クラウドファンディングのサービスには、それぞれに特徴がある。
複数のサービスを比較することで、「なぜその会社が成功しているのか」を浮き彫りにできるはずだ。
そこで、日本国内でサービスを展開し、成功しているクラウドファンディングについて、事例を見ながら資金調達を成功させるための秘訣を検証していこう。
目次
1. クラウドファンディングを比較する前の基礎知識
そもそも、クラウドファンディングとは、特定のプロジェクトを実現させるための資金を、インターネットを通じて不特定多数から集める仕組みのことを指す。
資金提供者に対するお礼=リターンの扱いなどに応じて、
・寄付型
・購入型
・融資型
の3つにさらに細かく分類できる。
2. 寄付型クラウドファンディングとは
寄付型クラウドファンディングとは、資金提供者に対し、モノ・サービス・利子などの金銭的価値があるリターンが提供されないタイプのクラウドファンディングである。
ただし、プロジェクトによる支援を受けた人からのお礼の手紙など、金銭的価値はないリターンが提供される場合も多い。
この性質上、災害支援・社会福祉など、公益性の高いプロジェクトを実現する目的で、寄付型クラウドファンディングは広く用いられている。
認定NPO法人、教育機関、地方公共団体でも導入されており、資金提供を行った場合、寄付金控除として税制上の優遇が受けられるのも、大きな特徴の一つだ。
2-1. 寄付型クラウドファンディングを展開する会社
この寄付型クラウドファンディングのサービスを日本において展開している会社には、次のようなものがある。
2-1-1. LIFULLソーシャルファンディング
「LIFULLソーシャルファンディング」は、もともとはイギリスのクラウドファンディングサービス「Just Giving」の日本版「JustGiving Japan」としてスタートした。
その後、住宅・不動産情報サイト「LIFULL HOME’S」を運営する株式会社LIFULLの傘下企業として運営されている。
なお、東京都はこのサービスと連携し、主婦・学生・高齢者等による創業、ソーシャルビジネス等の挑戦を促進するため、支払手数料の2分の1を減免したり、電話相談窓口・セミナーの開催をしたり等の取り組みを行ってきた。
2-1-2. Readyfor Charity
「Readyfor Charity」はもともとは購入型クラウドファンディングのサービスとしてスタートした「Readyfor」からスピンオフする形で、2015年12月からサービスを開始した。
有名な団体の利用事例としては、がん研有明病院が、病院庭園の改修資金を「Readyfor Charity」を通じて調達することに成功している。
また、国立の小児病院でもある国立成育医療研究センターは、無菌室を拡充するために「Readyfor Charity」を利用し、必要支援額の倍以上の資金を調達することに成功した。
3. 購入型クラウドファンディングとは
購入型クラウドファンディングとは、資金提供者に対し、そのプロジェクトで生み出されるサービス・モノをリターンとして提供するタイプのクラウドファンディングである。
個々の事例によっても差があるが、一般的には、資金提供額が大きくなればなるほど、リターンとして提供されるサービス・モノの金銭的価値が上がっていくパターンが多い。
そのため、資金提供を促すために、あえて「他では手に入りにくい」リターンを用意しているプロジェクトも存在する。
この購入型クラウドファンディングのサービスを日本において展開している会社には、次のようなものがある。
3-1. 購入型クラウドファンディングを展開する企業
3-1-1. Readyfor
「Readyfor」は、国内初の購入型クラウドファンディングサイトとして、2011年3月にリリースされた。
その後もサービスを幅広く展開し、現在では寄付型クラウドファンディングの「Readyfor Charity」やふるさと納税サービスの「Readyforふるさと納税」、海外の難民支援など国外の案件を多く扱う「Readyfor Voyage」なども併せて提供している。
3-1-2. CAMPFIRE
「CAMPFIRE」は、2011年6月からサービスを開始している。
アート、写真、アニメ、音楽など芸術作品の制作資金を集めるために利用されることが多いのも大きな特徴だ。企業との合同での取り組みも多く手掛けている。
JR東日本は「地域にチカラを!プロジェクト」と題し、無人駅の活用、地域商品のリブランディングに関するアイデアを募集し、同社と共同でノウハウの提供・資金集めなどのバックアップを行う取り組みを行ってきた。
