新規事業を立ち上げて成功させるのは、大企業にとっても中小企業にとっても簡単なことではない。
しかし、過去には新規事業を見事に成功させて業績を上げた企業があることもまた事実。
ここでは、新規事業を成功させるためのポイントと過去の成功事例について紹介する。
目次
1. 新規事業における3つのパターン
新規事業を成功させるポイントをみる前に、まずは新規事業の基本について押さえておきたい。
新規事業におけるパターンは、大きく3つ。
1.本事業に関連する事業
2.本事業とは別の事業
3.完全に新しい市場での新規事業
本事業に関連する事業を立ち上げる場合、すでに企業が所有しているリソースを利用することができる。
新規事業に役立つ資源や設備、知識、技術などがあるのならば、比較的ハードルは低いといえるだろう。
例えば、プラスチック容器を作っていた企業が新しくCDケースを作る場合などがこれに当たる。
次に、本事業とはまったく違う市場で新規事業を立ち上げる場合である。
たとえ本事業と関連がなくても、大きな注目を浴びる分野に参入したいと考えるのはごく自然なことだといえる。
しかし、これから伸びると考えられる市場に参入したいのは他の企業も同じこと。
激しい競争の中でどれだけの勝算があるのか、よく考えてから新規事業を立ち上げたい。
そして、最も難易度が高いのが完全に新しい市場での新規事業である。
0から1を生み出さなければいけないため、立ち上げるための労力は1つ目や2つ目のパターンとは比べものにならない。
つまり、iPhoneを生み出したアップル社のような先駆者になるということである。
リスクは高いが、成功したときに得られるリターンもまた大きいといえるだろう。
2. 新規事業を成功させるためのポイント
新規事業を生み出すというのは会社にとって大きなチャレンジであり、思いついたことをやみくもに試したところで成功する確率は高くはない。
しっかりと成功のためのポイントをつかみ、綿密に計画を練ることが重要である。
2-1. ニーズの調査
まず、立ち上げたい新規事業にニーズがあるかどうかを調査しなければいけない。
社内から斬新でユニークな案が出ると、つい勢いで企画を進めてしまいがちである。
しかし、言うまでもなく会社の目的は利益を上げることだ。
どれだけ素晴らしい案であったとしても、商品やサービスが売れなければ意味がない。
行動に移す前に、しっかりと市場調査をすることは必要不可欠だといえる。
2-2. 外部からの人材確保
そして、新規事業の立ち上げが決まったら積極的に外部から人材を取り入れたい。
特に、本事業と関連のないフィールドで勝負するのであればなおさらである。
新規事業を成功させるには、スピードも大切。
他の企業に置いて行かれないようにするためにも、専門知識・技術がある人材の力を借りてぐんぐん事業を成長させていきたい。
2-3. 情熱を絶やさない
最後に、どれだけ情熱を持って新規事業の立ち上げに取り組めるかというのも重要なポイントである。
新規事業が安定して黒字を出せるようになるまでには、時間がかかることが多い。
誰もが知っているTwitterでさえ、最初の2年は赤字であった。
このことからも、なかなか利益につながらなくても辛抱強く新規事業を続けていけるだけの情熱は欠かせないといえるだろう。
3. 成功事例1富士フイルム
よく知られる富士フイルムであるが、一時期経営危機にさらされていたことはご存じだろうか。
会社名からも想像できる通り、富士フイルムは写真のフィルムを製造販売する会社であった。
しかし、デジタルカメラが主流になったことによりフィルムの売り上げが大幅に落ち込んだのである。
フィルム関連市場の縮小は、なんと年率20%~30%。
この数字が会社にとって脅威であったことは、想像に難くないであろう。
このような時代の流れから、富士フイルムは新規事業の立ち上げを余儀なくされた。
そして、進出を決めたのはなんと化粧品業界。一見フィルムとは何の関係もなさそうに思えるが、古森重隆社長はフィルム製作に使用してきたコラーゲンに注目したのである。
