アメリカ生まれのスーパーマーケット「コストコ」は、さまざまな商品が大量に売られているのが特徴だ。
会員制というスーパーとしては少々珍しいビジネス方式で展開しているが、同時に成功もしている。
なぜ成功しているのか、コストコが会員制を続ける理由から5つのビジネスヒントを探す。
1.コストコってどんなお店? 概要を解説
2.コストコで会員にならず無料で買い物をする方法はある?
3.コストコ会員になるための流れ
4.コストコ会員になっても元はとれるのか
5.コストコ会員になる前に知っておきたい注意点
5つのビジネスヒントを知れば、なぜコストコが会員制にこだわるのか、その理由と新しいビジネスを作るヒントが導きだせるかもしれない。
目次
1. コストコってどんなお店? 概要を解説
まずコストコとはどんなビジネスモデルを展開しているのだろうか。
なぜ会員制にも関わらず人々を魅了できたのだろうか。
コストコの概要について説明しよう。
1-1. コストコは他社との違いがはっきりしている
コストコは、正式名称のなかに「卸売」の文字が入っているスーパーマーケットだ。
「卸売は通常小売業者が使うもの」というイメージがあるが、コストコの場合は会員になれば個人でも利用できる。
消費者にとっては、小売業者を通さないことから商品が安く手に入るのが特徴だ。他社には真似できない、原価90%というとても安い値段で販売している所は他社との大きな違いでもあるだろう。
また、商品の種類と量が豊富なのもコストコの特筆すべき点だろう。
はじめてここを訪れた人は、スーパーマーケットではなく倉庫のような印象を持つかもしれない。ずらりと並んだ商品から、ペットが載せられるほどの巨大カートでどんなものがあるかを探し出す楽しみも他社とは違う点で魅力的である。
食品からダイヤモンドまでそろっており、ダースで販売している物もある。ここに来れば何でも手に入ると思わせてくれるのが、コストコの強みである。
1-2. コストコが行う会員制度とは?
コストコには、誰でも入場できるわけではないことも一般的なスーパーマーケットとは異なる。
事前に会員にならないと店舗を訪れることはできないのだ。
コストコ会員の年会費は、いずれも税抜きで
個人会員(ゴールドスターメンバー):4,400円
法人会員(ビジネスメンバー):3,850円
エグゼクティブ会員:9,000円(2019年9月に登場)
2019年9月には新しくエグゼクティブ会員が登場した。
この会員は年会費は高額に感じるが、会員になれば一部の商品を除いて年間購入金額の最大2%分が還元(リワード)される。
1リワード = 1円として使うことができ、還元額は上限10万円までとあるが、10万分のリワードをもらう場合、毎月約41万円以上の買い物があり、年間では500万円ほどの買い物をコストコでしている人、ということになる。
しかし、毎月2万円以上コストコで買い物するようなら、リワードは約4,800円分となり、個人会員分の年会費で様々な特典が受けられる。毎月4万円以上コストコで買い物をするようであれば9,600円分のリワードがあるため、年会費の元が取れてしまうわけだ。
新たな会員制が追加されたことでコストコファンにとってさらに恩恵も受けられるようになった。
また、コストコメンバーズカードは個人・法人を問わず全世界で使用でき、家族カードが1枚無料でついてくるかたちだ。
そのため、ひとりの会員契約で実質2人分のカードが手に入る計算となる。
家族カードといっても実際は家族でなくてもよく、名字が異なっていても同一住所に住んでいれば発行が可能だ。つまり、内縁関係であっても家族カードを作ることができる。
これは、パートナーシップの考え方が進んでいるアメリカで生まれた企業ならではの発想だろう。
1-3. なぜコストコは会員制でも儲かるのか?
