世界中で展開しているマクドナルドは、日本においてはほとんどの人が知っているであろう米国のファーストフード大手だ。
マクドナルドのビジネスモデルとして特徴的なのは、どこの街に行っても1店舗はある気がする、その展開の大きさだろう。
ここでは、マクドナルドがここまで知名度を広げた理由を、フランチャイズをキーワードに探っていく。
目次
1. マクドナルドにおけるフランチャイズのビジネスモデル
1-1 マクドナルドには日本において40年ものフランチャイズの歴史がある
フランチャイズの歴史は古く、150年前からそのシステム自体はあった。
しかし、日本においては1950~60年代頃からはじまったとされており、比較的歴史は浅い。
日本でフランチャイズが本格的に広まったきっかけは、1969年の第2次資本自由化と言われている。
そこでいち早くフランチャイズビジネスに乗り出した企業のひとつが、マクドナルドだったのだ。
また、日本に先駆け、米国では第二次世界大戦以降にマクドナルドはフランチャイズ展開をはじめている。
これは、日本進出前にすでにフランチャイズ展開におけるノウハウを蓄積していることを意味する。
フランチャイズビジネスの歴史が長いということは、その分多くの試行錯誤を繰り返し、成功へのプロセスを体系的に確立していることにほかならない。
マクドナルドは日本におけるフランチャイズビジネスの老舗であり、今も第一線で展開していることから、フランチャイズビジネスモデルの優れた参考例と言えるだろう。
1-2 フランチャイズオーナー(フランチャイジー)に求められるものとは
マクドナルドはフランチャイジーに対して、
・「起業家精神とビジネス成功への強い意志」
・「ピープルスキル」
・「“フルタイム・ベストエフォート”をいとわない強い意欲」
・「トレーニングプログラム参加への意欲」
の、主に4つを求めている。
ここから、マクドナルドにおけるフランチャイズのビジネスモデルの一端を垣間見ることができるだろう。
すなわち、マクドナルドはフランチャイジーに対して、マクドナルドが長年かけて確立した知識をきちんと理解しつつ、それだけに依存せず自らビジネスの舵を切る旺盛な意欲を求めているのだ。
2. マクドナルドのフランチャイズにおける理念とは
2-1 フランチャイジーを大切にする姿勢
マクドナルドは、とにかくフランチャイジーを大切にする。
これは、マクドナルドが店舗の多くをフランチャイジーに依存しているからだろう。
日本におけるマクドナルドの直営店はおよそ1000店舗、フランチャイズはおよそ2000店舗だ。
つまり、マクドナルドはおよそ3分の2の店舗をフランチャイズに頼っている形となる。
一般的に、フランチャイズ契約は親業者であるフランチャイザーにとって、ロイヤリティを得られ、かつ人材をそろえる必要がないなどの経営上のリスク軽減につながるものだ。
そのため、フランチャイジーはフランチャイザーにとって大切にすべき存在だ。その当たり前のことを、マクドナルドはきちんと行っている。
2-2 「Three-Legged stool(3本脚のいす)」というアイデア
マクドナルドがフランチャイズビジネスを展開するうえで、「Three-Legged stool(3本脚のいす)」という考えを示している。
ここで言う3本脚とは、フランチャイジー・サプライヤー・マクドナルドのことだ。椅子は1本や2本の脚だと簡単に倒れてしまうが、3本あればしっかりと安定する。
マクドナルドは、この3本の脚がそれぞれ強くなることでビジネス全体が成長すると考えている。
3. マクドナルドにおけるフランチャイズの仕組み
3-1 契約内容から見るマクドナルドのフランチャイズ
マクドナルドとフランチャイズ契約を結ぶ場合、期間は10年だ。
さらに、ロイヤリティは3%(店舗の合計売上に基づく割合)と、店舗の合計売上に基づく一定割合レント・ロイヤリティあるいは固定ベースのレント金額に加え、宣伝広告費として4.5%が徴収される。
初期費用としては、加盟金が250万円と、それぞれのケースによって異なる店舗取得額が必要となる。加盟金がゼロのフランチャイズ契約もあることから、マクドナルドのケースは高く見えるかもしれない。
しかし、マクドナルドがフランチャイジーに行うサポートを見ると、それほど高くはないと感じるだろう。
・サポート体制が充実
特にはじめて起業する場合、信頼できる誰かからのアドバイスは必要不可欠だ。
マクドナルドには、ハンバーガー大学と呼ばれる9~12カ月にわたる研修プログラムがあり、開業後もビジネスコンサルタントが経営をサポートしてくれる。
世界に名だたるグローバルカンパニーからのコンサルタントが入るのだから、オーナーにとっては心強いはずだ。
4. フランチャイズにはどのようなメリット・デメリットがある?
