マネタイズに興味がある人にとって、フリーミアムは成功に向けてとても大切な考え方だ。
しかし、これから起業を検討している人などはフリーミアムについてよく理解していない人もいるだろう。
そこで、この記事では、フリーミアムの意味や実際の成功事例および失敗事例について紹介していくことにする。
目次
1. フリーミアムのサービス概要について
フリーミアム(Freemium)について理解するときは、その言葉の由来を知っておくとスムーズだろう。
フリーミアムは無料を意味する「フリー(Free)」と特別料金を意味する「プレミアム(Premium)」を合わせた造語である。
つまり、ユーザーを無料で利用する層と特別料金を徴収する層とに分けて管理するサービスだ。
1-1. スマホアプリに見るフリーミアム
多くの人たちが理解しやすいのは、スマホアプリではないだろうか。
スマホアプリのなかには「一部課金制」というものが多く見受けられるが、それこそまさにフリーミアムを利用したビジネスモデルである。
基本的にはサービスを無料で利用できるが、より高度な機能を利用するときやゲームを有利に進めるためには課金する必要があるのだ。
1-2. 利用するハードルを下げてユーザー数を増やす
フリーミアムを利用したビジネスモデルは、ユーザーに無料でサービスを提供することで売り上げが減少するように感じる人もいるかもしれない。
また、経営の観点から考えると、サービスにおける付加価値の安売りというイメージを持つ人もいるだろう。
しかし、そもそも多くの人に興味を持ってもらわなければ、課金サービスに登録してくれる人たちが少ないのも事実だ。
サービスを無料で提供することでユーザーの利用するハードルを下げることができ、顧客となるターゲットをより広げられるだろう。
ユーザーが無料でサービス内容を確認してから、その性能について理解したうえで課金するというスタイルは、「体験版を利用してもらっている状態」とも考えられる。
より多くの人に自社サービスの良さを知ってもらうという意味では、非常に大きな広告効果が期待できるのだ。
2. フリーミアムはどれぐらいの有料ユーザーで経営が成り立つのか?
フリーミアムの採用について検討する経営者は「どれぐらいの有料ユーザーがいれば経営が成り立つか」を心配していることだろう。
ビジネスモデルやサービスの提供コストによって一概には言えないが、一般的には5%の有料ユーザーで経営は成り立つと言われている。
95%もの無料ユーザーがいても経営が成り立つ秘密は、コストが比較的少ないインターネット接続を利用したサービスで導入されているケースが多いからだ。
フリーミアムはWebサイトやスマホアプリなど、インターネット接続を利用したサービスで主に展開されている。
これらのサービスは実店舗型のビジネスと比べて圧倒的にコストが安上がりである場合が多いのが特徴だ。
たとえば、店舗を構えるためのテナントの賃貸料や接客に必要な人件費などを大幅に圧縮できるだろう。
また、一度プラットフォームを用意してしまえば、複数の人に均一のサービスを大量に複製できる点もインターネット接続を利用することの利点である。
たとえば、同じインターネット接続を利用したECサイトなどで物品を販売する場合、無料サンプルを送るにも調達コストを支払わなければならない。
しかし、アプリなどのようにWebやスマホ上だけで完結するサービスでは、それらの調達コストを支払う必要はないのである。
少ないコストでより多くの人にサービス内容を知ってもらえることも、少ない有料ユーザーで経営が成り立つ仕組みの1つなのだ。
3. 有料ユーザーを増やすための4つの付加価値とは
フリーミアムで経営を成り立たせるためには、有料ユーザーを増やすことが大切である。
そのためには、無料で利用しているユーザーをどうやって有料サービスへ誘導するかが重要だろう。
有料サービスへ誘導するための方法にはさまざまなものがあるが、一番大切なのは「ユーザーに付加価値をわかりやすくアピールすること」である。
一般的にフリーミアムの有料サービスにおける付加価値のつけ方には4つあるといわれている。
3-1. 機能や容量が増える
1つ目は課金することで、機能や利用できる容量が増える有料サービスだ。
これは多くのフリーミアムに導入されている方法で、ユーザーにとってもわかりやすい付加価値のつけ方だといえる。
3-2. 制限が解除される
2つ目は通信速度などの制限がなくなる付加価値だ。
