社会人がマーケティングを学ぶ際、書籍を頼るのは自然な行為だろう。ただ、実際に教科書と呼べるほどの本があるかどうかは疑問でもある。
この記事では、マーケティングを本で学ぶ意味やおすすめのタイトルを紹介する。
目次
1. 本を読むだけでマーケティングを学ぶことはできる?
勘違いしてはいけないのは、本で身につくのはあくまで知識に過ぎないという点である。どれほど知識が備わっていても実践の場がなければ経験は積めない。本さえ読めばマーケティングを習得できるなどということはないだろう。
ただし、個人のスキルを正しく伸ばしていくには、自分の殻に閉じこもっているだけではいけない。第三者の経験や知恵を借りることで、新しい視点を獲得できる。
そのために、成功者や研究者の書いた本は教科書として参考にできるのだ。ビジネスパーソンとして成長を続けたいなら、読書習慣は役立つだろう。
1-1. 本選びの参考にするポイント
まずは「基礎を教えてくれる本」から読み始めてみよう。
社会人になると、なかなか初歩的な知識は人に聞けない。それに、自分では基礎を理解しているつもりでも、案外あやふやに覚えている部分は多いものだ。
それなりのキャリアを積んだ社会人であっても、マーケティングを一から学び直してみよう。
次に「実践的な本」もおすすめである。読み物として楽しくても、机上の空論に終始している本は実にならない。
仕事に活かすなら、実践まで書かれている本を読み込みたいところだ。「哲学がある本」も重要である。マーケティングで成功した人間の思考法、価値観は違う分野で働く読者であっても大いに刺激的だろう。
2. マーケティングの本を読んで欲しいタイプ
ひとえにマーケティングの本と言っても幅が広い。そこで、仕事や地位、また性格など個性から、適しているジャンルを紹介する。
2-1. リーダー職に就いた人
すでに、人の上に立っている人、もしくは立ちたいと望んでいる人。マーケティング能力は、企業の経営戦略を決定する作業だ。そのため、担当する人間には、周囲を巻き込むだけのリーダーシップがないといけない。
斬新なアイデアを押し出すときなどは特に、部下が「ついていこう」と思えるだけの頼りがいを見せたいところだ。こうした振る舞い、思考法を本から学ぼう。
2-2. 新しい発想を生み出したい人
イノベーションの教科書としても、本を活用しよう。マーケティングには、時として画期的な戦略が必要となる。
誰も思いつかなかったイベントやキャンペーンを実施することで、大衆の興味を引きつけられるのだ。アイデアを出すのに苦しんでいるときは、本からヒントを得られる場合もあるだろう。
2-3. コミュニケーションが苦手な人
マーケティングはクリエイターや営業職、クライアントなどさまざまな人々との調整も求められる。
そもそも、企業と消費者のコミュニケーションとの考え方もあるだろう。対話力や人づきあいが苦手なら、本を読んで克服することも可能だ。
2-4. トレンドを追いかけたい人
世間のトレンドを押さえれば、マーケティングの成果は挙がりやすくなる。
しかし、流行が廃れるのはあっという間なので、メディアや消費者心理は常に追い続けなくてはいけない。トレンドを観察するコツは、第一人者たちの著書から教えてもらおう。
3. マーケティングを本から学ぶメリットとは
ここでは、マーケティングを本から学ぶメリットを紹介する。
3-1. 失敗談を参考にできる
マーケティングの本には成功例ばかりが書いているわけではない。悪い例や注意点が数多く示されているのもポイントだ。なかには、著者の通ってきた失敗談を教えてもらえる場合もある。
そして、時には失敗談が成功事例以上に参考となる可能性もあるのだ。失敗を分析し、欠点を修正することで成功につながる。読者は本を通し、失敗を成功に換える思考法を吸収できる。
それに、有名な実業家やクリエイターでも失敗を経験してきたこと、それ自体が読者の勇気となるだろう。「それならば、自分も恐れずに新しいことをしたい」と仕事を前向きにできるようになるはずだ。