4-1 一般的なフランチャイズのメリット・デメリット
どのビジネスモデルにも長短があるように、フランチャイズビジネスにもメリット・デメリットが存在する。
・メリット
フランチャイザーにおけるメリットは、前述のように、ロイヤリティやコスト削減などが挙げられる。一方、フランチャイジーにとっては、商品開発や宣伝、コンサルタントを親業者に頼れることがメリットだ。
また、世界的に知名度が高いマクドナルドであれば、インバウンドの需要も自然と見込めるだろう。
・デメリット
逆に、フランチャイズにおけるデメリットは、一部の店舗が不祥事を起こした場合、余波が親業者やその他のフランチャイズ店舗におよぶことだ。
つまり、フランチャイジーは独立して経営をしているつもりでも、同じ看板を背負っていることから結局は一蓮托生だ。
マクドナルドはグローバルカンパニーという側面から、海外の1店舗が起こした不祥事であっても世界的に報道されるような問題に発展した場合には、日本のフランチャイズ店舗にも影響が出る可能性がある。
5. マクドナルド成功の秘訣を分析
5-1 日本人フランチャイジーは平均10店舗を持っている
日本には200名ほどのマクドナルドフランチャイジーがいる。
日本のマクドナルドフランチャイズ店が2000店舗であることから、ひとりのオーナーあたり平均で10店舗を持っている計算となる。
もちろん、1店舗だけ保有しているオーナーもいるだろうから、すべてのオーナーが複数店舗を持っているわけではないだろう。
しかし、この数字は客観的に見ても、いかにマクドナルドのフランチャイジーが成功を収めているかがわかるのではないだろうか。
言い換えると、マクドナルドはフランチャイジーから「複数店舗を持ちたい」と思われている企業なのである。
・素早く真摯な対応ができるマクドナルド
マクドナルドは長年培ってきたフランチャイズの歴史から、フランチャイジーとコミュニケーションの取り方を確立していると考えられる。
しかし、コミュニケーションだけでは信頼を得るのは難しいだろう。
そこで注目したいのが、2014年に起きた「鶏肉問題」だ。
期限切れの肉を加工して出荷していたとされるこの問題は、世界的に注目を集めた。
日本マクドナルドホールディングスのカサノバ社長は、すぐに情報開示を行い、品質管理担当者らを調達先へ派遣し、検査体制を強化すると発表した。
このような対応の結果、2015年の合計売上高がおよそ3765億円だったのが、2018年には5242億円にまで回復したのだ。
少子高齢化などで需要が縮小傾向にある日本において、これは驚異的な数字なのではないだろうか。
もちろん、これは一度問題が起きて業績が低迷した後の回復ではある。
しかし、信頼が損なわれても適切な対応をすれば、十分に回復し得ることを証明する好例と言えるだろう。
2019年にはさらに前年を超えた売上高を見込んでおり、5510億円を見通している。
マクドナルドは成熟した超巨大グローバルカンパニーのように見えるが、別の視点から見れば、まだまだポテンシャルを秘めている発展途上の企業なのだ。
6. マクドナルドはフランチャイズで支えられている
マクドナルドを支えているのは、フランチャイズというビジネスモデルだ。
コストやリスクの削減やロイヤリティなどのメリットがあるうえ、街に店舗があることで自然と宣伝にもなる。
どこへ行ってもある気がするマクドナルドの店舗は、フランチャイズビジネス成功の証なのだ。