ラクスルのビジネスモデルで見る印刷業界で生き残るためのヒント

電子帳簿保存法にもとづいた資料の電子化など、法律の後押しもあってペーパーレスが加速している。
ペーパーレスで打撃を免れない印刷業界の中で、躍進を見せている企業がラクスルだ。

今回はラクスルのビジネスモデルについて解説していこう。

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ラクスル 

1. データからの印刷に特化したラクスルの企業概要と特徴

はじめにラクスルとはどのような企業なのか、概要と特徴について説明しよう。
ラクスル株式会社は2009年9月に設立された、新しい印刷発注システムを提供する会社である。

設立当初は「印刷比較.com」という社名だったが、2010年9月に現在の社名に変更している。
印刷を受注する会社ではあるが、ラクスル自体が通常の印刷会社のような役割をしているわけではない。

1-1. パートナーズ制度という新しい発想

ラクスルの一番の特徴は、「ラクスルパートナーズ」という独特な形態をとっていることだ。
ラクスルは「ラクスルパートナーズ」によって全国の印刷会社と提携している。

ユーザーはまずラクスルのサイトから発注を行い、そこから印刷物の内容や部数など条件に適した印刷会社に仕事が割り当てられるという流れだ。
つまり、ラクスルが印刷会社の窓口になっているのである。

印刷内容に沿って見積もりを出し、正式に受注を受けたら印刷して発送するというのが基本的な流れだ。

1-2. データからの印刷受注に特化したサービス

通常、印刷会社はデザインを担う部署を抱えていることが多い。
社内にDTPオペレーターまたはデザイナーを抱え、デザイン作成から受注して印刷物を完成させていくという流れが一般的である。

その一方で、デザイン事務所から印刷だけを受注する印刷会社も多いのが実情だ。

ラクスルの場合はデザイン作成からは受けていない。そのため、Illustratorなどですでに完成されたデザインデータからの印刷受注に特化しているのが特徴だ。
デザインから受注していた時期も見られたが、2019年10月現在ではテンプレートを使ったデザインツールがサイト上に用意されているのみである。

2. 空いている印刷ラインを有効に活用するための独自発想

2-1. 写植からDTPを経てペーパーレスへ

1990年代後半に入ると、それまで印刷の主流であった写植からDTPへと時代は急速に変化した。
パソコンの画面で直接デザインを起こせるうえに、入稿されたデータからはほぼ同じものが印刷される。

さらにデータ入稿はメールやサーバーが主流になり、同時にフリーランスのデザイナーが増えたことで印刷だけを受注する印刷会社も増えていった。

ところが、インターネットが一般にも普及するにつれ進んだのがペーパーレス化である。
銀行の通帳から官公庁の冊子などは積極的にペーパーレスが図られた。さらにスマートフォンの普及が、新聞や書籍の発行部数にも影響を及ぼしたのである。

2-2. 印刷業界の課題を解決した独自の発想

ペーパーレスによって、これまで官公庁の印刷物を担ってきた印刷会社でさえ、大きな打撃を受けることになったのだ。
その影響で印刷会社では稼働されることなく空いたままのラインも増えた。

中には倒産を余儀なくされた印刷会社も少なくはない。このような事態を救済したのがラクスルのビジネスモデルである。
ラクスルがインターネット上で受注した印刷物を提携先の印刷会社に振り分け、印刷を行う。

基本はデータ入稿というスタイルをとっているため、わずらわしい打ち合わせなどは不要だ。

ユーザーはインターネットを通じてオンラインで発注するため、営業を置かない印刷会社でも受注が可能である。
伝票やポスター、冊子などそれぞれの印刷会社ごとの得意分野で分け、さらに空いているラインを有効に活用できる。

このシステムによって、個別では仕事をとることが難しかった印刷会社を救済する役割も担っているのだ。

3. 印刷会社が自社工場を持たないメリットとデメリット

前述したように、ラクスルは「ラクスルパートナーズ」というシステムをとり、実際の印刷業務は提携先の印刷会社に任せている。
それによって印刷会社が抱えがちだった空きラインの活用に一役買っているわけだ。

