海外での起業は国内と比べてハードルが高いと思い込んでいる人は多いのではないだろうか。
たしかに言葉や文化のといった壁は存在するが、日本人ならではの強みを活かせば、決して難しくはないはずだ。
この記事では、海外での起業について幅広く説明していく。
目次
1. 海外で起業する5つの事前準備とポイントについて
起業で成功するためにもまずは、事前準備に必要なことと、その際のポイントについて確認しておこう。
1-1. 入念なリサーチと人脈、資金調達
事前準備が必要不可欠なのは国内での起業と同じだが、海外ではその何倍も労力をかけなければならない。
まずは、現地の情報収集、文化そして宗教については確認しておこう。国が変われば、日本では常識であっても、非常識なこともある。さらには、働くことへの認識の違いもある。
海外で困ったことがあっても、誰かがすぐに助けてくれるとは限らなし、何かを始めるにも一人では困難でも協力者がいれば上手くいくこともある。できる限り、人脈と資金調達できるようにしておきたい。
1-2. どのエリアに会社を置き、住むのかを決める
起業する国だけでなく、会社を置くエリアも決めておきたい。都心であれば交通も発展しているから利便性はいいだろう。あとは、治安の問題だ。これは会社もそうだが、自宅にもいえる。こうした情報も把握しておく必要がある。ここを見誤ると成功への道は険しくなるので、時間とコストをかけることが重要だ。
会社の場所が決まったら起業するのに支障がない滞在ビザを獲得して、住民登録を終える必要がある。
1-3. 会社登録証明書を取得する
どのような書類が必要になるかは、各国の法律や各自治体のルールによる。日本とは違い、いくつかの国では州ごとに法律が異なるので、注意しなければならない。
1-3-1. 語学力について
国や地域によっては、英語あるいは現地の言葉での事業計画書の提出が、求められることもある。役所の担当者に説明を求められた場合、相手を納得させられる語学力も重要だ。この辺は通訳を介することもできるので大きな問題ではないが、海外で成功するにはある程度の語学力は求められる。慎重を期すなら一度現地の会社に雇用されて、語学を鍛えるのも良い。
1-4. 銀行口座の開設
会社登録ができたら法人用の銀行口座を開設しよう。銀行は役所関係とは違うので、書類に不備さえなければ口座開設自体は難しくないだろう。
1-5. できれば長期滞在ビザの取得
諸々の準備が済んだら、長期滞在ビザへ切り替えておくのも一つの方法だ。物事をスムーズに運ぶためには、現地の弁護士などに協力を依頼することもできる。準備が整ったら事業計画書どおりにビジネスを始めよう。
2. 海外で起業するにはメリットもあればデメリットもある
海外で起業するメリットとデメリットについても知っておこう。
2-1. 海外で起業するメリット
なぜ日本国内ではなく海外での起業なのかというと、少子化が進み内需もこれ以上は期待できない日本とは違い、海外にはまだ可能性が残されているからだといえる。
また、国や地域によっては日本人が経営する会社というものが少ないので、競合も必然的に少なくなるのもメリットだ。
エリアによっては日本では当たり前のサービスがなかったり、品質の悪いものが売られていたりと、「日本の普通」を輸入するだけでビジネスになるのも利点だろう。つまり、起業にあたり斬新なアイデアが特になくても、成功する可能性が秘められているのだ。
さらに、場所を選べば国内で起業するよりもはるかに少ない資金でスタートできるのもメリットだ。
・物価が安い国であれば初期コストを大きくかけずに済む
・暮らしていくのにもお金がそれほどかからない
つまり、起業後ビジネスが軌道に乗るまでの期間を持ちこたえられる可能性も高まるだろう。
2-2. 海外で起業するデメリット
一方で、海外での起業にはデメリットもあるので注意が必要だ。
現地でのコストなどが安いということは、裏を返せばものやサービスが売れたとしても、日本円に換算するとそれほど多くの利益にはならない。
逆に、欧州などでは売れれば大きな利益になるものの、税金や生活コストといったものも高くなる。
また、日本人経営者との競合は少なくなるものの、現地の経営者が競合相手となることも見過ごしてはならない。たとえ相手の経営能力が自分より低かったとしても、侮れないことを知っておこう。
・相手は言葉を自由に扱えたりコネクションがあったりと、独自の強みがある
・実践上のビジネスでは押し負ける恐れがある(自分の会社のほうが優秀であっても)
現地の経営者とは、スタートラインにおいて本質的に平等ではない点はデメリットといえるだろう。ただし、こちらにも日本で鍛えられたセンスなどの強みもあるため、自身の良さを活かせば、決して太刀打ちできない相手ではない。
3. 現地には現地のやり方がある! 海外起業の注意点を把握しよう
海外で起業する際には、決して見過ごせない注意点がある。それは、日本のやり方が標準とは思ってはいけないということだ。
現地には現地のルールや文化があるので、経営者としてはそれを最大限尊重しなければならない。
たとえば、残業を嫌うエリアもあれば、シーズン休暇を1カ月以上取得するのが当たり前のところもある。雇用契約を結ぶ段階である程度はこちら側の要求を通すこともできるが、優秀な人材を獲得するためには現地の文化を積極的に取り入れる必要もあるだろう。
また、政情が不安定な地域などでは、税金や物価が一気に上昇するリスクもあるだろう。
現地のニュースに通じていないと、急激な変化についていけずにビジネスが失敗する危険性がある。
税金や物価の上昇リスクは日本国内にもあるためあくまで程度問題だ。だが、日々現地の人たちとのコミュニケーションを密にしておかないと、情報不足で対応に乗り遅れるリスクがあるので留意しておきたい。
4. 海外で起業するならどこの地域がおすすめ?
