身だしなみを整えるといった理由などで、メンズコスメの需要が次第に高まっている。メンズコスメ市場が拡大する理由や、世代別に人気があるコスメの内容などを紹介する。メンズコスメ市場で活躍する会社の、ビジネスモデルについても解説する。
目次
1.メンズコスメが注目される3つの理由
最近はデパートやドラッグストアでメンズコスメを見かける機会が多い。コスメといっても、女性用のアイメイクや口紅といった華やかなものではない。
メンズコスメ業界で人気なのは、スキンケアやヘアケア用品、デオドラント商品といった、身だしなみを整えるものだ。メンズコスメの需要が高いのは3つ理由がある。
1-1.ビジネスマナーとして
まず、ビジネススキルの一環として外見を整えるためだ。きれいな外見を保つことで、自己管理能力の高さを示すことができる。
そして、一緒に仕事をする同僚や取引先からみても、清潔で爽やかなビジネスマンが相手の方が、好印象でビジネスの話にも弾みやすい。
1-2.職場環境の変化
また、職場に女性が増えたことも、メンズコスメが注目される理由の一つだ。
細かなことに気が付く女性の目を意識して、より一層身だしなみに気を配るようになったという男性もいる。
1-3.美意識が高くなった
さらに、メンズコスメが注目されるのは、ビジネスマナーだけではない。
例えば、筋トレやスポーツジム通いといったボディメイクに関心を持つ男性が増えてきている。
理想の外見に近づくことで充実感を感じ、自分の価値を高められると信じる男性にとっては、メンズコスメは頼もしいアイテムだ。
このように、今やメンズコスメの人気は高く、夫や同僚、上司へのプレゼントとしてメンズコスメが提案される場合もある。
2.メンズコスメは年々市場が拡大している
メンズコスメの売上は年々増えている。女性用コスメ市場と比べるとまだ規模は小さいものの、確実に成長している市場といえる。
富士経済による市場調査の結果、2010年以降、メンズコスメ市場が拡大傾向であることが確認されている。2019年のメンズコスメ市場は1196億円程度であると見込まれ、これは2018年と比べると1.4%増加している。
人気の主軸となっているのはデオドラント系である。これは、スメハラ(スメルハラスメント)といった臭い関連のトラブル対策として、使用頻度が増えたと考えられる。
2-1.自分に合うケアアイテムを使いたい
富士経済の調査によると、メンズコスメの売れ行きが好調な理由として、ケアアイテムのパーソナル化が進んでいることが挙げられている。
これまで、一つの家庭で同じシャンプーやボディソープを使うのは当たり前のことだった。しかし、現在は個人が自分の好みや、体質に合わせてケアアイテムを選ぶ傾向にある。
特に、女性と男性ではケアに求める目的が違う。だから、アイテムを分けたいという意識が高かまり、メンズコスメの売上に関係していることが分かる。
3.世代ごとに違う重視するポイントについて
メンズコスメは、ビジネスマナー、ボディメイクや自己啓発といった目的で、あらゆる世代から注目されている。
世代ごとにコスメに期待するポイントが異なるので、若年層・青年層・中高年層ごとに解説していこう。
3-1.若年層が注目するメンズコスメ
若い世代には、スキンケア用品が注目されている。若い時代特有のニキビや、不規則な生活による肌荒れを改善する目的で、化粧水や乳液などスキンケアをしようしている。
さらには、InstagramなどSNSへの投稿を意識している傾向がある。アプリなどで調整はできるが、自分自身の肌映りの良さを意識する男性も多い。
特に人気がある商品として、時間がかかるスキンケアを簡略化できる化粧水と美容液、乳液が一緒になったオールインワンタイプが挙げられる。
3-2.青年層が注目するメンズコスメ
ビジネスマナーを意識してメンズコスメにお金をかける男性も出てくる。
例えば、汗をかいても爽やかさを保つためのボディーシートの需要が高い。社内外を通して清潔感、体臭などはハラスメント問題にも発展しかねないから、ポイントは高い。
