ビジネスシーンでは「スタートアップ」という言葉が浸透しつつある。
しかし、まだ「ベンチャー」と混同して使っている人も少なくない。
この記事では両者の違いが分かるように、それぞれの特徴を紹介した後、具体的な相違点について詳しく述べていく。
目次
そもそもスタートアップとは?
日本ではスタートアップは定着しきっておらず、いろいろな意味で用いられているのが実情だ。
単純に新しい企業という意味で用いている人もいるが、適切な使い方ではないので注意が必要である。
以下に代表的な特徴を挙げるのでチェックしておこう。
ビジネスの創出と市場の開拓
スタートアップの意味は「新規のビジネスを創出して市場を切り開いていくこと」だが、それを実践している企業を指す言葉としても使われている。
発祥の地はアメリカのシリコンバレーで、そこで誕生した新しい企業のことを表現するために用いられていた。
厳密な定義はないが、創業から2~3年ぐらいの企業に対して用いられる傾向がある。
これまでに存在しない着眼点により急激な成長を成し遂げ、短期間で大きな利益を生み出そうとするのが基本的なスタンスだ。
自社という限られた枠組みだけでなく、社会全体にイノベーションを起こすことも必要であると捉えている。
原動力となる従業員の成長が重要
誕生して間もない企業ということで、規模は決して大きくはなく、人材に関しても少ないのが一般的である。
この時期は地盤固めとして、従業員に組織の一員としての自覚を促し、将来を見据えて前進していく意識を持たせなければならない。
したがって、人材の少なさにより一人ひとりの役割が大きくなることは、長期的に見るとマイナスではない。企業のスタートアップと同様に主体的に先手を打っていく力が養われる。
ベンチャーについて確認しておこう!
すでにベンチャーという言葉は定着しており、「ベンチャー企業」という表現として用いられるのが一般的である。
スタートアップとは異なるものなので、何が違うのか理解するために意味や特徴をおさらいしておこう。
チャレンジ精神と新規事業の立ち上げ
ベンチャーを日本語に訳すと「冒険」であり、ビジネスシーンにおいては、チャレンジ精神を持って新規事業を立ち上げることを意味する。
そこから転じて、成長の過程にある若い企業を指すときに用いられることも多い。
ベンチャー企業はいろいろな面でまだ不安定だが、躍進していく勢いを持っていることが特徴だ。
資本力では大企業に及ばなくても、新しい技術やアイデアを武器として立ち向かっていく。
ただし、ベンチャーをこのような意味で用いているのは日本だけであり、外国のビジネスパーソンには通じない可能性が高いので注意が必要だ。
成果主義により従業員を鼓舞
ベンチャー企業の多くは従業員の評価に成果主義を導入している。
日本で伝統となっている年功序列とは違い、入社時期や年齢は重視せずに、実績を残せば誰でも昇給や昇進をさせるシステムだ。
実力が伴わなければ一向に出世できない厳しい一面もあるが、20~30代で組織の中枢を担うポジションにつくことも夢ではない。
そのため、IT系の企業を中心に高い志を持った若手が集まる傾向が見受けられる。
即戦力を必要としているので、高度なスキルを持ったベテランの中途採用にも積極的だ。
ゴールが違う!企業として何を目指しているのか?
上記のようにスタートアップとベンチャーは意味や特徴が異なるが、その基準だけではどちらに該当するのか判断が難しい企業も存在する。
明確に区別をしたいなら、両者の目指しているゴールが以下のように異なることを覚えておくと参考になるだろう。
スタートアップのゴールは?
スタートアップ関連でよく用いられる言葉として「EXIT」が挙げられる。
日本語では出口という意味であり、ビジネスシーンにおいては事業の出口として投資した資金の回収を指す。
また、それを重視するスタートアップの方針は出口戦力と呼ばれることがよくある。
創業からできるだけ早くEXITを達成することを念頭に置いており、そのための手段としてスピード感を持って事業を展開していく。
企業買収や株式公開などマネジメント分野での活動にも力を注ぎつつ、資金を回収して十分な利益を得た時点でゴールに達したことになる。
ベンチャーのゴールは?
