多くの婚活サービスが誕生しているなか、キャリ婚の注目度が高まっている。斬新な機能の数々で、働く女性から絶大な支持を集めているのだ。
この記事では、キャリ婚のビジネスモデルがどうして成功したのかを解説する。
出典:キャリ婚
目次
1. キャリ婚のサービス概要
キャリ婚の仕組みがどのようなものか、通常の婚活との違いを確認しておこう。
1-1. 無料プランと有料プランがある
株式会社ninoyaの運営する婚活サイトが「キャリ婚」である。キャリ婚は女性のみ、会員登録が無料だ。
ホームページから簡単に登録画面へと進むことができ、個人情報などを入力すれば会員となる。その後、プロフィールを編集して男性会員へのアピールポイントを示していく。
また、登録後に有料会員へのグレードアップもできる。有料会員になれば、男性会員にアプローチしたり、サイト内でメッセージを交換したりできる。男性会員の顔写真も閲覧できるので、有料会員にプランを変更する女性は多い。
そして、マッチングした男性とはメッセージを送り合うなどして出会いを目指す仕組みだ。
1-2. ハードルが高い男性の会員登録
キャリ婚は、男性側の登録が決して簡単ではない。まず、入会希望の男性はアカウント登録後に運営側と面談を行う。
面談では人間性のほか、職業や年収についても聞かれる。面談を通った男性だけが、プロフィール公開を許される。そのうえで、男性は自身のプロフィールを編集し、女性会員からのアプローチを待つ。
マッチングした女性会員と気が合うと思えば、実際に会う段取りが進んでいく。基本的に男性の利用内容はすべて無料である。ただし、有志が参加できるイベントやセミナーへの参加費は別途支払うことになる。
2. キャリ婚が今までの婚活サービスとの違い
女性をメインとするキャリ婚だが、他の婚活と違う点を紹介する。
2-1. 女性が主体で利用するサービス
多くの点で競合サイトとの差別化を目指しているのが、キャリ婚の特徴だ。大きく違うのは、男性が無料利用でき、女性が有料になるのは斬新なポイントだろう。
キャリ婚はあくまで働く女性のための婚活サイトを目指している。そのため、アカウント登録後、積極的にパートナーを探すのは女性側だ。サイト内で男性側にできるのはプロフィールを編集し、女性のメッセージを待つことだけである。
また、男性の面談で厳しい基準が設けられているのも見逃せない。その結果、キャリ婚にいる男性は高収入の紳士が中心となる。キャリアウーマンにとって、理想的な結婚相手を効率的に探せるのだ。
2-2. 価値観の不一致がない理由
婚活サイトやマッチングアプリの多くは、登録者同士のすれ違いが日常茶飯事だった。
実際に顔を合わせるまでに時間がかかるので、なかなか相手の本心を見抜けない。いざ最初のデートをしてみると、まったく話が合わないことも珍しくない。
しかし、キャリ婚では男性会員の面談時に「50項目の価値観診断」と「統計心理学i-color」に基づく質問がなされる。男性会員の価値観はここで細かく分析されるので、女性会員はそれを参考にアプローチができるのだ。
実際に、面談の時点で、キャリ婚のコンセプトに合わないと判断された男性会員は容赦なく落選させられる。つまり、女性が安心して婚活できる環境が整えられていると言える。
3. キャリ婚が女性会員から好評な理由
キャリ婚の婚活サービスが斬新であっても、登録して利用している女性たちが結婚へと至らないと意味がない。
実際に利用してい女性たちからの評価について考えてみる。
3-1. キャリアのある女性たちのためのサービス
2019年8月時点で、キャリ婚は男女ともに2000人を超える会員が登録するほどの人気となっている。だが意外にも、主宰の金沢悦子さんと川崎貴子さんは、ともに婚活ビジネスの専門家ではなかった。
2人はそれぞれの分野で女性たちの話を聞くうち、恋愛に臆病な女性たちがあまりにも多いことに気がついた。そして、彼女たちのなかには、社会的地位の高いキャリアウーマンが入っており驚くことになる。