3-2. プレゼン能力が上がる
顧客に提案を納得してもらったり、上司に企画を通してもらったりするにはプレゼン能力が必須である。優秀なマーケティング担当者のほとんどが、自己主張を通すためのスキルに長けている。
もしも口下手で押しも弱い人間がいるとしたら、本を読み込むことで弱点をある程度改善できるだろう。なぜなら、本で得た知識は自信となるからである。
市場の仕組みを深く理解していれば、迷いなく話せる。その姿が、周囲から「頼れる人物」として認識されるのだ。そして、成功経験豊富な著者の語彙や言い回しに触れているうち、人の気を引く話し方が身についていくだろう。
シンプルに他人の心をつかむ技術は、文章から学べるはずだ。
4. 初心者向け!マーケティングの基本がわかる本3冊
ここからは、マーケティング初心者が最初に読みたい3冊の本を紹介していく。
4-1. ビジュアル マーケティングの基本(野口智雄・日本経済新聞出版社)
値段も手ごろで、文章も平易なため、読書習慣のない人にも触れやすい1冊だ。マーケティングの基礎がやさしく解説されていく。製品、価格、チャネル、プロモーションの4大要素を中心としながら、SNSなどのトレンドも押さえている。
4-2. マーケティングの基本この1冊ですべてわかる(安原智樹・日本実業出版社)
「定量」「定性」といった専門用語についてわかりやすく解説している本だ。定量とは、数に限りがある商品のことを指す。一方、定性とはネーミングなど、人間のアイデアによって生み出されるものだ。
マーケティングとは定量と定性の兼ね合いである。消費者調査などのデータを参考にしながら、定量と定性をいかにマーケティング理論へと落とし込んでいくかを説明してくれる。
4-3. 100円のコーラを1000円で売る方法(永井孝尚・KADOKAWA/中経出版)
マーケティングの根本的な概念である「需要と供給」の関係について、丁寧に述べていく本だ。10のエピソードを通して語られる市場原理は、あらゆる分野で働く人々の参考になるだろう。
マーケティングとは、商品の魅力を訴求するだけの仕事ではない。ターゲットを絞り込んで、商品が売れる状況を作り出す仕事なのだとわかる内容だ。
5. マーケティング経験者も押さえておきたい応用の3冊
この段落では、ある程度のキャリアを経てきた人向けの本を3冊紹介する。
5-1. 図解実戦マーケティング戦略(佐藤義典・日本能率協会マネジメントセンター)
これまでのマーケティング理論は欧米の学者の研究を参考にして築かれてきた。しかし、その大半は大企業にしかあてはまらず、中小企業はマーケティングに苦戦することも多かった。
本書は、日本の中小企業でも実践できるマーケティング理論についての教科書である。職場に生かしやすい方法論まで書いてくれているのもうれしいポイントだ。
5-2. マーケティング脳vsマネジメント脳(アル・ライズ&ローラ・ライズ 翔泳社)
冷静かつ客観的に市場を見つめるのがマーケティングだとすれば、時には感情的に部下と接さなければいけないのがマネジメントである。双方は一見相反する概念でありながら、どちらかが欠けても組織は立ち行かなくなる。
マーケティングを実践しながらもマネジメントがおざなりにならないよう、心がけを説いた本だ。
5-3. 結果が出る[SNSマーケティング]てっぱん法則(森寛弘・扶桑社)
コンサルティング界の大物が、SNSマーケティングの極意を伝授してくれている。現代社会ではSNSのシェア数や「いいね」の数などが売上に大きく影響する。
著者は、成功するテキストや動画には「鉄板の法則」があると述べ、具体的に紹介していく。SNSに力を入れたい企業で働く人なら、押さえておいて損はないだろう。
6. マーケティングの疑問点や不安は教科書になる本で解決しよう
自力でマーケティングの知識を身につけるのは難しい。この世には、教科書にできるビジネス書や専門書がたくさんある。
積極的に読んでみて自分の業務に生かせるポイントを真似すれば、スキルアップにつながるだろう。