アリババは日本の消費者にとって、まだなじみの少ない企業と言えるかもしれない。
しかし、アリババのネット通販サイトに資生堂やユニクロなど日本を代表する企業が積極的に参加をするなど、年々存在感が高まっている。
そこで、この記事ではアリババの事業内容やビジネスモデルなどを紹介する。
出典:アリババグループ
目次
1. グーグルを抜く?巨大IT企業アリババ
アリババがどのような会社なのか概要を紹介する。
1-1. Amazonやグーグルと比較される大企業
世界的IT企業として知られるアリババ。「巨大なネット通販サイトを運営する企業」といったイメージも強いだろう。
日本では、Amazonや楽天などを利用するのが一般的なので、意外に認知度が低いというのが現状だ。だが、アリババは間違いなく、今後世界に大きな影響を与える巨大企業になるだろう。
特にBtoBのECサイトにおいての成長は著しく、Amazonに匹敵する規模となっている。一説によれば、ビックデータ解析におけるAI技術などで、グーグルに追いつくのは時間の問題といわれているのだ。
1-2. 「裕福な商人」阿里巴巴集団
アリババの正式名称は阿里巴巴集団(アリババ・グループ・ホールディング)、馬雲(ジャック・マー)が1999年に設立した中国のIT企業だ。会社の形態は持ち株会社で、本社は浙江省杭州にある。
杭州は「この世の天国」と称えられる西湖などが有名な観光地でもあるので、旅行好きの人ならよく知っているかもしれない。
一方、中国人はこの地の人々に対して「ハイテク」「実務的で抜け目がない」「裕福な商人」というイメージを持つそうだ。そして、アリババにもこれはあてはまる。
Eコマース事業を中心に成長したアリババは、すでに時価総額は30兆円を超え、世界ランキング第7位となっている。ちなみにトヨタは40位だ。すでに資生堂などの日本企業も、アリババが蓄積した中国消費者のデータを巨額の資金を投じて入手するなど、アリババとの関係を強化している。
2. アリババのメイン事業はBtoB
アリババの主な事業について紹介する。
2-1. BtoB事業
アリババの主な事業はBtoBのオンライン・マーケットプレイスの運営だ。この事業は海外事業者向けの「Alibaba.com」と国内事業者向けの「1688.com」に分かれている。
Alibaba.comにおいては、サプライヤー企業が自社商品を紹介し、世界中のバイヤーと取引するためのプラットフォームを提供している。
240の国と地域に1492万以上の登録ユーザー(企業)を持つといえば、その巨大さがわかるのではないだろうか。ウェブサイトの運営を行っている事業者なら、月間PVが60億であると知れば、すさまじい活況を想像できるかもしれない。
1688.comは中国国内事業者向けのBtoBのオンライン・マーケットプレイスである。基本的な仕組みはAlibaba.coと同じだが、国内の中小企業が利用しやすいようにシステムが構築されている。
物販ビジネス、特に中国輸入と呼ばれる転売ビジネスを手掛けている事業者ならば、多くの場合1688.comを利用しているだろう。安価な価格である程度質の高い商品を仕入れられるので、Amazonなどで転売すれば利益を上げられるのだ。
2-2. ネット通販
テレビなどで「アリババのネット通販の売上げが、1時間で1.5兆円を超えた」などと取り上げられているのを聞いたことがないだろうか。これは天猫が毎年開催している「独身の日」のセールのことだ。
日本では「楽天スーパーセール」などが有名だが、そのような規模の比ではない。資生堂や花王など中国市場を重視している企業は、天猫にこぞって参加しているのだ。
2-3. 電子マネーその他
中国人による「爆買い」は大いに話題になったが、同時に中国の電子マネー普及率の高さにも関心が集まった。
そのキャッシュレス先進国の中国で、8割近くのシェアを持つ電子マネーAlipay(支付宝)を運営しているのがアリババなのだ。日本国内においてもインバウンドの集客狙いもあって、急速にAlipayの普及が進んでいる。
そのほか、主に中国人消費者向けの電子商取引事業を展開している「AliExpress.com」「淘宝網 (タオバオ)」などでアリババは事業を展開している。
3. 大儲けする日本企業も続出!「独身の日」
驚異的な売上げを記録する、アリババのセールを紹介する。
3-1. 売上は1日で4兆円を突破
毎年11月11日には、アリババの天猫の主催で「独身の日」セールが開催される。もともと、彼女がいない独身男性に対して「1人だって幸せになっていいじゃないか」といったコンセプトで開催されたキャンペーンだった。
しかし、この「独身の日」は、現在はすでに世界中が注目するほどの一大イベントに成長している。2019年11月11日、この日のセール全体の売上げはなんと4兆円を突破した。実に楽天の1年間の売上げを1日で上回ったことになる。もはや、想像を超えた規模と言えるだろう。
