農業に特化したスタートアップとして、Farmers Business Networkは注目されている。
ビッグデータを利用して、農業を効率化するソフトウェアを展開し、ユーザーは農業の質を上げることができる。
そんなFarmers Business Networkが成功した秘訣を知るために、ビジネスモデルやサービス内容について解説していこう。
目次
1. Farmers Business Networkとは
Farmers Business Networkは、農業のビッグデータ解析サービスを手がけている企業だ。
あらゆる分野においてビッグデータがトレンドとなっており、データ分析力こそが競争で優位に立つ源泉とされている。
それは、農業でも例外ではない。
いかに効率性や確実性を高めるのかが課題となっており、ビッグデータ解析が指針を示してくれるのだ。
Farmers Business Networkのサービスを活用することで、ユーザーは農地の地質分析や農作物の収穫高の予測などについて、データに基づいた意思決定ができるようになる。
感覚に頼らずデータによって農業を営むことで、さまざまなリスクを回避できるのだ。
1-1 農場を支援している
Farmers Business Networkは、農業に関する情報の提供に取り組んでいる。
農業は、地理的な要因や気候的な要因に大きく左右されるものだ。
また、どのくらいの量の農薬や肥料を使うのかによって、収穫高に大きな違いが出てしまう。
このような判断を、農家は感覚的にやらざるを得ないと考えていたのだ。
そこで、Farmers Business Networkがありとあらゆるデータを提供することで、ロジカルな思考で農業を営むことを可能にした。
膨大なデータを分析した結果をもとにすることで、再現性の高い合理的な農業を支援するのだ。その結果、毎年安定した収穫高を実現できるようになる。
2. Farmers Business Networkの提供するデータ・マネジメント・ソフトウェアとは?
Farmers Business Networkは、農家にとって有用なソフトウェアの開発を行っているのが特徴だ。
そのソフトウェアの内容や価値について紹介する。
2-1 データ・マネジメント・ソフトウェアとは
データ・マネジメント・ソフトウェアとは、農家がデータを根拠にした農業ができるようにサポートするソフトのことである。
農業についてのデータを収集するだけではなく、分析まで行う。
その結果を用いて、農家は合理的な農業を実現できるのだ。
ユーザーは、「自身の農地でどんな農作物を育てればいいのか」「その品種を選べばいいのか」が分かる。
さらに、肥料を撒く適切なタイミングもデータから導き出すことができるだろう。
農業を営む中で意思決定する局面はたくさんあり、その都度データが最適解を教えてくれる。
2-2 ほかの農家とのデータ共有が可能
データ・マネジメント・ソフトウェアを用いると、アメリカにいる多くのユーザーとデータの共有をすることができる。
「ほかの農家がどのように農業に取り組んでいるのか」といった技術やデータを知ることができ、それを自身の農業の参考にできるのだ。
たとえば、新しい農作物を栽培するときには、別の農家のデータをチェックして、方針を決めることができる。
Farmers Business Networkのソフトウェアは、20種類以上もの農作物に対応しており、アメリカの28州に及ぶ農家が利用している。
3. データ収集の仕組み
Farmers Business Networkは、ユーザーである農家から直接データを収集している。
年間500ドル支払うことで、Farmers Business Networkのデータにアクセスできるようになるのだ。
その際には、自身の農地のデータをアップロードすることで、収益予測ができる仕組みとなっている。
データを活用するために、ユーザーが農地のデータを送る必要があるため、自然にビッグデータが形成されていくのだ。
2,000世帯以上ものユーザーが加入しており、その数は着々と増えている。
データが大きくなればなるほど、データ分析の精度は向上する。
その結果、農業に成功するユーザーが増えれば、それが評判となり、さらにFarmers Business Networkのユーザーが増えるだろう。
3-1 豊富なデータを集められる
すでに、データ分析技術を取り入れている農家はたくさんある。
たとえば、農作業に使われるトラクターはすでに多くが自動運転となっており、GPSも活用されている。
こうした新しい技術を活用するだけでも、新しいデータがたくさん生じていく。
データ収集できるシステムを独自開発している農家も増えており、こういったユーザーがFarmers Business Networkに提供するデータもたくさんあるのだ。
4. サービスの収益構造や利用事例
4-1 主な収益源
