これまでのコンサルティングファームとは異なる視点でビジネスを展開しているのがデロイトトーマツベンチャーサポートだ。
日本のベンチャーをユニコーン企業に成長させるというビジネスモデルを、共に考え実行していくことに軸足を置いている。デロイトトーマツベンチャーサポートが行うビジネスと日本のベンチャーへのインパクトはどれほどのものなのだろうか。
目次
1. デロイトトーマツベンチャーサポートとは
デロイトトーマツグループは、高い専門性と幅広いサービス体制を武器にビジネスにおけるプロフェッショナルサービスを展開している。
そのなかでも、ベンチャー企業のサポートにフォーカスして、デロイトトーマツグループのリソースを最大限に活用しているのが、デロイトトーマツベンチャーサポートである。ここでは、デロイトトーマツベンチャーサポートの概要を説明していく。
1-1. デロイトトーマツベンチャーサポートの概要
デロイトトーマツベンチャーサポートは、ベンチャー企業の支援を目的として、すでに国内外約3000社のベンチャー企業とのあいだでネットワークを構築し、支援を行っている。
提供されるサービスは、大きく3つの軸によって構成されており、それぞれが個別のサービスでありながら、デロイトトーマツのネットワーク上で強固に関係性を築き上げている。
・ ベンチャー支援機関
ベンチャー企業を直接サポートし、成長させていくための支援を行うサービス。
・ イノベーション創出支援
大企業がベンチャー企業と協業するための目利きや協業のための社内環境の創出を支援するサービス。
・ 政策提言・実行支援
企業の成長を支援するベンチャー政策の提言や立案、実行を支援するサービス。
1-2. 強みとなっている特徴はバランスの良い人材
コンサルティング企業のグループ会社であるため、最初の立ち上げメンバーはたったひとりの会計士。
その後、外部からベンチャーに関わった経験をもつ会計士、コンサルタント、官公庁出身者、大企業で新規事業を担当した人材、海外事業経験者などが集まってきた。
当然のことながら、海外事業も視野に入れたベンチャーもあることから、多国籍のチーム編成が行われている。
2. デロイトトーマツベンチャーサポートの旗揚げのきっかけ
デロイトトーマツベンチャーサポートの旗揚げは、2010年のことだ。始まりは、デロイトトーマツのコンサルティング業務内で発生した顧客ニーズによるものが大きい。
初めは業務のひとつとして受けていた内容を、よりベンチャー企業というキーワードで特化したサービスを行うべく会社を立ち上げた。そのため、業務のフォーカスは、もちろんベンチャー企業支援である。
最初の事業モデルは、ベンチャー企業へ直接アプローチするのではなく、行政や大企業からの依頼を受けるところから始められている。
行政から政策を変えてほしいというコンサルティングでの課題や、大企業からのベンチャーとこういう事業を作りたいといったビジネスモデル立ち上げの依頼を主な業務としていた。2
010年以降の市場では、ベンチャー向けのM&Aのニーズが急激に増えていたこともあり、国内外に限らずベンチャーへ熱い視線が注がれていた時期である。
その後、デロイトトーマツベンチャーサポートは、ベンチャー自体にも目を向け、両サイドからのアプローチという現在の形に落ち着いている。
3. ベンチャー支援メニューは世界を視野に
ベンチャー企業にとって、自分たちがどのようなビジネスモデルを構築すれば、スムーズなテイクオフができるのかは常に大きな課題である。
特に立ち上げ時のベンチャーにとっては、社内のリソースが少ないこともあり、経営チームのなかでも特に社長は頭の痛い思いをしている。そこにサポートの手をのばし、デロイトトーマツのリソースをフル活用して支援を行うのがベンチャー支援メニューになる。
3-1. 販路拡大
販売する商品は出来上がったが、それをどのように売っていくのかは別問題である。多くのベンチャー企業では、爆発的なトレンドにならない限り販路問題は解決しない。
デロイトトーマツベンチャーサポートは、自身のリソースから最適な取引先を紹介し、アライアンスの提案を行う。これにより、早期の事業立ち上げが可能になる。
3-2. PR支援
プロモーションなどの商品のアピールにはさまざまな手法があり、どれが一番効果的なのかは、その商品の特性とターゲット顧客による。これは、B2BであってもB2Cであっても同様である。
