amazonは1995年に創業して以来、爆発的な成長を続けている。
世界最大のネット小売業者として不動の地位を築き、いまや世界経済にも多大な影響を与えているほどだ。
なぜこれほどまでに発展を遂げていったのか。その理由をamazonのビジネスモデルやマネタイズ法を紹介しながら解説をしていく。
目次
1.品揃えの徹底という極めてシンプルで効果的なビジネスモデル
amazonのビジネスモデルは「出来る限り多くの品揃えを実現し、それをネットで販売する」というシンプルなものだ。
1-1. 「amazonならなんでも買える!」という刷り込み
しかし、その点こそがamazonを大きな成功へと導いた極めて重要なポイントなのである。
インターネットでのビジネスは従来の店舗型の小売り以上に顧客の満足度が成否を分ける大きな鍵となる。
なぜなら、選択の幅が生活圏の範囲内に限られる店舗に対してインターネットでは多くのサービスの中から自由に選ぶことができるからだ。もし、ユーザーがそのサービスでは満足できないと感じたならば、よりよいものを求めて他のサービスを探すだろう。
そこで、amazonが目指したのが、未だかつてないほどの規模で品揃えを徹底することだ。
結果として、amazonなら何でも買えるという認識がユーザーの中に深く刻み込まれ、次もamazonで購入しようという心理を生み出すことになる。
同時に、その評判はSNSなどの口コミで広がり、ますますamazonの利用者は増えていくことになったのだ。
1-2. ニッチ商品ファンの獲得
しかも、amazonの売上を分析して分かるのは一部の人気商品よりもむしろ、その他のニッチ商品の方が売上の多くを占めているという事実だ。
人はどこにでも売っている商品よりも希少性の高いものを購入したときの方がより大きな満足感を得られるものである。
つまり、amazonは品揃えを徹底することで、顧客満足度を高めるというビジネスの根幹部分を強固なものにしていったのだ。
2.品揃えの充実が低価格化につながる正のスパイラル
品揃えを充実させ、顧客が増えると当然流通量は増加することになる。
すると、流通に必要な単価が下がり、低コストでのビジネスが可能になってくる。
その問題については、Amazonはどのようにして解決していったのだろうか?
2-1. 多店舗・他企業に出店
そこで、amazonが行ったのがさまざまな店舗や企業にamazon.comのスペースで出店してもらうという方法だ。
低コストでのビジネスが可能ということで多くの販売者がamazonに集まることになる。そして、重要なのが販売者の間で価格競争が起き、低価格化が進行していくということだ。
そうすれば、利用者は増え、その需要に応えるためにamazon自体の仕入れ量も増大していく。すると、大量仕入れに伴う値引きでさらなる低下価格化が可能になるというわけだ。
もちろん、そうなれば顧客満足度はますます高くなるのはいうまでもないだろう。
3. amazonのマネタイズ法1:プラットフォームビジネス
品揃えの充実と低価格化によってビジネスの基盤を固めれば、そこからさまざまなマネタイズ法を展開していくことが可能となる。
まず、先ほど紹介したように、amazon.comへの出店をしたい業者を募集し、出店の許可を与える代わりに登録料や販売手数料を徴収するという方法がある。
たとえば、登録料が月額5000円で商品が1点売れるごとに販売手数料が100円発生するといった具合だ。これならばamazon自体が小売りをしなくても利益がどんどん増えていくことになる。
こうした話を聞くと、「お金を取られるぐらいなら自分でネットショップをオープンした方がよいのでは?」と思う人がいるかもしれない。
しかし、単独でネットショップを行うのとすでに巨大な市場を形成しているamazonでは集客力に天と地ほどの差があるのだ。
必然的に、多くの業者はお金を出してでもamazonのプラットフォームを利用したいと考えるようになるわけである。
つまり、ここから学べるのは、「人の集まるプラットフォームさえ構築してしまえばあとはその仕組みをどう回せばよいかを考えさえすればよい」という事実だ。
それが理解できれば、amazonが初期の段階で顧客満足度とそれに伴う集客にこだわった理由が分かるというものだ。
4. amazonのマネタイズ法2:会員制度の導入
顧客が一定以上の規模になると、会員制を設けてサービスの差別化を行うことも可能だ。
たとえば、下記のようなサービスを展開している。
1. Amazonプライム
たとえば、amazonではAmazonプライムという有料会員サービスを行っている。
月額数百円程度の会費を払えば、商品が通常よりも早く届いたり、一定範囲の音楽やラジオが聴き放題になったり、映画やドラマが見放題になったりとさまざまな特典が付くというサービスだ。
2. AmazonStudent
会費の安い学生向けのサービス。
3. Amazonファミリー
