、キャッシュレス化は日本経済を盛り上げる重要な鍵となるだろう。

経済産業省では「キャッシュレス決済の推進」を発表し、2025年までに国内のキャッシュレス決済率を40%にするという目標を掲げキャッシュレスの普及を目指している。

そんな状況において、PayPay株式会社は今後、キャッシュレス決済ができる店に消費者が集まると予想した。キャッシュレス決済が当たり前になった時、より多くの消費者を獲得できるのは認知度が高く、生活に浸透した決済サービスだ。
来たるその時のためにペイペイの認知度を高め、ペイペイ加盟店への集客を増やすことが今後の収益化に繋がると考えているのだ。

3-2. 膨大な顧客データの収集

ペイペイでは、アプリを通してキャッシュレス決済を行う。消費者が利用した店舗や購入した商品のデータはアプリを介してPayPay株式会社に集まり、そのデータは「詳細で膨大な顧客データ」として一つの資産になるだろう。この目には見えない試算も、PayPay株式会社が考える将来的な収益手段の一つだ。

製品開発や販売の市場において、消費者のニーズを捉えたデータというのは運営の方向性を決める重要な資料となる。ペイペイの利用率が高まり、日本中の消費に関するデータが集まればそのデータをもとにしたマネタイズや自社開発を始めるだけではなく、他社への情報提供による収益にも繋げられるだろう。

3-3. ソフトバンク・Y!モバイルユーザーの増加

現状、ペイペイを利用する上で自動的にチャージが行われる「オートチャージ」ができるクレジットカードはYahooカードのみである。また、ペイペイの認知度を高めるお得なキャンペーン類でも、Y!モバイルユーザーやソフトバンクスマートログイン設定済みの顧客に対する優遇処置が多く取り入れられている。

こういった特典を周知することで、ソフトバンク、Y!モバイルへの顧客流入を増加させ、グループ全体の収益を高めることもペイペイが持つ目的の一つだ。ペイペイはソフトバンク・Yahooの顧客囲い込みを推進するための入り口戦略としても有効だと考えられる。

4. ペイペイの認知度・利用率を高めるマネタイズ戦略とは

商談

決済手数料無料といった取り組みは企業に対するビジネスモデルである。
一方で、ペイペイは消費者に対しても認知度を高め、利用者を増加させるさまざまなマネタイズ戦略に取り組んでいる。

ペイペイが利用者増加のために行った戦略はどのような効果をもたらしているのだろうか。

4-1. ペイペイを周知させた「100億円相当あげちゃうキャンペーン」

ペイペイのキャンペーンで特に話題を呼んだ一つが「100億円相当あげちゃうキャンペーン」だ。ペイペイサービス開始後に行われた還元キャンペーンで、支払額の一部または全額を利用者に還元し、総額100億円を付与するという大規模なものだ。有名芸能人を広告に起用しテレビCMなどで積極的に周知したことで、登録者900万人、加盟店70万店舗増加と急速なサービス規模拡大に繋がった。

キャンペーン終了後は一定の利用率低下もあったが、知名度を高め「ペイペイという存在を消費者に広げる」という戦略においては成功を収めたといってもいいだろう。

4-2. 継続的な利用を促す「ポイント還元&現金キャッシュバック」

大規模キャンペーンで取り入れた消費者に継続的な利用を促す戦略がポイント還元や現金キャッシュバックなどの恒常的なキャンペーン類だ。国が発表した「キャッシュレス・消費者還元事業」と連動した「まちかどペイペイ第一弾」では加盟店でペイペイ決済を利用すると最大10%のポイント還元が行われ、これはキャッシュレス決済関係の還元率の中でもきわめて高い数値となっている。

また、キャンペーン中にはチャージや決済、送金機能を利用した消費者に対し一定金額のボーナスを支給するといったキャッシュバック特典も実施されている。
定期的なキャンペーンの開催は「キャンペーンが終わったから利用をやめる」という消費者を留まらせ、ペイペイ利用率の水準を安定させる効果が期待できるだろう。

4-3. 業種別に利用者を増やす「ワクワクペイペイ」

ペイペイでは、「ワクワクペイペイ」と呼ばれる取り組みで毎月特定の店舗、業種に対してお得な特典付与のキャンペーンを行っている。これは、普段の買い物にペイペイを使用してほしいという考えのもので行われているキャンペーンだが、期待できる効果はそれだけではない。

例えばペイペイ利用者が普段コンビニで買い物をしていたとしても、「ワクワクペイペイ」によってスーパーマーケットでの買い物に特典が付くとしたら利用店舗を変える可能性がある。「特典を行っている加盟店に行けばお得に買い物ができる」という認識を広めると、消費者の利用店舗をコントロールし、加盟店への集客・顧客の囲い込みが可能となるのだ。

さらに、ペイペイに加盟していない店舗にとっては消費者を奪われる要素となるため、未加盟の店舗にペイペイ加盟を促すきっかけにもなるだろう。

5. ペイペイのビジネスモデルは未来を見据えている

企業から受ける収益を捨てたペイペイの戦略は、今後加盟店を増加させペイペイの普及率を高めるという点においては大きな効果をもたらすだろう。

また、消費者に対する数々のキャンペーンは、ペイペイ普及率を安定させ利用者を囲い込むことで将来的な収益の増加、そして資産価値が高い顧客データを生み出す可能性を大いに秘めている。

これらの戦略が実を結べば、ペイペイは大量の消費者、そして加盟企業を獲得しサービス規模の拡大に成功していくだろう。
表面上だけ見れば収益化に失敗しているとも取れるPayPay株式会社のマネタイズ戦略は、日本のキャッシュレス決済業界が飛躍していくことを考慮した革新的な取り組みなのだ。

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