急成長するコワーキングスペース「wework」のビジネスモデル

働き方が多様化する現代において、コワーキングスペースが注目を集めている。
そこで、いち早く目をつけたのが、今回紹介する「wework」だ。

この記事では、weworkのビジネスモデルを紹介するとともに、weworkが選ばれる理由を解説する。

1. コワーキングの増加で注目を集めるビジネスモデル「wework」とは?

wework

weworkは、企業あるいは個人を対象にワーキングスペースの貸出を行っている会社だ。2010年にアダム・ニューマン氏とミゲル・マッケルビー氏によってニューヨークの小さなオフィスから始まり、わずか10年足らずで世界中に拠点を構えるまでに成長した。

2019年7月現在、すでにオープンしている、また近日オープン予定の拠点は世界124都市、757拠点にのぼる。
その急成長から、非上場かつ企業としての評価額が10億ドル以上の会社を指す「ユニコーン企業」としても注目を集めている。

日本にも2018年2月に進出を果たし、1号店として六本木一丁目駅から徒歩約1分の場所にある「六本木アークヒルズ」の1フロアに拠点を構えた。

weworkのビジネスは、働き方の多様化が進む日本でも受け入れられ、その後も順調に拠点を増やしている。日本進出後、わずか1年ほどで東京、名古屋 、大阪 、横浜 、神戸、福岡の主要都市でサービスを展開するまでになった。東京では近日オープン予定も含め、25件のワークスペースを提供している。また、法人メンバーの売上が25%を占めており、マイクロソフトやみずほ証券などの大企業のメンバーも増加傾向にある。

ニッセイ基礎研究所 WeWorkのビジネスモデルと不動産業への影響の考察

2. シェアする時代のニーズを捉えたwework「コワーキング」のビジネスモデル

パソコンとwifi環境があれば、仕事場を選ばずに働く人が増えている。自然と物や空間をシェアする感覚が養われている。

ここにニーズがあると読んだweworkのビジネスモデルを探る。

2-1. シェアリングエコノミーというビジネスモデル

weworkのビジネスモデルは、欧米を中心に広がりをみせる「シェアリングエコノミー」だ。シェアリングエコノミーというのは、個人や企業が所有する物やスペースなどの資産を貸し借りする新しいビジネスモデルである。

わかりやすい例として「Airbnb」がある。このサービスは、インターネットを介して空き部屋を貸したい人と借りたい人をマッチングさせる、いわゆる「民泊」をあっせんするサービスだ。ホテルよりも低価格で宿泊でき、現地の人との交流も期待できるため多くの旅行者に利用されている。

2-2. コワーキングでも気軽にオフィスを持てる時代へ

こうしたシェアリングエコノミー型のビジネスモデルが支持される理由は、その気軽さだ。例えば、オフィスを所有したい時。これまでは「物件を購入する」「数年単位で賃貸契約を結ぶ」という選択肢しかなかった。もちろん、利用する人数に関わらず、スペースに対して一定の対価を払う必要があった。

ところが、シェアリングエコノミー型のサービスの登場によって、「1名分だけ借りる」「1カ月だけ借りる」という選択肢ができ、より気軽にオフィスが持てるようになったのである。

weworkが提供するサービスは、まさにこの「気軽に持てるオフィス」なのだ。

3. 成功の秘訣1:遊休資産にプラスαで新たな価値を創造

では、誰もが知りたい成功の秘訣を紹介していこう。

3-1. 遊休資産を利用して不動産オーナーとwin-winの関係に

オフィスを貸し出すためには、場所を確保する必要がある。そこでweworkが目をつけたのは、不動産オーナーたちが持て余している法人向けの空きスペースだった。

企業の撤退や移転などにより、空きスペースは次の借り手が見つかるまで、利益が生まれない遊休資産となってしまう。そんなスペースを見つけてはweworkが借り、いわゆる仲介業者のようにオフィスを必要としている利用者に又貸しする。
不動産オーナーとの間にwin-winの関係を成立させたのである。

3-2. 独自の技術力でスタイリッシュな空間を演出

weworkは、不動産オーナーから借りた空間をそのまま提供しているわけではない。weworkが若者を中心に注目を集めている理由は、彼らが提供するオフィスが「こんなオフィスで働きたい」と思わせるスタイリッシュな空間になっているからだ。

weworkの中は、自然の光を入る明るい空間になっている。配置されている椅子やソファ、机などのインテリアもおしゃれなものばかりだ。簡易キッチンもあり、コーヒーやお茶などのフリードリンクもある。こうしたアメニティの存在が、快適な空間として、よりオフィスの魅力を際立たせている。

weworkはBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)というテクノロジーを駆使した、利用者の動線やコミュニケーションの取りやすさを考慮した空間づくりを得意としている。このように、ただの空間に手を加えることで、新たな価値を創造に成功したのだ。

