クラウドポートが扱う個人向け投資サービスが人気だ。個人向けの投資に関心が集まる中、時代のニーズを上手にキャッチしながら鮮やかな事業変更を見せてくれるなどの経営手腕が注目されている。
ソーシャルレンディング業界を牽引するかのような、勢いのある企業とそのビジネスモデルについて紹介していく。
目次
1.クラウドポートの誕生に至る経緯
クラウドポートは、急成長の業界であるソーシャルレンディングをキーワードに、貸付投資をするオンラインマーケットFunds(ファンズ)を運営する、金融商品取引業を扱う会社だ。
2016年11月に代表取締役の藤田雄一郎氏が立ち上げた。同氏は、早稲田大学商学部を卒業したのち、サイバーエージェントに入社している。その後、自身でスタートアップを創業したのをきっかけに、起業家としての道を歩む。2013年より、大手ソーシャルレンディングサービスの立ち上げに経営メンバーとして携わった後、クラウドポートを創業した。
1-1.設立の経緯
では、クラウドポートが設立された直接のきっかけについて説明しよう。クラウドポートの誕生秘話とは、簡単にいってしまえば、藤田氏が前任のソーシャルレンディング会社でなんとなく感じていた、こうだったらいいのにという希望を形にした企業だ。
当時急成長していたソーシャルレンディング業界において、投資家がよくこぼしていたのが、投資先の選択肢がありすぎて結局どこがいいのかわかりにくいという悩みだった。そこに目を付けた藤田氏は、そういった投資家たちの比較・検討のために一役買えるウェブサイトの制作に可能性を見出していた。
1-2.共同創業者との出会い
そんな矢先に藤田は、のちの共同創業者である柴田陽に出会うこととなる。アメリカ帰りのスタートアップ経験者であった柴田が現地で目にした、クラウドファンディングの比較サイトがヒントになったのだ。
柴田の複数スタートアップの立ち上げの経験とシステムへの見識、そして、藤田自身のこれまで培ってきたソーシャルレンディングに関する豊富な知識を、うまく組み合わせて誕生したのがクラウドポートなのである。
2.クラウドポートのビジネスモデル
では、クラウドポートはどんなビジネスモデルを採用しているのか、その秘密に迫ってみよう。まず、区別しておきたいのが、クラウドポートが扱っているのはソーシャルレンディング事業そのものではないという点だ。
比較サイトというフィルターを通して、ソーシャルレンディングに焦点を当てているという点がこの会社のユニークなところである。では、なぜそのような切り口になったのかというと、当時同業他社が増えて業界が盛り上がっていく中で、俯瞰して公平な目で客観視できるようなメディアや情報の必要性を感じていたからだという。
そのような新しい役割を自ら買って出た藤田氏は、宣伝役に自ら回ることで、さらなる市場の発展を担えるのではないかと目論んだのだ。
しかし、比較メディアをやるからには運営していくためにも資金源が必要である。企業経営という現実的な部分をどのようにマネタイズしているのかといえば、その多くがアフィリエイト報酬なのだという。仕組みは、興味のある読者を各社のページに誘導し、口座開設があれば仲介料的な手数料を徴収するというシステムだ。
今では、積極的に活動中のソーシャルレンディング投資家たちが固定客として毎月サービス利用するため、業績は好調である。2019年7月末以降には、総額7億円にも上る調達を予定しているという。
そのうえ、クラウドポートだけのオリジナルである、投資情報を一括管理できる機能をリリースし、さらなる使いやすさを追求している。また、この比較サイトをバネにして、2019年1月からは個人向けの投資サービスFundsをスタートさせ、大胆にも事業スイッチをするに至っている。因みに、初めの比較サイトは他メディアへ事業譲渡されている。
3.経営の柱にある理念とは?
