業界改革の鍵となるヤマト運輸の5つのビジネスモデルとは?

人口減少による人手不足、Eコマース増加による荷物の増加などさまざまな課題による問題を受けて、ヤマト運輸ではビジネスモデルの抜本的改革に乗り出している。

今回はヤマト運輸が掲げたビジネスモデル改革の中で今後取り組んでいく5つの改革内容について解説していこう。

配達する男性

1. 「働き方改革」にいち早く取り組んだヤマト運輸

ヤマト運輸では、政府が発表した「働き方改革」を受けて2017年の最優先経営課題を「働き方改革への取り組み」に設定した。

「社員が安心して働ける健全な労働環境の構築」をビジネスモデルとし、今までのビジネスモデルを抜本的に見直すことで顧客・社員ともに満足度が高い会社を目指すと発表したのだ。

では、ヤマト運輸はどのようなビジネスモデルを持って働き方改革を推進していくのだろうか。
ヤマト運輸が働き方改革を受けてビジネスモデルを見直すにいたった理由から見ていこう。

2. Eコマースの拡大がビジネスモデル見直しの要に

ヤマト運輸がビジネスモデルを見直す要となった要因がAmazonや楽天市場などEコマースの拡大だ

個人宅への小口輸送数の急激な増加と、追い付かない労働者不足からヤマト運輸の従来の体制構築が崩壊しかけている問題が浮き彫りとなったのだ。
さらに、社内での調査を行った結果、社員の多くが休憩時間を十分に取れていないといった労働上の問題も発覚する。

これらを受けて、ヤマト運輸では社員の働きやすさ・やりがいに焦点を置いてビジネスモデル設計を見直し、改革していくことを決定した。

3. ヤマト運輸が行った5つの改革

段ボール

ヤマト運輸は「働き方改革に関する5つの骨組み」を元に大きく分けて5種類の労働環境改善に取り組むと発表した。
それぞれ、どのような改革になっているのか概要を見ていこう。

3-1 労務管理の改善・徹底

まず一つ目の改革が「労務管理の改善・徹底」である。
入退館の管理システムを一本化するとともに、管理者や点呼執行者の数を増やし確実な労働時間の把握に努めることとした。
これによって、隠れ残業、労働時間超過など労働者の負担となる労働環境を是正することが目的だ。

システムの一本化によって今まで本社の目が届きにくかった支店の労働環境にも注視しやすくなることが期待できる。

3-2. ワークライフバランスの推進

二つ目の改革が「ワークライフバランスの推進」である。
これは全社員が正しい休憩時間を取得できるための取り組みである。

具体的には、通話転送機能の導入、インターバル制度の制定などが挙げられる。
さらに、働き方改革で推進されている「多様な働き方を選択できる社会」に対応して保育所の設置や、在宅勤務の導入なども検討されている。

今まで家庭の事情で働けなくなっていた社員もヤマト運輸で働き続けられるようになれば人手不足改善の足掛かりとなるだろう。

3-3. サービスレベルの変更

三つ目の改革は「サービスレベルの変更」だ。
ヤマト運輸では利用者の立場に立った細やかなサービスが特色となっているが、それが一方では労働者の負担を増やし労働環境を悪化させる原因ともなっている。

今回の改革では業務負荷の軽減を図るために指定配送の区分を見直す、昼休みに被る時間の配送を廃止するなど労働者の立場に立ったサービスレベルの変更が行われる。

利用者の利便性と労働者の快適な労務環境のバランス調整が難しい所だが、成功すれば配送業界にとって大きな改新の一歩になるだろう。

3-4. 低単価荷物の比率を下げる

4つ目の改革が「低単価の荷物比率を下げる」ことである。
Eコマースの拡大では荷物料が増加した半面、低単価荷物の割合も増加したため、社員の負担が増えても収益が増加しないといった状況に陥っていた。

それを受けたヤマト運輸は宅急便の送料、運賃の調節に乗り出し、低単価小口の顧客に対しては荷物料の抑制を依頼する計画を立てている。
この計画で荷物量が安定すれば、配達員の負担も今までより軽いものになるだろう。

3-5. 採用強化

5つ目の改革が「採用強化」だ。
今、日本では人口減少による労働者不足が深刻化し、配送業界でもそれは例外ではない。

今後ヤマト運輸が安定した人材を確保するためには社員の処遇を充実させ「働きたい企業」であることが重要だと考えているのだ。

そもそも配送業界は現状、仕事がハード、労働環境が悪いといったイメージで人材が集まりにくい傾向にある。
労働者の数が増えなければどれだけ改革を行ったとしても一人一人に対する負担は軽減せず、本当の意味で「働き方改革」が為されたとは言えないだろう。

雇用を強化し、即戦力となる人材を潤沢にそろえるための働きを成功させることこそが、ヤマト運輸の改革達成の要となるのだ。

4. 業務改革で生き残ってきたヤマト運輸の歴史

戦前・戦中の関東で近距離運輸事業のトップシェアを誇っていたヤマト運輸。
戦後の事業拡大においてその業績は一転、撤退を余儀なくされるところまで追いつめられる。

戦後の混乱期は戦前・戦中とは異なり、長距離輸送のニーズが拡大していたのだ。
しかし、ヤマト運輸は東京に本社があり近距離運輸を得意としていたため事業が上手くいかず、社長は近距離運輸市場での復活は無理だ、と判断し新たな市場を開拓することに専念した。

それが、今は当たり前になっている「一般家庭への配送サービス」だ。
それまで日本の小口配送は荷物を郵便局に持ち込み、複雑な料金設定で支払いを行わなければならない面倒なものだった。

そこに着目した当時の社長は

・電話一本で荷物を受け取りに行く
・小売店舗に荷物受取の窓口を設けてもらう
・料金形態を分かりやすくする

などのサービスを盛り込み、小口郵送の独占市場に参入したのだ。

それまで小口郵送は手間がかかる割に儲けが出ないと敬遠されていたが、ヤマト運輸の参入によって市場は大きく発展する。
それを見て、二番煎じを狙って多数の企業が小口郵送市場に参入したが、ヤマト運輸の社長が徹底したサービス品質にはかなわず次々と撤退していく結果となった。

そしてヤマト運輸は小口輸送のトップシェアとして運送業界に返り咲いたのである。

このヤマト運輸の勝利の鍵は「世情に合ったサービスを開発し、独自に改革していったこと」にある。必要とされていながらもコストや手間の関係で誰も手を出さなかった事業にいち早く目をつけ、利用者が満足するサービス品櫃を維持する、それらの柔軟な思考こそが今日までヤマト運輸を継続してきた根本的な要因なのだろう。

今、ヤマト運輸は働き方改革を取り入れた新しい事業改革を行おうとしている。
そのビジネスモデルは同じ運送業界の他企業よりも早く、業界の改革を推進するきっかけになるだろう。
戦後の低迷期を乗り切った社長のような柔軟な思考を持ってこの改革を成功させれば、ヤマト運輸のさらなる飛躍が期待できるのではないだろうか。

5. 時代とともに新たなビジネスモデルを打ち出すヤマト運輸

国を挙げて働き方改革を推進している今、積極的に労働環境改革を推し進めるヤマト運輸は配送業界の過酷な労働環境を改新する先駆け的存在になるだろう。

しかし、会社の改革にばかり目を向けて顧客のニーズをつかめなければ企業としての成長は望めない。

今後ヤマト運輸に求められるのは、顧客の満足度を維持しながら社内の労働環境を改善していくバランス調整ではないだろうか。

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