本来、原価率90%で販売していては大赤字になるはずだが、会員制というビジネスモデルが大きな鍵となっている。
個人会員だと4,400円という会員費用。この金額だけをみると高めの会員費であると思うだろう。
実はコストコのビジネスモデルは、この会員費がそのまま利益となっており、商品販売で設ける仕組みにはしていないのである。そのため、顧客が欲しいであろう商品が原価近くの値段で売られていることがわかると購買意欲が沸くのである。
すでにコストコ会員の顧客からの口コミであったり、メディアの影響もあり、決して安いわけではない年会費を払って会員になる、というルーティンが出来上がっているのだ。
コストコのチラシを見かけたことはほとんどないと思うが、顧客自身がブログなどで発信してくれるため、宣伝費等は必要なく、自然と集客できる仕組みになっている。
また、コストコの倉庫のような広さからは想像しがたいが、取り扱う商品数は約3000種類で他のスーパーから見ると少ないのである。その代わり、それぞれの商品は大量にあるため、売れ残りは大量在庫となってしまう恐れがある。売れる商品を見つけて仕入れてくるバイヤーのすごさがうかがえる。
このように、会員費が前払いということが経営の負担を軽減し、顧客は原価に近い価格で購入することができ、満足度も高く、win-winの関係が続いているのである。
2. コストコで会員にならず無料で買い物をする方法はある?
コストコで会員にならず無料で買い物する方法は、2つある。
1.同伴入店
2.プリカを活用した入店
2-1. コストコ会員になる以外の入店方法
年会費を払う前に、実際コストコがどのような場所なのか見てみたいという人もいるのではないだろうか。
実は、会員や家族会員になる以外の入店方法がある。
それは「同伴入店」であり、会員と一緒であれば2人まで無料で入店することが可能だ。
つまり、コストコ会員である友人や親戚に付いて行くだけで、無料でコストコを体験できるのだ。
また、18歳未満であれば人数に関係なく同伴入店できる。
気をつけなければならないのは、会員の付き添いで入場した人が店内で何かを買う場合、レジでの支払いはすべて会員がしなければならないことだ。
無用なトラブルを引き起こす可能性もあるので、この点は事前に理解する必要があるだろう。
2-2. プリカという入店方法も
コストコには、「コストコプリペイドカード」というものもある。
プリカがあれば「1日特別ご招待券」がカウンターで発行され、入店と購買が可能となる。
ただし、このプリペイドカードは会員しか手に入れられないので、知り合いのコストコ会員に事前に購入してもらわなければならない。
また、何かを購入する場合は代金の5%を上乗せした額を支払う必要があるため、少々手間とコストがかかる無料入店方法といえる。
そのほかにも、以前に1日特別ご招待券で入場したり、退会後12カ月以内であったりした場合にも、このサービスを使用することはできない。
3. コストコ会員になるための流れ
コストコ会員になるためには、店舗の入り口で申し出を行う必要がある。
会員は18歳以上からという決まりがあるため、本人確認証が必要となる。
きちんと書類がそろっていれば、その日のうちに会員となって入店が可能だ。事前にコストコのオフィシャルサイトを通じて登録しておけば当日はカードを受け取るだけで済むため、手続きがより早く終わる。
事前の登録でもカードの受け取りは店舗のみになるので覚えておこう。
また、会員になる際には顔写真を撮影するため、それなりに身だしなみを整えて出かけることもポイントだ。
4. コストコ会員になっても元はとれるのか
コストコの会員年会費は4,400円と決して安い値段ではないからこそ、元は本当にとれるのかと疑問に思う人は多いだろう。
実は工夫次第で元を取ることは可能だ。
その秘密が、コストコの強みともいえる“費用対効果”である。
4-1. 年会費は決して安くない!なぜコストコが魅力的なのか
潜在的なコストコ会員が気になるのは、やはり年会費の費用対効果だろう。
とりわけ、個人会員の場合は4,400円と決して安くはない価格だ。
法人と違ってそれほど多く買い物をするわけではない個人の場合、元がとれなければ会員になる意味は薄くなる。
ここで注目しておきたいのは、なぜコストコがここまで高い認知度を誇り、人々に支持されてきたかだ。
単に商品の種類がたくさんあるだけなら、ネットショッピングでも同じこと。
コストコとネットショッピングで大きく違うのは、前者にはコストパフォーマンスのよい食品が多いことだろう。