これまでの自らの経験をフルに活かし、ユーザーのニーズをしっかり受け止めるクラウドポートだからこそ、どのような理念のもとに経営されているのか、気になるのではないだろうか。
金融商品というと投資する余裕のある、ある程度の裕福な層がターゲットかというとそうではないところが新しい。クラウドポートが目指しているコアとは、投資は富裕層か金融知識の豊富なエリートのためだけものであるという従来的な考えを捨て、ありとあらゆる人に収益を安定させて投資を楽しむ機会を創造しようとしている点なのである。
これまで敷居が高いと思われていたのが、経験や知識、資産の壁だが、そこをテクノロジーの力で取り払ったのである。これにより、情報や資金に乏しい人にも参入のチャンスを与えることができるようになったのだ。
このような経営理念を通じて、人々の先行き不透明な経済的不安を少しでも払拭して、希望のある社会の構築を目指しているという。
4.Fundsのビジネスモデルの優れた点とは?
クラウドポートのウリといえば、金融商品を従来よりもぐっと身近な存在に感じさせてくれるということだ。
現時点でのメインの事業は、個人で1円から取引可能な貸付ファンドのマーケットプレイスである。資産形成が益々重要になってくる中で、事業資金が必要な企業とのマッチングをさせ、スマホひとつで貸付ファンドの取引が済んでしまうという手軽さがいい。
つまり、ユーザーに高いレベルの知識や資金力、技術などを求めないために人気が高いということだ。肝心な部分はクラウドポートで資金集めをし、ファンド組成企業へ送金してから企業への事業資金の貸付を行う。優れた点は、顧客側の手軽さに焦点を当てている点だろう。
また、ユーザー側にしてみれば、株や外貨などとは違い忙しい時間の合間を縫ってできるところもポイントだ。
事実、ユーザー層は20代から40代の働き盛りの男性で、平均的な年収のサラリーマンが中心である。老後資金の蓄えへの不安も高まっていることから、ファンドの完売なども相次ぎ、抽選形式のファンドであっても予算以上の応募が集まることも多々ある。
こうしたことから、ビジネスとして見た際に、国民全員が資産運用をしなければならなくなった時代のニーズにもマッチしており、世情が後押しをする優れたビジネスでモデルあると言える。
5.成功の秘訣とは
こうしてみると、クラウドポートとは、柔軟な発想を持ちながら成長企業としてしっかりとした歩みを続けている、ということがわかるのではないだろうか。
代表の藤田氏の着眼点がよいだけでなく、必要なスキルを持つビジネスパートナーにも恵まれている。日本人の資産運用時代という、時流にしっかり乗り、スマホ一つで知識や経験がなくても手軽に取引が済ませられるという、革新的でありながら多くの人が惹かれる的確なニーズの把握も上手い。
また、運転資金が必要なスタートアップのニーズにも答えることができるため、気軽な出資がしにくい銀行とは一線を画している。
スタート時は、アメリカのサイトにヒントを得た比較メディアとして力をつけていったクラウドポートは、それだけに飽き足らず常に先を見る経営方針が成功の秘訣だといえるだろう。
比較サイトが安定してきた段階で、業界の知名度をPRすることに成功した。当初からの目的であった周知の役目を果たしたとばかりに、サイトを他メディアに譲って身を引いたのだ。
その後、元々のソーシャルレンディング業界での経験を活かすために、一見大胆とも見える事業変更を華麗に成し遂げている。そのような決断力や行動力、また、常に先を見据えた戦略的経営の手腕があるからこそ、今後もさらに成長をし続ける可能性に満ちた企業なのである。
6.時流を上手に読んだクラウドポートのビジネスモデル
クラウドポートは、ソーシャルレンディング業界の認知度を上げるべく比較サイトとしてスタートした。
しかし、ある程度認知度が上がってくると、それに飽き足らずにスマホ一台で1円から簡単に投資取引ができるしくみを構築したのである。今後も、成長が期待される企業のビジネスモデルから学べることは多いだろう。