オンラインでの印刷通販はラクスル以外にもあるが、自社工場を保有していないのはラクスルくらいである。
印刷会社でありながら、ラクスルが自社工場を持たないことはどのようなメリットとデメリットがあるのか見ていこう。

3-1.  自社工場を持たないことで得られるメリット

自社工場を持たないメリットはコストがかからないことである。
印刷機を購入するには、規模やメーカーにもよるが相応の資金が必要だ。

印刷機を設置するために必要なだけの広さを有する工場も用意しなければならない。
さらに、印刷業務に従事してくれる従業員の人件費も必要である。

印刷物といっても製本から複写式伝票、箔押しやエンボス加工といった特殊印刷までカテゴリーは豊富だ。
自社で製造まで請け負う場合はそれらに対応できる設備が必要だが、すでに保有している印刷会社を使うことでコストは大幅にカットできる。

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3-2. 自社工場を持たないことで起こりうるデメリット

自社工場を保有していないため、どのような印刷ができるかは提携先の印刷会社次第だ。
例えば、ユーザーが複写式の伝票を発注したいと思っても、複写式の伝票の印刷と加工に対応した印刷会社が提携先になければ受注できない。

対応している印刷会社がパートナー提携をしている時期があっても、その後業務提携を解除すれば次回は発注できないという事態も発生する。

これは、自社工場を持たないデメリットといえる。また、印刷の質が提携先によって変わるのもデメリットではないだろうか。

印刷業界のオンライン化が進む中での救世主的な役割

3-3. オンライン化への対応に悩む印刷会社の救出

インターネットの普及率が上がり、印刷業界でもオンライン受注に対応する会社は増えた。
ところが、すべての印刷会社がオンライン化に対応できたわけではない。

確かな印刷技術を持っていても、オンラインでの受注は難しいと感じる会社も存在する。
また、自社でオンライン化に成功できた場合でも、検索エンジンには同じような印刷会社がいくらでもヒットするわけで差別化を図るのは難しい。
ラクスルのビジネスモデルは、オンライン化にともなう悩みから印刷会社を救出したというわけだ。

3-4. 印刷会社の得意分野を一つの会社としてまとめる

印刷業界はさまざまな分野に分けることができる。
ラクスルは紙媒体に特化しているが、その中でもさらに細分化することが可能だ。

ポスターやチラシなどが得意でも、封筒や冊子のような加工がともなう印刷物はできないという印刷会社もある。
また、ステッカーや折り加工などを専門にしている印刷会社も多く、ユーザーがこれらの印刷会社を探すには1社ずつ当たるしかない。

ラクスルは全国の印刷会社と提携することで、それぞれの得意分野を会社としてまとめたのである。
これによって、ユーザー側にとっても発注しやすいシステムが確率できたというわけだ。

不況下の中で果たした上場に見るラクスルの今後とは?

3-5. 順調に売り上げを伸ばして上場

2018年5月に、ラクスルは東証マザーズで上場を果たしている。
前述したようにペーパーレスが進み、印刷会社は供給過多という見方をされる中、このタイミングで上場を果たしたことは企業としての大きな成長といえるだろう。

ラクスルの売り上げは初期の1億円に始まり、年々順調に伸ばして100億円以上を果たしている。
上場時の株式時価総額は400億円を超える勢いだ。設立以来、一度も下降することなく躍進を続けている。

3-6. 印刷市場に見るラクスルの今後の成長

日本国内での印刷市場の規模は約3兆円といわれている。
オンライン印刷が増えているとはいえ、実際には全体の4%前後に過ぎず、まだ1200億円程度にとどまっているのだ。

一方、ユーザーにとって問題なのは身近な印刷会社の倒産である。
インターネットで新たな印刷会社の開拓に追われる企業やフリーランスのデザイナーは少なくない。

つまり、オンライン印刷の需要はまだまだ伸び代が十分であり、ラクスルも今後成長が期待できる企業といえるだろう。

4. ラクスルのビジネスモデルは印刷業界の課題解決に役立っている

ラクスルパートナーズというスタイルを掲げるラクスルは、印刷業界の課題解決に役立っているといえる。
印刷市場に対してのオンライン印刷の割合はまだ低く、まだ十分伸び代がある分野だ。

ラクスルは今後まだまだ成長が見込める企業ではないだろうか。

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