コストコには100円以下でソフトドリンク飲み放題や、低価格で買えるケーキなど、食品関係の安さが魅力だ。
配達に時間がかかるネットショッピングではできないこれら食品関係のお得さは、コストコならではの強みといえる。
また、コストコにはガソリンスタンドが併設されていることが多く他店よりもリッターあたり10円ほど安いことが珍しくない。
ガソリンもインターネットでは扱えない商品だ。
さらに、本スーパーマーケットは街の中心部にあることはほとんどなく、多くの場合は車で出かけることが前提の郊外に建てられている。
買い物ついでに給油できる利便性の高さも、お得感として利用者の心をつかんでいる。
4-2. コストコで元をとるには
年会費の元をとるためには、コストコへ最低月1程度は買い物に行くのが望ましい。
特に、洗剤や衣類などが他店の半値近くで売られていることも珍しくないので、たまに買うものはコストコで購入する癖をつけておけば、年会費分はお得になるだろう。
加えて、商品を大量に購入したいときも利便性を発揮する。
同じ商品が大量にある倉庫のようなこのスーパーは、数をそろえるために数店舗を回る必要がなくなる。
1個あたりの商品価格が他店よりもお得な場合は、購入数によるもののその日のうちに元がとれることもあるだろう。
ガソリンを月に40〜50リットルほど給油するなら、すべてコストコで行うと1年間で年間費がペイできる計算となる。
5. コストコ会員になる前に知っておきたい注意点
コストコを利用した時、損をしないためにも注意点は事前に知っておきたい。
1.支払い方法
2.会員更新システム
3.オンラインショップ
5-1. 支払いは現金かマスターカードのみ
利用者にとって魅力的なポイントが多いコストコだが、不便に感じられる点もあるので注意が必要だ。
年会費も買い物の支払いも、「現金かクレジットカードブランドのマスターカードのみ」という縛りがあるからだ。
VISAやJCBなどほかのカードブランドを使った支払いはできない。
以前は、アメリカン・エキスプレスブランドのみ利用可能だったのが変更になったので、以前コストコ会員だったことがある人は特に注意しなければならない。
使用可能なカードブランドが大きく変わった前例があることから、またいつ変更があるかもわからないので注視する必要があるだろう。
5-2. 会員更新システムに注意
コストコ会員の更新は、申し出がない限り勝手に行われることはない。
そのため、いつの間にか期限が切れて会員資格を失っていたということもあるだろう。
コストコには、特殊なルールがあり、更新月の翌々月に更新をしても有効期限は更新した月の1年後にはならないので注意しなければならない。
つまり、有効期限が1月末日だったとして、3月に更新しても次の有効期限は翌年の1月末になるのだ。これを避けるためには、4月以降など3カ月以上開けて更新しなければならない。
4月に更新した場合の有効期限は、翌年4月末日となる。
また、更新期日前に解約すると全額返金されるため、作ってみたけどあまり利用しなかったから、といったような理由で解約しても年会費は無駄にならない。実は行った当日に作成して当日に解約するということも可能なのだ。ただし、そういった制度を悪用されないために、解約後は1年以内の再入会ができず、同じ住所の家族も入会できなくなる、という決まりがある。
5-3. オンラインショップの利用に注意
コストコの公式オンラインショップが2019年12月にオープンしたが、コストコ会員でなければ利用できない。
コストコの商品が買えるのだが、価格設定も送料込みのため、店頭より10~40%上乗せされており、最低購入個数が決まっていたり、生ものが購入できなかったりする。
ただでさえ大きいサイズのものをさらに多く購入しなければならないということになるため、オンラインショップ利用目的で会員になるには注意が必要である。
6. コストコは会員制でも“費用対効果”で顧客満足度を維持する
なぜ成功しているのか、コストコが会員制を続ける理由から5つのビジネスヒントを紹介した。
1.コストコってどんなお店? 概要を解説
2.コストコで会員にならず無料で買い物をする方法はある?
3.コストコ会員になるための流れ
4.コストコ会員になっても元はとれるのか
5.コストコ会員になる前に知っておきたい注意点
コストコの会員年会費は決して安くはない。
それでも、人々を魅了してしまう理由は“費用対効果”を工夫していることだろう。
コストコの“費用対効果”を研究することで、新しいビジネスをはじめるヒントを何か得られるのではないだろうか。