そして、若年層と同様に、青年層にもスキンケア用品は人気だ。健康的な肌にみられるように化粧水や乳液、シェービング後のケアアイテムなどが注目されている。
3-3.中高年層が注目するメンズコスメ
あらゆる世代でデオドラント系は注目されているが、中高年層からの支持が高い。
特に、中高年層にはデオドラント効果が高いメンズシャンプーやボディーシャンプーが人気だ。男性特有の臭いや加齢臭を意識する男性が多く、各メーカーからも消臭効果があるとする商品が売り出されている。
4.人気メンズコスメブランドの成功事例
市場としてはこれからの期待が大きいが、すでにメンズコスメブランドとして、成功しているブランドがある。
ここでは、2つの成功事例を紹介する。
4-1.【バルクオム】
メンズコスメを手がける中で、比較的新しい会社が「バルクオム」だ。バルクオムは、元々メンズコスメ事業から始まったが、2017年にはジム事業、2018年にはカフェ事業にも乗り出している。
表面的な「美」だけではなく、食や健康をも巻き込んだライフスタイルに関わっていく活動内容が特徴的だ。バルクオムは20~30代の男性に人気が高く、サブスクリプションといったビジネスモデルを選んで売上を伸ばしている。
サブスクリプションというのは、あるサービスを一定期間利用できる権利を売買することで、定額で音楽をダウンロードし放題のサービスや、更新型のパソコンソフト、定期購入の通信販売などが例として挙げられる。
バルクオムでは、2015年からメンズコスメの定期購入を開始した。数カ月間継続して化粧品を使用してもらうことで使用効果を実感してもらうことを狙っており、その戦略通り、売上は継続的に伸びている。
注文は、バルクオムのサイトや実店舗でできるが、オンライン上での販売が50%を占めている。さらに、SNSを通じた消費者とのコミュニケーションや、プロモーションを精力的に行っていることも、バルクオムのビジネスモデルの特徴だ。
LINEやメールで新商品やキャンペーンの案内を送ったり、YouTubeやInstagramを通じて広告を打ち出している。
このように、定期購入システムとSNSの積極的な利用が、バルクオムの成功の秘訣と言えるだろう。
4-2.老舗コスメブランド【資生堂】
新しいメンズコスメの会社、バルクオムが躍進する一方で、化粧品の製造・販売の老舗である「資生堂」でも、メンズコスメ事業を手がけている。
資生堂は、男性が興味を持ちそうなメディアを選んで、メンズコスメのプロモーションを行っている。
例えば、男性人気の高いラーメンチェーン「一風堂」とのコラボレーションだ。ラーメンのトッピングに使われている海苔に商品の広告を印刷したことで、思わず男性が見入ってしまう仕掛けになっている。
最近では、ソーシャルメディアや雑誌、テレビなどで、様々な商品の宣伝を大量に流すことが可能となった。
しかし、ここで問題となるのは、これまでメンズコスメに興味がなかった男性に、そのように商品に興味をもってもらい、購入してもらうのかということだ。
ターゲットが強く興味を示すものを通じて、商品のメリットを伝えていくことは重要だ。
・企業向けのセミナー実施
また、資生堂では、企業に向けたセミナーを開催していることにも注目したい。セミナーは「肌マネジメント研修」というもので、ビジネススキルの一つとしてスキンケアを推奨するものだ。
これまで多くの企業が資生堂にセミナーを依頼し、一回のセミナーにつき50人以上が参加している人気セミナーだ。
セミナーでは、海外のビジネスマナーではスキンケアが常識であることや、スキンケアの正しい方法などを学ぶことができる。
セミナーを通じて、
・メンズコスメに関心を持ってもらうこと、
・ビジネスでスキンケアが重要であること
この2つを理解してもらうことが狙いだ。
このように資生堂では、一消費者と企業に向けて、こだわりのプロモーション戦略を実施している。
発展するメンズコスメ市場に注目
身だしなみやボディメイク、自己啓発などを目的として、メンズコスメの市場は年々拡大してきている。
販売方法やプロモーション方法にこだわったビジネスモデルを構築していくことが、加熱するメンズコスメ市場で勝つ秘訣といえるだろう。