多くのベンチャー企業が目指しているのは、収益の安定化と継続的な成長だ。
つまり、事業が軌道に乗っていない状態から脱却して、経営基盤のしっかりした大企業になることをゴールとしている。
必ずしも短期で大きな収益を得ることを狙っておらず、従業員にはオリジナリティを求めつつも、企業全体としては確実性を重視した選択を行っていくことも少なくない。
そのため、成長にかける期間や規模が大きくなった後の展開を明確に定めていないケースも見受けられる。
リスクの捉え方が対照的!ビジネスモデルに大きな差
スタートアップとベンチャーはゴールが異なるため、そこに至るビジネスモデルに関する違いも大きい。
また、その違いの影響もあり、創業して間もない時期の経営スタイルの差も顕著だ。
したがって、ゴールを確認できなくても、事業の様子を観察するだけで、企業がどちらに該当するのか判断できる場合もある。
ビジネスモデルに対するアプローチ
新しいビジネスモデルを打ち出すことはスタートアップの特徴の一つだ。
市場にあふれている既存のビジネスモデルに価値を見出さず、オリジナリティのあるものを確立することが最初の大きな仕事となる。
想定どおりには確立できないケースもあり、失敗のリスクは大きいが、その分だけ成功した場合のリターンは大きい。
それに対して、ベンチャーはビジネスモデルの新旧にはこだわらない。
むしろ、すでに市場に定着しているビジネスモデルのなかから、失敗のリスクが少ないものを選んで踏襲するのが基本だ。
初期段階における経営スタイル
スタートアップの場合、ビジネスモデルの模索を続けている間は、まったく収益がないことも十分にありえる。
それでは企業を存続できないので、投資家を頼って企業の運用に必要な資金を調達するのが一般的だ。
数回にわたって資金を調達しつつ、ビジネスモデルの確立によりEXITを目指す体制が整うことで、本格的に事業をスタートさせられる。
一方、ベンチャーでは最初から事業を本格的に開始し、企業の存続のために収益をしっかり確保していくことを重視する。そのため、早期に体制を整える必要があり、従業員の教育や組織づくりといった社内プロセスにも熱心に取り組む。
社会貢献に関する相違点も要チェック!
社会貢献との関連性も、スタートアップとベンチャーの違いでよく挙げられるポイントだ。
いまや社会貢献の度合いも、企業の存在意義の一つとして重視されることが多いのでチェックしておこう。
最重要の課題として認識しているスタートアップ
両者ともにビジネスを行っているので、収益の最大化を狙うのは当然だ。
しかし、スタートアップはそれだけに留まらず、世の中に存在する問題の解消も最重要であると考えている。
自社の商品やサービスでそれを実現することにより、社会に貢献していこうとする精神が企業活動のベースだ。
問題に対してこれまでにない解決法を検討するため、新しいテクノロジーを生み出す機会が必然的に多くなる。
資金援助を受けられることが前提なので、そのような文化が育まれていない日本では成功率を上げるための
工夫が必要だ。
企業活動が社会貢献につながりやすいベンチャー
ベンチャーは必ずしも社会貢献を重視しているわけではなく、あくまでも収益の観点からさまざまな判断を行う。
しかし、企業活動が結果的に社会貢献につながることは珍しくない。
フットワークの軽さを生かし、大企業が手を出しづらい分野でビジネスチャンスをつかむことがよくあるからだ。
たとえば、利用者が限定される特殊な福祉機器などのニッチな分野に参入して、高いシェアを獲得するような企業もある。結果的に、選択肢が少なくて困っていた人たちを助けることになるので、社会に貢献したという見方も十分に可能だ。
類似点もあるが両者は別物!違いを把握して混同を避けよう
スタートアップとベンチャーには共通する部分もあるが、明確に異なる点も多いので注意が必要だ
特に、ビジネスシーンにおけるコミュニケーションで用いる場合は混同しないように気を付ける必要がある。
両者の意味や特徴を把握し、ゴールやビジネスモデルなどを区別できるようになっておこう。