また、同社も先ほどの「Readyfor」と同様、開始当初から提供している購入型クラウドファンディングのみならず、寄付型クラウドファンディングの「Good Morning」など事業の領域を広げている。
4. 融資型クラウドファンディングとは
融資型クラウドファンディングは、資金提供者に対するリターンが利子、つまりお金であるのが大きな特徴である。
資金の貸し借りが前提となるため、「ソーシャルレンディング」とも呼ばれている。
つまり、資金提供者から集めた資金をサービス提供会社が取りまとめたうえで、プロジェクトの実行者に貸しつけ、その後、金利とともに返済を受ける。サービス提供会社は返済を受けたら、資金提供者に利子を付けた上で、償還する仕組みだ。
案件によっては高い利回りが得られること、出資さえすれば運用の手間がないこと、1万円程度から投資ができることから、資産運用としても人気がある。
しかし、一度出資したら解約ができない上に、元本保証もなく、貸付先の情報開示も十分でないというリスクが付きまとうことには注意したい。
この融資型クラウドファンディングのサービスを日本において提供している会社は、次の通りである。
4-1. 融資型クラウドファンディングを提供する企業
4-1-1. オーナーズブック
まず、「オーナーズブック」は、不動産案件のみを扱う融資型クラウドファンディングサービスである。
同社は、先ほど触れた融資型ソーシャルレンディングのリスクを低減する取り組みを強く打ち出しているのが特徴だ。
まず、担保となる物件は、流動性の高い東京エリアの物件を多く採用している。さらに、運営会社のロードスターキャピタルは、創業以来増収増益を続けており、2017年9月に東京証券取引所マザーズ市場への上場を果たした。
4-1-2. SBIソーシャルレンディング
一方、「SBIソーシャルレンディング」は、オンライン証券会社のSBI証券、オンライン銀行の住信SBIネット銀行など、さまざまな金融機関を有するSBIグループの傘下企業である。2011年からサービスを提供した。
大手金融機関グループの傘下ということもあってか、その安定性を高く評価されているため、募集後すぐに枠が埋まってしまう案件も多い。
5. クラウドファンディング成功のコツ
クラウドファンディング成功のコツは、「選び方」と「事後報告」である。
まず、クラウドファンディングと一言で言っても、実際は「リターンがあるのか、あるなら何を使うのか」によって、まったく性質が異なる。
仮にクラウドファンディングで資金を調達したいのなら、実現したいプロジェクトが何かを踏まえ、それに見合ったクラウドファンディングを比較・検討すべきだろう。
5-1. 選び方の基準
では、どのように選べばよいのだろうか? その基準を紹介していく。
例えば、災害支援・社会福祉目的など、社会や人のためにはなるが、営利目的ではないプロジェクトの場合は、寄付型クラウドファンディングが適している。
一方、新しい商品を開発したり、不動産物件を購入したりなど、多額の資金が必要かつ営利目的の場合は、購入型や融資型のクラウドファンディングが適している。
また、クラウドファンディングに資金を拠出する場合も、目的に応じた使い分けが求められる。
モノ、サービス、お金などのリターンを得たいなら、購入型・融資型を検討すべきだ。
リターンが得られなくても、「これが実現してくれると嬉しい」と思うなら、寄付型に出資する十分な理由になり得る。
5-2. プロジェクトの行方を観察すること
そして最も大事なのは、「資金を出した後、そのプロジェクトがどうなったか」である。
これまで数多くのプロジェクトがクラウドファンデングによる資金調達でスタートしてきたが、そのすべてが成功したわけではない。
資金を出資する際は、「このプロジェクトが完遂されるかどうか」を見極めると同時に、開始した後も、ニュースレターなどをくまなくチェックしよう。
一方、資金の出資を受ける場合は、「今、自分のプロジェクトがどうなっているのか」をこまめに報告する取り組みが求められる。
クラウドファンディングは、あくまで「資金調達の1つの手段」であって、目的ではない。
資金調達を受ける場合も、資金を出資する場合も、重要な前提として頭にとどめておくべきである。
6. さまざまな形態を比較することから
クラウドファンディングと一言で言っても、実際はプロジェクトやリターンの内容によって、大きな差がある。
自分が出資する側であっても、される側であっても、さまざまな形態のクラウドファンディングを比較し、目的の達成に最も寄与できそうな形態のものを選ぶのが大事だ。