携帯電話やポケットWi-Fiなどの通信速度制限をイメージすればわかりやすいのではないだろうか。
ユーザーは利用スピードの向上によって快適なサービスの提供を受けられることがメリットになる。
3-3. 料金面で優遇がある
付加価値のつけ方の3つ目は料金面での優遇措置が挙げられる。
複数の有料サービスを利用することで、パッケージ商品として扱ってお得感をアピールするのだ。
ユーザーはすべてのサービスを1つずつ利用するよりも、メリットがある。
3-4. 期間限定の特定サービス
4つ目の付加価値は期間限定で特定のサービスを提供することで、ユーザーに優越感を与えるサービスだ。
期間を絞ってサービスの提供をすることで特定のプレゼントやコンテンツにプレミアがつき、ユーザーの課金意欲を向上させることが期待できる。
フリーミアムの経営を成功させるためには、これら4つの付加価値を上手に組み合わせてサービスを提供することが重要なのだ。
4. フリーミアムの成功事例:クックパッド
フリーミアムを採用して成功した事例としては、ユーザーが料理レシピを公開するコミュニティサイトの大手であるクックパッドが挙げられる。
このサイトが成功した理由の1つは「料理レシピという非常に多くの人に興味のあるテーマ」にフリーミアムを導入したことだろう。
フリーミアムは基本的に無料で利用できるため、ユーザーの利用にあたってのハードルはそれほど高くない。
しかし、そもそもユーザーから興味を持ってもらえるテーマに導入しなければ、無料ユーザーですら多くを獲得できないのが現実だ。
クックパッドは無料ユーザーでも投稿者の料理レシピを閲覧できるため、多くの人にとって実生活で非常に役立つサイトである。
そのため、顧客となるターゲット層が非常に広く、間口が広くなればそれだけ有料ユーザーを獲得できる可能性も高まるのだ。
有料会員に与えられる付加価値は「プロの料理レシピの閲覧」「料理レシピの絞りこみや人気順での検索が利用可能」などである。
つまり、機能面での付加価値を付けているうえ、クックパッドでしか見られないプロのレシピを閲覧できるという点では限定コンテンツの付加価値も付けているといえるだろう。
その他にも、クーポンがもらえるサービスもあるので、有料サービスの利用機会が少ない人でもそれほど損を感じない仕組みが作られているのも特徴だ。
どうやって有料サービスへ誘導するかを考えることは大切だが、有料サービスに登録した人を逃がさないためにはどうするかを考えることも同じぐらい大切だといえるだろう。
5. フリーミアムの失敗事例:Chargify LLC
フリーミアムで失敗した事例としてよくあるケースは、無料サービスと有料サービスの差別化がうまくできなかった場合である。
たとえば、Chargify LLCというアメリカの支払い請求管理ソフトを販売する会社はフリーミアムで主に中小企業向けにサービスを行っていた。
請求書を50人以上の顧客へ送付する際に課金する仕組みを採用していたのだが、思ったよりも有料の利用者数が伸びず一時は破産寸前まで追い込まれたのである。
とはいうものの、この企業が提供するシステムの評判が悪かったわけではない。
むしろ、システムの使い勝手は高く評価されていたのだ。
それにもかかわらず経営が傾いてしまった原因は、ターゲットとする顧客の多くが中小企業であるため、無料プランの利用で満足してしまっていたことだろう。
機能面は無料でも有料でも変わらなかったため、50人より少ない顧客へ請求書を送付する企業は性能の良いシステムを無料で使えていたのである。
つまり、市場のニーズと自社製品の付加価値を経営者がよく理解していないことが原因で、マーケティングの失敗ともいえる。
最終的には、Chargify LLCはすべてのサービスを企業規模に応じて有料化することで、売り上げが伸びて経営が再度軌道に乗っていることからも、それがよくわかるだろう。
この失敗事例からは、顧客となるターゲットを理解し、ユーザーが求めている付加価値は何かということをよく精査しなければいけないことがわかる。
6. フリーミアムの導入にあたってはマーケティング戦略が重要
フリーミアムはサービスの提供する付加価値を有料にすることで利益を生み出すビジネスモデルである。
そのためには、ユーザーが求めている付加価値を正確に把握することが大切だ。
まずは、マーケティング戦略をしっかりと練っていくことが重要だろう。