3-2. 外国の中では日本が第1位
日本の企業にとっても「独身の日」は一大イベントだ。中国向け販売国の売上げにおいても、2位の韓国、3位の米国を上回り、日本は1位になっているのだ。
たとえば、ユニクロやMUJIなど日本を代表する企業は、それぞれ10億元(約155億円)超えの売上げを達成している。「1日でこの売上げを達成できるなら、日本の消費者は見捨てられてしまうかもしれない」、そんな危惧すら浮かんでくる。
おそらく今後「独身の日」で一攫千金を果たす日本企業も出てくるだろう。
4. 中国人ファーストにこだわるアリババのビジネスモデル
急成長を続けているアリババだが、海外進出に関してはそれほど積極的ではないように思えるかもしれない。それには中国人ファーストのビジネスモデルが関係している。
4-1. 中国市場にこだわる
Amazonやグーグルと比較されるほどに成長しているアリババだが、ビジネスモデルの中心にあるのは中国人ファーストだ。
海外事業者向けのAlibaba.comにおいても、世界中に存在する中国人事業者とのつながりを重視しており、最終的には中国国内の市場拡大を大きな目的にしている。
このような戦略をとるのは、人口が13億人おりキャッシュレス決済の先進国である中国以上に魅力的なマーケットが、世界中のどこにも存在しないからだ。
たとえば、日本にアリババが進出できていないように思えるのは、実は日本市場がそれほど重要に見られていないからである。しかし、世界中の中国系企業との関係が十分に確立すれば、そのときこそ、アリババは積極的に海外進出を進めるだろうと見られている。
そうなれば日本においては、楽天やYahoo!ショッピングなどでは対抗することができないかもしれない。こうしたこともあって、各国ではニッチな分野に限定したECサイトを立ち上げる動きも活発になっている。インテリアの提案やアイテムの販売をしている「houzz」、シェービング関係の商品に特化した「Dollar Shave Club」などがその一例だ。
4-2.ビッグデータを収集・販売
数多くの企業が喉から手が出るほど欲しいのは、中国全土の消費者のニーズを分析したデータだろう。そして、アリババはこのデータを最も入手しやすい立場にある。
なにしろ毎日膨大な消費者が商品を検索し、購入しており、これらのデータは日々蓄積されてビックデータとして解析されているからだ。すでに、アリババは企業に対して、こうした情報を有料で提供している。
アリババの製品の開発・販売だけでなく、世界中の企業にビッグデータを提供することで利益を上げているのだ。今後この事業は一層拡大していくと見られている。
4-3. クラウド事業
堅牢で安全なクラウドサービスは、企業や個人にとって重要になっている。実は、アリババの独身の日のセールは、こうしたクラウドサービスの実戦テストでもあるのだ。
世界最大のネット通販セールにおいてサーバーが耐えきることができれば、それは世界最高水準のサーバーシステムの宣伝にもなる。2019年における独身の日は、大きなトラブルもなく終了した。
また、Alipayの不正取引防止プログラムも、超高速で取引を監視できた。このような実績を積み上げながら、アリババはサーバーシステムやモバイル決済システムを備えたクラウドサービスを提供する事業を成長させているのだ。
5. アリババのニューリテール構想
ジャック・マーは、中国のすべての小売がアリババのプラットフォーム上で取引されることを目標にしている。
それを実現するために、ジャック・マーが提唱しているのがニューリテール構想だ。ニューリテール構想とは、ネット通販などの仮想空間だけでなく、実店舗の取引や物流をもシームレスにつなごうという試みだ。
そのため、オフライン事業者に対しても、アリババは積極的にビジネスを展開してきた。ごく小さな屋台でさえ、AlipayのQR決済で商売ができるようになったのもその一例と言える。
Amazonが同種の企業を買収しているのに対し、アリババがありとあらゆる業種の企業を買収していることでも、ニューリテール構想を進めていることがわかるだろう。
すでにBtoB事業にとどまらず、巨大銀行間の取引から屋台のQR決済、公共料金の支払いまで、アリババなしには成り立たなくなっている。アリババは中国のインフラとも言えるのだ。アリババの構想の実現は遠いことではないかもしれない。
6. ニューリテール構想でさらに成長が期待されるアリババ
日本の消費者レベルでは、まだまだ認知度や利用度が低いのがアリババだ。
しかし、巨大な中国市場にアクセスできるプラットフォームを持つアリババは、日本を代表する企業にとって、重要性を増しつつある。
アリババが目指している、あらゆるビジネスをシームレスにつなぐニューリテール構想が実現できれば、ますます巨大な企業へと成長していくだろう。