名刺こそ企業の資産に!Sansanが生み出すビジネスモデルのカタチとは?

社内の名刺を一括で管理し、価値ある資産に変えるサービスに全国の企業が注目している。

この記事では、Sansanが生み出した「法人向けクラウド名刺管理サービス」というビジネスモデルのカタチから、起業のヒントを探っていく。

sansanのウェブサイト出典:Sansan

1. Sansanの理念から読み解くイノベーションのカタチ

まずは、Sansanの理念に紹介したい。

1-1. Sansanとはどのようなサービスなのか

Sansanとは、社内に眠る名刺をデータで一括管理し、人と人のつながりを情報として共有できるクラウド名刺管理サービスだ。個々人で管理していた名刺を社内で共有することによってさまざまなメリットを生み出し、企業の成長を後押ししている。

このサービスを提供している寺田親弘氏は、もともと三井物産の情報産業部門に在籍し、シリコンバレーでの経歴も含めて、日米のIT業界に精通した人物だ。2007年にSansan株式会社を創業して「名刺を企業の資産に変える」をコンセプトにサービスを提供している。

以来、利用企業数は約6000社に及び、シェアは82%を誇る。導入実績は業種や業態を問わず、大手金融機関から官公庁まで実に幅広い。

1-2. 「Sansan」に込められた想いとは

「San」は、日本語の敬称である「さん」を由来としており、英語のMr.や Ms.と同様に「人」を象徴する言葉だ。

「SanとSan」=「人と人」とをつなぐ出会いからイノベーションが生み出され、偶然の出会いを「必然」に変えることができれば世界も変えられるというのがSansanの理念だ。

過去を振り返ると、確かに多くの「人と人の出会い」が世界を動かしてきた。出会いが持つ可能性は、きっと未来にも通用するに違いない。社名をサービス名にしたのは、そんな意欲の表れと言えるだろう「Sansan」という言葉には、日本からグローバルに広がる価値を生み出したいという、強い想いが込められているのだ。

1-3. 名刺交換が、世界を変える

そして、Sansan社が出会ったのが「名刺」というビジネスチャンスだ。名刺を交わすという行為はビジネスシーンでは当たり前すぎて、それ自体がビジネスチャンスになるなど想像もつかなかっただろう。

しかし、Sansan社は名刺が持つ大きな可能性に着目し、名刺から始まる出会いの力で、ビジネスのカタチにイノベーションを起こすことを思いつく。

名刺交換でつながるビッグデータを人工知能で解析していくというアイデアの先には、無限の可能性が広がっていた。

2012年からは、ソーシャルの仕組みを取り入れた個人向け名刺管理アプリ「Eight」の提供もスタートさせ、200万人を超える登録ユーザーとともに新たなビジネスネットワークを構築している。世界を変えるという理念は、決して幻想ではなかったのだ。

2. そもそもなぜ名刺がビジネスモデルなのか

名刺を渡すビジネスマン

名刺はビジネスマンであれば必須であり、誰もが持っているものだ。定着しているものにビジネスチャンスを見出すきっかけとなったの、どんなことだったのだろうか。

2-1. ビジネスチャンスは机の中にあった

Sansanの起業者である寺田親弘氏は、名刺をビジネスモデルにした当時をこう振り返る。

「さまざまなビジネスツールがデータ化されているにもかかわらず、名刺は紙という形態で取り残されていた。ある日、必要な名刺を机の中から取り出そうとしてもなかなか見つからない。

普段からよく手にするものなのに、肝心なときにすぐに活用できないという無駄な困惑を感じるのは決して自分だけではないのでは?」という感覚に気づいたらしい。

ビジネスのヒントは意外に身近なところや、自分自身が困っていること、課題としているものにこそ存在するのだ。

2-2. 「それ、早く言ってよ」は、もう言わせない

寺田親弘氏は、社内外で共有すべき人脈についても問題意識を持っていた。「そのAさん、以前はB社で働いていた」「C社のDさんなら、学生時代からよく知っている」「もちろん名刺は交換している」といった会話はビジネスシーンでよく見られる。

しかし、これらの情報をもっと早く知っていれば、もっと効率良く仕事を進められたかもしれない。人と人とがもっと有機的につながっていれば、働き方さえも変えることができるはずだ。

「それ、早く言ってよ」と誰もが言わなくなる仕組みをつくればいい。人脈情報の共有性という問題意識を解消するために、起業のビジネスモデルとして選ばれたのが「名刺」だったのだ。

3. Sansanの特長とメリット

では、Sansanには具体的にどのような魅力があるのだろうか。クラウド名刺管理ならではの特長やメリットを見てみよう。

3-1. ほぼ100%の精度で名刺をデータ化

Sansanの最大の特長は、AI+人の手入力によって名刺をほぼ100%の精度でデータ化することだ。

スキャンした名刺情報を会社名・個人名・住所といった単位でデータ分割し、昇進や異動などの人事情報も自動で集約できる。高度なAI技術と人力のダブルチェックで正確なデータを共有できるため、社内に眠る人脈を全社的に有効活用することが可能だ。