Farmers Business Networkの主な収益は、ユーザーが支払う年間500ドルの料金である。
定額制であり、どれだけデータを活用しようとも、料金が上がることはない。
また、Farmers Business Networkはデータ提供だけではなく、資産運用プログラムも開始している。
農家を目指す人や、既存の農地を拡大したい人のサポートをするサービスである。
たとえば、農業が盛んではない地域に対しても、ビッグデータを活用すれば、有効な技術やノウハウを提供できる。
その結果、農業に成功するユーザーが増えれば、その地域で市場を活性化できるかもしれない。
農業の盛んな地域が増えて、Farmers Business Networkのサービスの利用を促せば、さらに収益を上げられるのだ。
4-2 ソフトウェアの利用事例
具体的な利用事例としては、たとえば、これから栽培する品種を検討する際にデータが役に立つだろう。
農家は、農業資材企業から新しい品種の栽培を勧められるケースが多い。
その際に、データ・マネジメント・ツールを用い、自身の農地との相性を分析することができる。
相性の悪い品種であることが分かれば、買わずに済ませられるのだ。
また、より相性の良い品種を見つけることができるため、最適な品種を選び、より収益を得られる。
材料や肥料の仕入れの際には、より低価格で仕入れることができるネットワークをデータが教えてくれるのだ。
その品種を効率よく育てるためのノウハウも簡単に入手できる。特定の品種を育てるのに必要なことは、すべてビッグデータから情報を得られるので判断に迷うことがなくなるだろう。
5. 分かりやすい情報を提供する
Farmers Business Networkは、単に大量のデータを収集し、提供するだけではない。
現代の農業は、非常に高度な技術が用いられ、関連する情報の量は膨大である。
Farmers Business Networkは、全米の農家から集めたデータを、分かりやすい形で見られるダッシュボードを提供している。
視覚的に理解しやすい情報を提供することで、農家はすぐに必要なデータを得られ、意思決定ができるのだ。
5-1 役立つ情報を提供する
現代の農家は、過剰な情報に悩まされていることが問題となっている。
農業用のソフトウェアはたくさん存在し、それぞれに異なるフォーマットによって膨大なデータを表示しているのだ。
それを統合しようとしているのがFarmers Business Networkである。
複数の情報源のデータを共有し、それぞれを比較したり分析したりすることで、明確で役立つ情報の提供を実現している。
5-2 農家のコストカットに貢献する
農業に必要な情報を入手し有効活用できるかどうかは、現代の農家にとって死活問題である。
うまく情報を活用できなければ、農家の費用や収入に大きな影響を与えてしまうのだ。
農家は、年間を通して数千ドルもの種子を購入する。
もし、自身の農家に適した種子のみを購入できれば、相当な額の経費を節約できるのだ。
それを可能にする分かりやすい情報を得られることは、農家に大きな利益をもたらすだろう。
6. 食糧問題や後継者問題に寄与する
Farmers Business Networkのサービスは、単に農家の収益を上げるためだけに貢献するわけではない。
Farmers Business Networkは、より効率的な農業を可能にし、その結果、食料自給率の向上に大きく寄与するだろう。
6-1 世界の食糧問題への寄与
世界的に食糧危機が問題視されている中で、ビッグデータを用いた合理的な農業が定着すれば、より多くの農産物の生産を実現できる。
満足に食事ができず、飢餓に苦しんでいる人達を救うことができるのだ。
今後も、世界の人口が増大することは確実視されている。
こういった状況の中で、食糧問題への有効な対策を示すFarmers Business Networkのビジネスは、さらに価値を高めていくだろう。
6-2 農業の後継者問題への貢献
農業の後継者がいないことも問題にされている。
これまで、農業は独自の技術やノウハウを次代に受け継いでもらい成立していた。
しかし、後継者が出てこなければ長年の積み重ねで生まれた貴重な技術が途切れてしまう。
そこで、Farmers Business Networkのサービスにより技術を共有することができれば、後継者問題を解決することができるのだ。
7. Farmers Business Networkが農業を変える
農業にデータを活用する合理的な方法の導入を促すことに成功したのが、Farmers Business Networkのデータ分析のサービスである。
これまであまり重視されなかったビッグデータの活用に着目したことが、ビジネスにおける大きな成功をもたらしたのだ。
今後も、データの収集や分析を通じて、価値のある情報を提供していくだろう。