ベンチャー企業にとってその選択はむずかしく、コストパフォーマンスが高くより効果的な方法の選択と実行は骨の折れる作業になる。
デロイトトーマツベンチャーサポートでは、TV、ラジオ、インターネットといったメディアや記者の紹介などをおこないより迅速な効果が期待できるPRを支援する。
3-3. 資金調達
ベンチャー企業において急成長モデルを構築しようとする際に大きな障壁となるのが、資金問題である。そのため、資金調達は、最優先課題のひとつに挙げられる。
デロイトトーマツベンチャーサポートでは、資金調達の際に必要となる事業計画書策定や資本政策の支援を行う。
3-4. 支援人材紹介
ベンチャー企業の多くは、さほど多くの人材を抱えてはいない。また、外部の人材との関係もさほど強くはない。
そのため、企業の円滑な運営において不可欠となる弁護士や税理士といったライセンスを持つ人材の紹介は大きな支援となる。デロイトトーマツベンチャーサポートは、幅広いリソース支援を行い円滑な運営をサポートする。
3-5. 海外進出
商材によっては、海外でのビジネスにチャンスを見いだせるものも少なくない。また、製造において海外拠点がキーとなる場合もある。
そのため、現地企業やVCの紹介をすることでベンチャー企業をサポートすることができる。
3-6.育成人材紹介
ベンチャー企業の多くは、常に人材不足を感じているが、簡単にリソースの確保はできない。しかし、社内で育てることはスピードがついていかない。
そのため、インターンやCFO育成など、人材の紹介や育成のサポートを行っている。
4. 大企業とベンチャー企業を繋ぐイノベーション創出支援
単一商品を扱う企業であっても、常に新しいビジネスモデルへの挑戦は続けている。大企業にとって自ら開発し実行するビジネスもあれば、外部との協業によって新しいビジネスを生み出す場合もある。
イノベーション創出支援は、このような環境にある大企業へのさまざまな面からのサポートサービスである。
4-1. ビジネスマッチングでより安心できる企業間協業を実現
大企業とベンチャー企業では、ビジネスに関して大きな隔たりが存在する。大企業から見ると協業しようと考えているベンチャー企業の技術に対する不安感や企業自体の信用度がある。
一方、ベンチャー企業を見ると、大企業だからこその意思決定スピードの遅さや一方的な要望への対処法に不安を感じる。こうした隔たりを埋めて、よりスピード感があり成功要因の多い協業を目指すべくアプローチを行うサービスがビジネスマッチングになる。
4-2. 大企業の事業インキュベーションのギアを上げる
大企業における新規事業創出の基盤となるのは企業文化、人材、制度、情報の4つの要素になる。それぞれの要素に対して、アドバイザリーサービスや情報提供、研究などを行いサポートしていく。
5. 今、ベンチャー企業に必要なものを提言
企業の成長は市場環境に大きく影響を及ぼす。より効果の高い市場環境を生み出すためには、政策との関連は必須事項となる。
一方で政策側から見れば、経済の活性化や産業の課題認識は、現場にいなければわからないことが多く、どのような政策が最もインパクトが大きくなるのかがわかりかねていることも少なくない。
しかし、政策に携わる人材が一つひとつそれらを拾い上げていくことは難しい。
そのため、ベンチャー企業の現場感をそのままにパブリックな課題として政策立案を行い、実行していくこともデロイトトーマツベンチャーサポートの支援となる。これにより経済成長のエコシステムの創出を目指す。
さらに、外部とのさまざまな接点の場として各種のプラットフォームとしての取り組みも実施。起業家朝会や教育、インキュベーションスクール、パブリックピッチなどベンチャー企業の育成を、視点を変えてサポートする。
6. 日本からベンチャービジネスのモデルを発信
以前は日本のベンチャービジネスは難しいといわれてきた。それらには多くの課題が挙げられていたが、課題の一つひとつを企業に合わせてクリアしていくことで、急成長モデルを実現できる企業環境が整う。
デロイトトーマツベンチャーサポートのサービスは、すでに保有している巨大な企業データベースと経営に関わるノウハウを組み合わせ、ベンチャー企業に合わせてカスマイズすることでより強大なサポーターとなっている。