「未来食堂」から学ぶ“世界でたったひとつ”のビジネスモデルの作り方


・食材やできあがりなどを好みに合わせてカスタマイズする

・50分間そこで働けば定食1食分が無料になる『まかない』制度
・事業計画は全文公開する

などが特徴の未来食堂をご存じだろうか。

他の店にはないユニークなシステムで話題を集めている。
しかも、店主1人で黒字も実現してきた。そんな未来食堂に迫っていく。

1. 未来食堂とはどんな店なのか?

未来食堂

未来食堂

未来食堂は、東京都千代田区の神保町にある。
カウンター12席の小さな定食屋で、運営しているのは店主の小林せかい氏だ。店内は、カウンターや壁に木を活用するなど、さまざまな趣向がこらされている。

・半月ごとに変わる未来図書
・昭和の趣がある椅子
・1点ものの豆皿
・暖かみを感じさせるオレンジ色のシェード

などが落ち着いた雰囲気を出す。

食堂のコンセプトは、「あなたのふつうをあつらえます」だ。
店主の小林氏は、「世間には融通のきかない店がある」と言う。
例えば、画一的なメニューや、杓子定規な対応である。

客が、

・少し調味料を少なめにしたい
・みそ汁のネギは多めが良い

というような素朴な希望があったとしても、頼みづらいことが多い。

それが、この店の問題提起だ。

それに対して、未来食堂は自分の好みやその日の気分に合わせた料理を提供してくれる。
メニューは、日替わり定食だけだが、

・おかずを加える
・温度を調節する
・好みの材料を増やす

などの希望が可能だ。

また、その日の体調を伝えれば、それに合ったおかずや仕上がりを提案してくれる。
このように、客の素朴な要望に対応してカスタマイズするのが未来食堂の特徴だ。

2. 未来食堂の独特なシステム

未来食堂のシステムは独特だ。客の好みに合わせたカスタマイズ以外にも、システムが豊富だ。

2-1 まかない

1つ目は、「まかない」だ。
未来食堂では、そこで働く代わりに定食が無料になる。
50分間につき1食分が無料になるが、希望すればそれ以上働いても良い。

この「まかないさん」は1度店に来た人なら誰でも仕事を手伝うことが可能で、まかない目当てに参加している人は多い。

枠は、1日7つまでだ。開店から1年半で、年間のべ450人が参加した。

参加したのは、まかない目当てだけでなく学生や起業を考えている人なども含めさまざまだ。

2-2 ただめし

次に、「ただめし」がある。
これは、「まかないさん」として参加した誰かが無料券を自分で使わずに寄付という形で置いていったものだ。

店の入り口の壁に貼ってあり、誰が使用してよい。

2-3 さしいれ

そして、「さしいれ」だ。
カウンターには、飲み物が置いてあり自由に飲むことができる。

未来食堂では、飲み物の持ち込みが可能だが、その代わりに客が半分を寄付していく。
それが次の客への差し入れになるのだ。

通常の労働であれば、商品・サービスを差し出す対価として金銭を支払う。
しかし、未来食堂では労働力や時間を提供し、それが「まかない」というモノに変わる。

あるいは、まかない券を置いていくことで知らない誰かに寄付してもよい。

また、「さしいれ」では持ち込んだものを無償で差し出すこともできる。

未来食堂では、一般的な「働いた代わりに経済的対価を受け取る」という交換とは離れて、時間とモノとの交換や、知らない誰かへの差し入れといった素朴な交流体験ができるのだ。