オムツなどの育児用品が安く購入できるファミリー層向けのサービス。
この手のサービスは他にもよく見かけるが、品揃えがよくて使い勝手のよいamazonであれば、顧客にとっての魅力はより一層高いものになるだろう。
また、加入してその便利さを味わってもらえば、使わなければ損ということになる。
その結果、高いリピート率が期待できるのがこのマネタイズ法の優れた点だ。
ちなみに、Amazonプライムでは30日間の、AmazonStudentでは180日間の無料お試し期間が設けられている。
そうすることによって、入会時の抵抗感を減少させることができる。そして、一度入会してしまえば退会するのは面倒になるものだ。
このように、会員にさえなってもらえればあとは自動的にお金が入ってくるため、ビジネスを行う際には会員制についてはぜひとも検討をしてほしいところである。
5. amazonのマネタイズ法3:サブスクリプションビジネス
amazonではサービスを継続的に提供するサブスクリプションビジネスも展開している。
5-1. 一定の収入を長期に渡り確保できるシステム
日本語に訳せば定期購入や定期購読といった意味合いだ。たとえば、雑誌や日本酒などを定期的に自宅に配送するサービスがこれにあたる。
品揃えが豊富で通販が基本となっているamazonにとってはもってこいのサービスだ。
この方法は一度契約を結んでしまえば、一定の収入を長期に渡って確保できる点が魅力である。
開業した店舗のほとんどは10年以内に倒産するという現実があるが、その原因の多くはキャッシュフローの停滞によるものだ。
それを防ぐ手段として、定期収入が確保できるサブスクリプションビジネスは有力な選択肢だといえるだろう。
5-2. amazonがサブスクリプションビジネスで失敗しない理由
ちなみに、amazonにおけるサブスクリプションは小売販売ではなく、コンテンツ事業が中心だ。代表的なサービスとしては動画見放題やKindle Unlimitedでの本の読み放題などがある。
これらのサービスは最初に興味があるものを見ることができれば、顧客は一定の満足感を得るものだ。
その上、新しいコンテンツも配信され続けているためにサービスを継続するケースが多いのである。
事業者側とすれば顧客がサービスを利用しなくても定期的に契約料が入ってくるため、魅力的なビジネスだといえるだろう。
6. amazonのマネタイズ法4:ロイヤリティビジネス
amazonのように巨大な市場があれば、それを背景にロイヤリティビジネスを展開することも可能だ。
たとえば、アマチュア作家の依頼を受けてその人の書いた小説を出版し、その売上の一部を収入として得るといった手法がそれにあたる。
ちなみに、amazonではユーザーがKindle Unlimitedを使用し、自分の著作物を本として設定するだけでネット上で電子書籍として販売できるようになっている。そして、売上の70%を著者に渡し、残りの30%を手数料としてamazonが得ることになるわけだ。
このビジネスモデルの優れている点は、電子書籍での販売であるため、amazon側の元手がほとんどかかっていないことだ。
また、著者にとっても自費出版のように製本代などを請求されることなく、無料に近い形で販売できるのでお互いにとって利益のあるビジネスだといえる。
起業を考えている人にとっては新しいビジネスモデルとして大いに参考にしてほしいところだ。
7. amazonが重視しているのは目先の利益よりも将来への投資!
amazonは魅力的なビジネスモデルやマネタイズ法を発案実行し、巨額の売上を叩き出してきた。
しかし、その一方で、いつも赤字を出すことでも有名だ。それを不思議に思う人も少なくないだろう。
また、それにも関わらず、株価の推移は極めて堅調である。
つまり、これは利益が出ないのではなく、利益を出さないようにしていることを示しているのだ。
常に将来を視野に入れ、そのための投資を行い続けているための赤字であり、それが分かっているからこそ投資家からの信頼は揺るがないというわけだ。
たとえば、AI搭載のスピーカーを開発し、amazonのページを開かなくても商品購入が可能なシステムの構築を目指していることなどは、まさに将来への投資だといえるだろう。
さらに、スーパーマーケットを買収し、リアル店舗に対しても新しいビジネスを仕掛けていく動きもある。
おいそれと真似できることではないが、こうした目先の利益に囚われない姿勢はビジネスを行う上で学ぶべき点が多いのではないだろうか。
8. 確固としたビジネスモデルの構築が成功への第一歩
amazonの成功の根底にあるのは確固としたビジネスモデルの構築だ。
もちろん、個々のアイディアも大切だが、それも正しいビジネスモデルを構築してこそだ。
もし、その段階で間違っていれば、そこに何を積み上げても上手くはいかないだろう。
起業を検討している人はその点についてよく考え、成功への着実な一歩としていこう。