情報漏洩のリスクに万全を期したセキュリティ対策で、情報の安全性にも取り組んでいる。

3-2. 部署を越えて社内を横断的に連携

蓄積された名刺情報を社内間でスムーズに連携する機能も特長的だ。「人」を軸とした情報が網羅的に集約されるため、特定の企業とパイプがあるのは誰かが容易に把握できる。

社員個人の強みが可視化されるプロフィール機能や、アプローチしたい人物と接点のある同僚にメッセージを送って、紹介を依頼する機能などがその典型だ。

「知りたかった」「言って欲しかった」情報をスピーディに入手することで、ビジネスを効率良く進めることができる。社内間で頼れる相手を見つけやすいため、肩書や部署を越えて社員の生産性を向上させることができるのだ。

社員数や拠点の多い企業にとっては、飛躍的に名刺管理の効率性が高まることが大きなメリットと言えるだろう。

3-3. クラウドとしての利便性

Sansanを利用する際は、オフィスでも外出先でも時間や場所を選ぶことはない。アプリを使えばスマホやタブレットで「名刺をスキャンする」だけで蓄積された名刺情報にアクセスできる。

名刺交換をした顧客が自社のどの部署の誰と接点があるのかも、モバイルで瞬時に確認できるのだ。逆に名刺交換の日時や打ち合わせの参加者などを簡単に記録することも可能だ。クラウド型ならではの使い勝手のいい利便性が高い評価につながっている。

3-4. Eightとの違い

SansanとEightの大きな違いは、蓄積した名刺データの共有性だ。Sansanは、社員の持つ名刺をデータベースとして一元化することで、人脈を社内で共有することができる。

一方、Eightは無料の個人向け名刺管理アプリであり、名刺データの拡張機能は個人の範囲にとどまっている。ただ、Eightの有料プレミアムなら共有性が強化されており、名刺データをCSVでダウンロードすることも可能だ。

いずれにせよ、あくまでも法人をターゲットにしたビジネスとして特化しているのがSansanなのだ。

4. Sansanの導入事例

国内では圧倒的なシェアを誇るSansanの名刺管理サービス。中小企業から著名な大企業まで、6000社以上ある導入実績からその一部を紹介する。

4-1. 日本郵便株式会社

目的は、各郵便局間の連携による営業強化。担当営業が個人で管理していた顧客の名刺情報を共有することで、組織的な営業活動の実現につながった。

また、Sansanのデータベースと日本郵便のはがき印刷のインフラを使い、一般企業の営業も支援している。

4-2. 株式会社サイバーエージェント

サイバーエージェントの中核を担うインターネット広告事業において、営業活動の強化を目的にSansanが選ばれている。

企業向けのスマートフォン広告プロモーションの提案、利用者増加などのサポートを行っている。

営業スタッフによるメール配信の負担軽減や、新サービスの告知、セミナー集客に向けた工数の削減といった課題に貢献した。

4-3. 住友商事株式会社

国内外に129の拠点を持ち、約7万人の従業員が働く住友商事は、グローバルな人と人のつながりを大切にしている。

そんな考え方と同調するように、Sansanの人と人をつなぐ仕組みを働き方改革の手段として導入した。
結果、名刺を管理する作業や時間的ロスが大きく圧縮され、情報共有の連携が進み、効率的で働きやすい環境が整った。

5. Sansanの功績を起業に活かすポイントと今後の展望

電球とポイント

ここまでの実績を踏まえ、今後さらに飛躍するポイントについて考えてみたい。

5-1. 一部門にとどまらない進化と継続性

サービスをスタートした時点のSansanは、営業という単一の部門をサポートするツールでしかなかった。

しかし、改良の時を経て、部門にかかわらず社内全体で有効活用できるプラットフォームとして進化させた。顧客情報を一元管理することで情報把握の工数を大幅に削減し、スピード感のあるビジネスを可能にしたのだ。

名刺を起点としてさまざまなソリューションにつながる「ビジネスプラットフォーム」、それがSansanだ。どのような部門でも業務の効率化に寄与するため、これほど現場から喜ばれるITツールはかつてない。

同時に、サブスクリプション型のビジネスモデルであることがSansanの強みでもある。起業に活かすポイントは、一部門にとどまらないサービス、ビジネスモデルのカタチの進化、そしてビジネスの継続性と言えるだろう。

5-2. Sansanの行方

Sansanはサービスの質の高さと解約率の低さに比例して、売り上げも増加傾向にあるようだ。

名刺管理の市場シェアでトップを維持していることから、テレビCMや採用活動による認知度の向上も見られる。

だが、利用者数全体では国内の総従業員数の約1%程度となっており、開拓余地は未知数で、まだまだ伸びしろのあるサービスと言えるだろう。

2019年の年頭、寺田親弘氏は「Sansan社は新たなフェーズに入った」と宣言している。成長期を経た革新期ということらしい。

また「ミッションのあるべき姿は『世界に挑むビジネスプラットフォーム』であり、その実現に向けて変化を恐れず挑戦していきたい」とも話している。人と人との出会いから、新たなアイデアやビジネスチャンスを生むSansan社のゆくえに今後も期待したい。

6. ビジネスチャンスは身近なところに存在する

名刺を起点とした人と人との出会いが、未来にまでつながっている。そんな壮大な理念も、実は身近なところから始まっていた。

ビジネスは、いつの時代でも人の助けになることが発想の源と言えよう。たかが名刺、されど名刺。しなやかな物差しで足元を見直せば、ひとつのアイデアが社内を縦横無尽に駆けめぐるようなビジネスモデルを見つけられるかもしれない。

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