日本を離れて起業するなら、アジア諸国が選択肢に入るだろう。アジアといっても広大であり、文化も歴史も大きく異なる。
しかしながら、いくつかの地域では日本人と親和性の高い性格を持っているところもあり、日本的な感覚で接しても問題が少ないことも多い。また、アジアの新興国は経済的な勢いがあり、可能性は未知数だ。物価も安く、スタートアップには適した環境であるともいえる。
日本語を学んでいる現地人もほかの地域に比べると多いため、こちらも人材確保などの意味でビジネスの手助けとなる。地理的な近さはビジネスにおいては強みといえるだろう。
4-1. いま起業するなら狙いたい国
新興国と先進国、それぞれに良さはあるのだが、ここでおすすめの国をいくつか紹介したい。
4-1-1. フィリピン
まず最初におすすめしたい国はフィリピンである。フィリピンは日本とは異なり、今後の人口増加が予想されている。外務省 フィリピン基礎データによる現在の人口は1億98万人(2015年)。内閣府のデータによると2050年には、日本の人口が1億170万人であるのに対して、フィリピンは大きく増加し1億4620万人と予想されている。出生率も日本よりはるかに高く、平均年齢も日本より低い為、今後も高い需要が見込めるのだ。
4-1-2. スリランカ
スリランカは、2010年から2012年の間3年連続で実質GDP成長率が8%を上回っているというデータがある。日本が1.7%(2017年)、中国が6.9%(2017年)であることを考えるととても高い経済成長をしていることがわかる。生活が豊かになり、より利便性の高い生活に目を向け始める今こそ、日本の良さを活かした新しいビジネスをするのにおすすめのタイミングかもしれない。
4-1-3. モンゴル
経済成長率という指標で考えると、モンゴルも見逃せない。モンゴルは個人消費が好調であることなどから、今後も高い経済成長が予想される。資源の豊富なモンゴルは、インフラ整備などの生活基盤が整えつつ、今から経済発展を目指すというタイミングなのである。生活基盤が整うと、次はより便利でオシャレな生活を求めることが考えられる為、ファッションや雑貨などの分野もビジネスチャンスになる可能性が高い。2019年は実質GDP成長率が6.6%との予想も出ている。個人をターゲットにしたBtoCのビジネスを検討してみることも、成功の鍵かもしれない。
4-1-4. ポーランド
新興国の中で、おすすめの国を紹介してきたが、先進国についても紹介したい。ポーランドには、「ポーランド経済圏」と「特別経済区(SEZ)」という二つの投資支援システムがある。支援の決定基準を満たせば、10年から15年の間で一定期間所得税の免除を受けることができたり、起業減税を受けることが出来るという内容である。生活しやすい国でもあるので、ヨーロッパを舞台に新たなビジネスを展開したい方には、ポーランドもおすすめしたい。
4-1-5. 中国
最後に中国も紹介したい。中国では、地域別やプロジェクト別で優遇政策を設けている。優遇政策の内容についても、設備免税や技術開発費など幅広いことも特徴だ。初期投資が低く抑えられることは、スタートアップの時期にはとても大きい。
特に起業家育成プログラム「トーチ・プログラム」は、ハイテクイノベーションとスタートアップを融合させたプログラムで、スタートアップからPDCAを繰り返すことを重視しており、中国経済の発展に大きく貢献した事業といえるだろう。ご存じの通り人口も多い国なので、国内市場は日本に比べてかなり大きいことは確かである。自分のビジネスが対象の製品であるか、チェックしてみることもオススメしたい。
5. 海外での起業で成功した先駆者はたくさんいる!
起業しようとしている人にとって海外は可能性に満ちている。
日本で鍛えられたビジネスやサービスのセンスをフルに活かせば、経営を軌道に乗せることも決して夢ではない。すでに先駆者は何人も出ている。
5-1. 辻 友徳さん
インドネシアの首都ジャカルタで、2013年に電化製品の価格比較サイト「Pricebook」を立ち上げた辻友徳さん。2億6400万人と世界で4番目に人口の多いインドネシアは、IT化が日本ほど進んでいない。日本では数多く存在する価格比較サイトも、インドネシアではまだあまり多くはないのだ。そこに目を付けたビジネスは、毎月数百万人のユーザーが利用し、国内No.1の認知を受けるまでになっている。
5-2. 北尾 崇さん
2014年にメキシコで「ENVROY MENIKA」を設立した北尾崇さん。空気中の抗菌・除菌が出来る製品を輸出・販売する会社である。メキシコではマスクをする文化がなく、衛生状態が悪いことに注目し、日本の製品が売れると考えたのだ。このアイデアはまさに、日本では当たり前のことが、海外ではビジネスになるという事例である。現在は「サイバーエージェント・キャピタル」にて活躍を続けている。
5-3. 福山 太郎さん
2012年に、「Fond(旧社名はAnyPerk)」という会社をアメリカで立ち上げた福山太郎さん。「Fond」は850種類に及ぶ福利厚生のサービスとインセンティブ対象となる社員を表彰するサービスを提供する会社である。日本には昔から様々な福利厚生があるが、その文化を取り入れただけでない。IT化を用いて、利用施設でスマホに通知を受けるようにするなど、社員により利用してもらえる形で提供する一歩進んだサービスといえる。海外の大手企業からも利用され、米国トップシェアのサービスにまで成長している。
6. まとめ
今までの経験が海外ではビジネスになると理解し、一歩前に踏み出してみることが重要だ。新しい土地訪れて、実際に文化に触れてみることで、新しいビジネスが生まれる可能性も十分にあるのだ。文化も言語も異なる環境で、ビジネスをしていくことは、苦労することも多いだろう。しかし日本では味わえないであろう喜びと経験が、きっと出来るはずだ。