さまざまな企業が新規参入し、市場規模の広がりを見せるのが「アプリ事業」だ。
大きな利益を生み出している事例は多いが、これから参入する企業にはまず、マネタイズの手法や仕組みを理解する必要がある。
この記事では、モバイルアプリ市場やマネタイズの仕組みなどについて解説する。
目次
1.モバイルアプリの市場と今後の展望
注目の市場だからこそ、今後の展望が気になるところだ。
1-1.モバイルアプリ市場について
モバイルアプリの市場は急速に成長しており、アプリ開発に携わるエンジニアも増加している。
アプリの数そのものが増加していることはもちろんだが、アプリ内広告やアプリ内課金などによる収益モデルも世界的に普及している状態だ。
1-2.モバイルアプリの今後の展望
アプリに関する市場データの分析・調査を行っている企業によると、モバイルアプリ業界の総年間収益は4.4兆円を越え、今後さらに増加する予想となっている。
新規事業としてモバイルアプリを始める企業も増えてきたが、市場はまだ飽和状態になっていない。
また、スマートフォンを所有している人は、世界人口の46%で半分も満たしていない。つまり、モバイルアプリの発展は始まったばかりで、今後もさらに成長する可能性がある。
2.アプリ内課金について
モバイルアプリにおいて、重要な収益となるのがアプリ内課金だ。
まずは、アプリ内課金はどのようなものか仕組みを知っておこう。
2-1.アプリ内課金とは
アプリ内課金とは、モバイルアプリには欠かせない収益化する仕組みである。
例えば、多くのアプリは無料で使用することができる。これは、収益化の前に、ユーザーを少しでも多く集めるための戦略である。
無料でも十分に使用できるが、「これがあったらいいな」とか、「特別なアイテムが欲しい」という、ユーザーの欲求を満たすためにあえて有料サービスやコンテンツを用意する。ここで購入をすることを「アプリ内課金」という。
あくまでも有料については、ユーザーに選択権がある。ここがポイントなることを忘れないで欲しい。
2-2.アプリ内課金の仕組み
では、実際に支払いはどのように行われているのか。
ユーザーは、サービスやコンテンツを購入する際、アプリストアが用意した決済方法で支払うことができる。
アプリ内で課金する際は、
- アプリストアに一定の料金をチャージする
- クレジットカード情報を登録する
一度チャージしておくと、あとはアプリ内の購入画面で手続きするだけで決済が完了する。アプリによっては、ユーザーがその都度課金するのではなく、月々の利用料金を設定して収益化している。
・アプリ内課金を導入するうえでの注意点
アプリ内課金は販売可能なものが制限されているため、これから事業展開していく場合は注意しなければならない。
販売可能なものは、デジタルコンテンツのみで、実在する商品やサービスを販売することは禁止されている。
例えば、写真・雑誌などのデジタルコンテンツや、アプリの追加機能、音声転送などのサービスは販売可能だ。
一方で、情報端末や衣類、食品など実物の商品・サービスは販売できない。さらに、ポルノや誹謗中傷にあたるコンテンツも許可されていない。
3.フリーミアム型の収益モデルを紹介
では、実際の収益モデルについて紹介しておこう。
3-1.フリーミアムとは?