3. 未来食堂の効率的な運営の仕組み

ユニークな取り組みをしている未来食堂だが、その運営はどのような仕組みなのだろうか。

3-1効率性

ここまで紹介してきたような内容から考えれば、ビジネスライクな印象はあまり持たないかもしれない。

しかし、運営方法を見ると実際は効率的だ。まかない目的での参加は可能だが、気楽なつもりで臨んでも良いわけではない。

マニュアルが公開されており、参加者は事前に把握したうえで業務することになっている。

店主の考えとして、店は利用客ありきであり、客の満足度が最大の優先事項だ。

未来食堂は、千代田区神保町なので近隣はオフィス街である。
そのため、昼時に利用する人の多くはビジネスパーソンだ。

利用客は、昼休憩の時間が限られているため、食事は席に着いたらすぐに食事が提供された方がうれしいのは間違いない。

そのため、飲食店としてのオペレーションは厳しく徹底されている。

3-2 コスト

また、飲食店事業としての収支ももちろん管理している。
飲食店といえば「FLコスト」といって、一般的に食材費(Food)と人件費(Labor)が最も重い。

しかし、未来食堂ではこれらのコストを抑えられている要因がある。

3-3 人件費

店舗の運営は、店主1人で行っており従業員はいないので人件費はゼロだ。
ただし、全席12席とはいえ、1人で忙しい時間帯でも店を回すのは限界がある。

それでも、運営が成り立っているのは「まかないさん」の参加があってこそだが、彼ら彼女らの仕事への対価は時給ではなく「まかない券」だ。

現金で支払うよりもコスト面の負担が少ないのは事実で、収支の黒字に貢献している。

ただし、不当に働かせているわけではない。

相互にwin-winの信頼関係があるからこそ、このようなモデルが成り立っている点には注目すべきだろう。

3-4 メニュー

未来食堂のメニューは定食だけだ。
利用客はおかずを追加するなど、ある程度のカスタマイズを希望しても良い。
しかし、定食のみという縛りがあれば、数多くの種類の材料を大量に仕入れなくても済む。

このように、客の好みをあつらうという一見非効率なコンセプトを実現しながら、実は持続可能な形をとっているのが未来食堂の仕組みだ。

顧客満足度の確保と、それを維持するための効率化を両立するビジネスモデルは、業種業態を問わず参考になるのではないだろうか。

4. 未来食堂に対する世間の反応

未来食堂に対する世間の反応はどのようなものなのだろうか。

店主による著作は人気を集め、次々と新しい書籍を発売してきた。
また、ビジネス系雑誌への掲載や、テレビ番組でも取り上げられるなど話題になっている。

反響には、未来食堂のコンセプトへの共感だけでなく、「ビジネスに携わる人として勉強になる」といった声もあった。

それが、さらに認知関心を集め、客として食堂に足を運んでみたり、実際に「まかないさん」として働いてみたりするといった循環にもつながっているようだ。

5. 未来食堂の店主小林せかい氏の人物像

実際、小林氏は徹底した合理主義者だ。
限られた時間を最大限活用するために、3つのルールを徹底している。

・常識を疑い無駄なものがないかを探す
・やらなければならないことであれば、
   いやいや行うのではなく
利用客の価値に結びつける工夫をする

・大事なこと以外は全くしない

1つ目として、常識を疑い無駄なものがないかを探す。

2つ目は、やらなければならないことであれば、いやいや行うのではなく利用客の価値に結びつける工夫をする。

3つ目として、大事なこと以外は全くしない。

このような考えから生まれたのが、メニューを定食に絞って効率化するというアイデアだ。

また、飲食店運営では定食メニュー選びは必須の仕事だが、あえて客と相談しながら決めることで、義務感を減らし顧客満足度向上のチャンスとして役立てている。

仕事でも生活でも、「やらなければならないこと」「やった方が良いこと」を挙げれば切りがない。

しかし、小林氏は大事なものとそうでないものを振り分け、不要なことにエネルギーを浪費しないようにしているという。

ビジネスでは、誰でも「あれこれ気を取られて肝心な仕事が進まない」という事態にぶつかってしまう可能性はある。
時間も労力も限られている中、一所懸命働いているつもりでも成果につながらないことに労力を費やしてしまうことは思わぬ浪費になってしまう。

小林氏の「大事なことだけに集中する」という考えは、ビジネスで重要なヒントになるだろう。

6. 未来食堂が示した新しいビジネスの可能性と戦略

未来食堂は、店主の人柄や他にはない独特の取り組みで、多くの人に共感や感銘を与えている。

しかし、全てが型破りなのではなく、実に合理的なオペレーションで黒字も実現している点は忘れてはならない。

良いコンセプトを実現するには、柔軟な発想とビジネス思考のどちらも必要だと学ぶことができる。

  
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