社会人としての有能さが幸福な結婚につながるとは限らない。彼女たちが理想のパートナーと出会える仕組みを作りたいと考えた金沢さんと川崎さんはサロン主宰を経て、2016年11月にAV監督の二村ヒトシさんを加えたメンバーで「キャリ婚」を立ち上げたのだった。その成り立ちからして、キャリ婚は女性会員に向けられていたのである。
3-2. 女性たちの気持ちを優先する
主宰者たちが特に感じていたのは、女性たちの婚活疲れだった。彼女たちは既存の婚活サイトやアプリで、登録してから男性会員に失望させられることがあまりにも多かったという。
女性会員は真面目に結婚相手を探しているだけなのに、男性からは体目的のアプローチが絶えない。そのようなことが続けば、サイト内で個人情報をさらすのも怖くなっていく。
金沢さんや川崎さんは女性主体のビジネスモデルで婚活サイトを変革しなくてはいけないと強く感じていた。女性の婚活疲れ解消のためには「女性が男性を選ぶ」というルールが考案されたのだった。
4. キャリ婚の課題
キャリ婚については、口コミなどでよく指摘されている課題がある。個性的なサービスだけに、なかなかなじめない会員もいるようだ。
4-1. 高額な会員料金
女性の有料会員は、入会時に19800円(税込)を支払う。それ以降、2カ月更新で月額3850円(税込)を請求される仕組みだ。そのうえ、セミナーなども別途料金なので、料金が高いと感じる人もいるだろう。
ただし、人間関係のエキスパートである主宰者たちと直接話ができるセミナーなどもあるので「割に合わない」わけではない。だから、サクラや遊び目的の男性会員が多いサービスで時間とお金を無駄にするよりも、効率的が良いと考えることもできる。
4-2. 会員数が少ない
厳しいハードルを設けていることを考えれば、男性会員が2000人以上もいるのは決して悪くない数字だろう。それでも、一般的な婚活サイトと比べれば少ない。
しかし、アクティブユーザーの割合が高かったり、質の悪い男性会員がいない。会員数より質の高さで競合との差別化することができる。
4-3. 幸せな結婚のために
キャリ婚では、女性会員からの質問に対して金沢さん、川崎さん、二村さんが答える「恋の相談室」が人気コーナーとなっている。
キャリ婚は「マッチングさえすればいい」「結婚こそが正解」という価値観を押しつけるサイトではなく、女性が幸せに結婚するための手助けをしていると言える。婚活だけでなく、結婚後の意識を変えていくために、キャリ婚では女性へのアドバイスを欠かさない。
5. キャリ婚が狙うマーケティングポイント
キャリ婚には狙うべきターゲット層と戦略がある。その価値を維持することで競合との違いで差別化をしている。
5-1. ターゲット層を絞り込む
キャリ婚が成功したのは、ターゲット層のペルソナ化を徹底したことが大きいだろう。主宰者たちが実際にかかわってきた女性たちを参考に、成熟したキャリアウーマンの心理を細かく分析した。
そして、彼女たちが求める男性とマッチングできるよう、面談による登録者の振り分けを実施したのである。ほかの事業でも、キャリ婚のビジネスモデルは役立つだろう。
不特定多数の消費者に向けて商品やサービスを訴求しても、思うような反響は得られない。絞り込んだターゲットに好かれることで評判を呼び、自社サービスが市場での広がりを見せるのである。
5-2. 安さ以外の価値をつける
高額な会員料金は、キャリ婚の欠点にもみえる。実際、ネットユーザーからはその点を批判的に言及する意見も目立つ。
ところが、登録者の多くからは料金に関する大きな不満は聞こえてこない。逆に、女性会員は高額な会員料金を支払うことで、特別なサービスを受けられていると自覚している。
そして、男性会員も有料会員の女性が多いと知っているから、サクラに出会う不安もなく登録できる。もちろん、遊び目的の男性は面談で拒否するシステムだ。
安さ以外の部分で魅力を訴求したからこそ、キャリ婚のビジネスモデルは結果につながったのである。
6. ターゲットに合ったビジネスモデルを確立させる
マーケティングとはターゲットがいるからこそ成り立つ。キャリ婚のビジネスモデルも同様のことがいえる。
これから起業を目指す人は、誰のために、どのようなビジネスを始めるのかをしっかり考えて欲しい。