フリーミアムとは、基本無料のモバイルアプリに、一部有料のサービスを組み込ませることで収益化するビジネスモデルだ。
具体的には、追加料金を支払うと、機能が追加できたり、サービスを継続して利用することができる。
3-2.収益モデルの事例紹介
実際の収益モデルとして成功している事例を紹介したい。
基本無料のチャットアプリをリリースして収益化に成功している事例がある。このチャットアプリでは、グループチャットの数や、ストレージの容量に制限を設けている。
有料プランに切り替えると、これらの制限がなくなり機能拡張できる仕組みだ。フリープランであっても、チャットアプリとして十分利用できる機能を備えている。無料で活用できるから、ユーザーは気軽にサービスを利用しやすい。
無料でサービスを利用してもらい、必要であれば、有料にする。ユーザーがストレスなく利用できるから、長く利用してもらえる。
継続して利用する中で、ユーザーがサービスを活用する範囲が広まれば、有料プランへ移行するケースも多くなる。
他にも、名刺管理やストレージサービスなどでフリーミアムを活用し、収益化に成功している企業は多い。どの企業も、無料で利用できる機能・サービスに制限をかけることで「ユーザーにもっと便利に活用したい」と、自然に感じてもらえるような仕組みになっている。
3-3.フリーミアムでサービスを提供する際の注意点
フリーミアムでポイントとなるのは、「自然な流れ」だ。
数あるアプリの中から、ユーザーが選ぶ理由に「無料のアプリ」ということが挙げられる。無料が大前提で利用する中で、いかに自然な流れでユーザーが有料のサービスやコンテツを購入する仕組みが必要になる。
例えば、無料のアプリで、使用できる機能やサービスの制限が多くなると、ユーザーは早い段階で離れてしまう。
ユーザーが定着しなければ、有料サービスや機能は購入してもらえない。そのため、ユーザーが不便に感じないよう、ツールを便利に活用できる最低限の機能・サービスは無料にしておかなければならない。
4.アプリ内課金のメリット
アプリのマネタイズにはさまざまなメリットがある。事業へ導入する際は、メリットを把握しておくことが大切だ。ここでは、マネタイズのモデルとしてアプリ内課金を例に挙げてメリットを解説する。
4-1.アプリ内課金の2つのメリット
そもそもアプリ内課金にするのなら、リリース時から有料で提供すれば良いのでは?と思われがちだ。しかし、ここには大きな違いがあり、アプリ内課金にすることで収益化できるというメリットがある。
では、企業側にどのようなメリットがあるのか見てみよう。
・ユーザーを集めやすい
ダウンロードが無料になっているため、ユーザーが少しでも興味があれば、躊躇なく利用してもらえる可能性が高くなる。
また、アプリストアなどで、アプリのタイトルや、基本機能の紹介を見るだけダウンロードしてもらる可能性があるから、アプリの宣伝・広告費削減にもなるのも大きなメリットだ。
ユーザーが、新規ダウンロードできるようにハードルを下げられることが、1つのポイントになる。
・ユーザーに与える心理的な負担を軽減できる
課金するタイミングはユーザーに委ねられている。ユーザーは、料金を負担しなければならないという心理的な負担が軽減される。
心理的な負担を軽減できれば、より継続的にアプリが使用される可能性が高い。ユーザーが確保できていなければ、収益が生まれるチャンスはない。
だから、コンテンツやサービスの質を高め、更新頻度も落とさないようにしておくことは必須だ。
課金するタイミングは、ユーザーによって違う。だからこそ、ユーザーに課金する価値が見出せるように、意識させることも大事だ。
企業は、アプリの質の高さが、収益化につながるということを理解してほしい。
5.アプリ内課金のデメリット
アプリのマネタイズはデメリットを把握しておかなければ、企業の利益に損害を与えかねない。ここでは、具体的なデメリットをアプリ内課金を例に挙げて解説する。
5-1.アプリ内課金の2つのデメリット
非常に簡単に思われがちなアプリだが、開発からリリース、課金までにはデメリットがある。
・収益化の仕組み作りに大きなコストがかかる
アプリのマネタイズの収益化モデルには、広告表示や買い切り型などもある。
これらのモデルはユーザーに課金をしてもらわなくとも、収益が発生する。
しかし、アプリ内課金は、ユーザーに課金してもらうための仕組みを作らなければならない。アプリそのものを開発するコストに加えて、この仕組みを実装するためのコストが発生するのはデメリットだ。
・企業努力を怠ると、ユーザー離れが加速する
アプリ内課金で収益化を目指す場合には、ユーザーが課金することを選ぶようにすることが必要だ。
無料部分との差別化をするために、課金対象となるコンテンツやサービスを更新し続けなければならない。魅力的なコンテンツ・サービスの展開できなければ、ユーザーは飽きてしまい、他のアプリを利用するだろう。
更新度の低いアプリや、新規コンテンツ・サービスがユーザーにとってメリットにならなければ、アプリから離脱する可能性は高くなる。
6.アプリのマネタイズに関する仕組みを十分に理解しよう
これからアプリ事業をスタートする企業は、マネタイズの仕組みを理解することが重要だ。
仕組みを理解して、自社にマッチした収益化モデルがどれかを判断しよう。メリットやデメリットも理解すると、リスクを軽減しつつ収益化を目指しやすくなる。