4. 成功の秘訣2:利用者を選ばない多彩なワーキングスペース

weworkでは、不動産オーナーから借りたスペースを区切り、利用者のビジネスタイプに応じた「デスクプラン」と「オフィスプラン」を提供している。

1名から250名以上まで幅広い人数に対応しているため、フリーランスなどの個人はもちろん、スタートアップや中小企業、大企業の支店としても利用することが可能だ。

4-1. 個人や少人数向けのデスクプラン

weworkには、1名からデスクを利用できる「共有ワーキングスペース」がある。利用者は、主にフリーランスやスタートアップなどだ。

デスクには「専用デスク」と「ホットデスク」の2種類があり、自分の好みに合わせてスペースを選ぶことができる。

専用デスクは、共有オフィス内に自分専用のデスクを持つことが可能だ。いつでも同じ建物、同じ机に出勤できる。一方で、ホットデスクは、共有エリア内の空いているスペースを自由に移動することが可能だ。仕事やプライベートの用事、その日の気分に合わせてwework間を移動することもできる。

4-2. 企業向けのオフィスプラン

企業に向けては、柔軟に拡大・縮小が可能な「プライベートオフィス」と、ワンランク上のサービスを受けられる「オフィススイート」を提供している。

オフィスには、デスクや椅子、キャビネットなどのオフィス用品が完備されているため、即入居も可能だ。1フロアやビル全体などの広範囲の貸し出しも行っている。

いずれのワーキングスペースにも、オフィスの必需品である高速Wi-Fiや業務用プリンター、AV機器などが備え付けられているため、初期費用を抑えてオフィスを確保したい企業にも人気だ。

また、24時間年中無休で出入りが可能なため、さまざまな勤務形態にも対応している。

5. 成功の秘訣3:独自のコミュニティとブランド性で差別化

数あるワーキングスペースの中でweworkが選ばれる理由は、weworkが持つコミュニティとブランド性だ。

5-1. 新たなビジネスを生むコミュニティマネージャーの存在

weworkの各拠点には、「コミュニティマネージャー」と呼ばれる存在がいる。彼らの役割は、オフィスの利用に関するサポート全般や、利用者の生の声を本社に届けること、そして、利用者同士をつなげることだ。

weworkでは、ビールを片手に利用者同士で交流できるハッピーアワーや、利用者をスピーカーとして迎える講演会、ヨガなどさまざまなイベントを開催している。こうしたイベントによって、利用者は個人間、あるいは企業間で、普段は出会えない異業種の人たちと人脈をつなげることができるのだ。このような出会いは、新たなビジネスが生まれるきっかけにもなる。「WeWork Commons」というメンバー同士が繋がるソーシャルネットワークもこうした交流を助けるツールとして提供されている。さらに、「WeWork Services Store」というサービスも提供している。これは、100以上の企業が企業向けのソフトやサービスを提供できるというものである。

weworkの利用料は、他のコワーキングスペースと比べてやや割高である。それでも多くの利用者が集まるのは、weworkならではの利用者同士のコミュニティに価値があると考えるからだろう。

5-2. 取引先に信頼されるweworkのブランド性

weworkが成功した理由の一つは、weworkブランドとしての価値を作り上げたこと。

会社のイメージを作るうえで、「どんな場所で働いているのか」は、判断基準の一つになる。例えば、取引先が来訪するとしよう。雑居ビルの一室に案内するのと、六本木のおしゃれなビルの一室に案内する場合、取引先の印象は大きく変わるはずだ。

weworkは、誰もが知っている主要都市の一等地に拠点を構えている。そのため、知名度が高く一種のブランド性があるのだ。好立地の場所に、おしゃれなオフィスを構えられるというのは、それだけで企業のイメージアップにつながる大きなメリットだろう。

また、決して安い利用料金ではないからこそ、その賃料を払えるというだけで取引先に信頼感を持ってもらうこともできる。

6. 付加価値をつけることで成功をつかんだweworkの「コワーキング」ビジネスモデル

数あるコワーキングスペースの中で、weworkが成功を収めた背景には、利用者のニーズにいち早く気付いた先見性があるだろう。

weworkは、コワーキングスペースの提供というビジネスモデルに、スタイリッシュなデザインや利用者同士のコミュニティなどの付加価値をつけることで成功をつかんだのだ。

現在、登録メンバーは約60万人に達している。しかし、2019年上半期の売上高は約15億ドルに対して、約14億ドルの営業赤字という厳しい数字である。これは、オシャレなオフィスへ内装を変える初期投資がかさんでいる為で、今後オープン予定のオフィスも多い。また、契約済で工事が完了していない物件も多く、今後もキャパはどんどん増えていくだろう。現在約60万席のキャパがほとんど埋まっている状態であるが、この状況が続くと考えると、大変大きな利益が見込めることになる。そうなると大きな営業赤字がこれから利益に変わっていく、まさに成長期であると言える。今後の成長と新たな成長戦略は目が離せない。

日本経済新聞

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