長年研究してきたコラーゲンを極限まで小さくする技術を最大限に活用した結果、富士フイルムの化粧品事業は見事成功した。
社長の素晴らしい機転によって、会社は持ち直したのである。
4. 成功事例2東京大学×DeNA
新しい事業を開拓した例として、東京大学とDeNAがある。
東京大学は言わずと知れた日本最高峰の大学、DeNAはソーシャルゲームプラットフォームMobageを開発した大手インターネット関連企業である。
そして、この2つが共同で開発したのが「遺伝子検査サービス」だ。
このサービスは、唾液から遺伝子解析を行って体質や病気のリスクを調べるというものである。
検査項目は最大283項目で、がんなどの生活習慣病のリスクから薄毛になりやすいかどうかまで幅広く知ることができる。
サービスの利用方法は非常にシンプルに仕上げられており、インターネットで検査キットを注文して取り寄せ、唾液を採取して東京大学医科学研究所に送付するだけ。
この新しい事業は大成功で、実際にサービスを利用した人からは「健康意識が高まった」などのポジティブな感想が数多く寄せられた。
ちなみに、DeNAが4年間で立ち上げた新規事業の数は40にも上る。
遺伝子検査サービスは、新規フィールドの開発に長けたDeNAと日本最先端の研究をしている東京大学だからこそ実現した新規事業だといえるだろう。
5. 成功事例3パナソニック
家電製品で有名なパナソニックであるが、取り組んでいる事業はそれだけではない。
会社がそれまでに培った技術を生かし、2014年から「アグリ・エンジニアリング事業」に参入した。
アグリ・エンジニアリング事業は、農業の生産性を向上させる目的で打ち立てられたもの。また同時に、農業に従事する労働者の負担軽減も目的としている。
この新規事業の中でも注目したいのが、パナソニックの持つ環境コントロール技術を応用した「パッシブハウス型農業プラント」である。
これを利用することで年間を通しての安定した生産が可能になり、消費者はその恩恵を受けることができる。
さらに栽培のための手間も大幅に省けるため、他の作物の栽培により人手と時間を割くことができる。
このパッシブハウス型農業プラントは実際に導入した農園から高い評価を受け、見事成功という形になった。
6. 成功事例4お金のデザイン
お金のデザインは、2013年に設立されたベンチャー企業である。
歴史こそ長くないものの、日経新聞に取り上げられるなど注目度には大企業に引けを取らないといえる。
さらに新生銀行やJAL、SBI証券などの大手銀行や大手企業と業務提携を結んでいることからも、かなりの信頼を得ていることがうかがえる。
2014年には、ETFに特化した投資一任運用サービス「ETFラップ」をリリースして話題となった。
そして、そんなお金のデザインが2016年に開始したサービスがETFラップをさらに進化させた「THEO」である。
これはロボットが自動的に投資先を選んでくれる資産運用サービスで、簡単な質問に答えるだけでいいという手軽さが特徴である。
このサービスはまるでプロのような投資ができると評判になり、利用者数は瞬く間に急上昇。
専門性を低くして多くの新規ユーザーを獲得したことが、成功のキーだったといえるだろう。
7. 成功事例5シーラック
シーラックは、明治時代からかつお節の製造を行っている老舗の会社である。
かつて、縁起ものであるかつお節は結婚式の引き出物として定番中の定番であった。
しかし、時代の変化とともに引き出物としての需要は激減。
そこで、シーラックはオリジナリティの高い商品の開発に乗り出した。
そうして誕生したのが、「バリ勝男クン」。
バリ勝男クンはチップス状のかつお節を甘辛く味付けしてオーブンで焼いたもので、スナック菓子感覚で手でつまんで食べられる。
この「ありそうでなかった」商品の評判は上々で、ユニークなCMの効果も相まって売り上げは順調に伸びていった。
現在バリ勝男クンは、地元静岡ではコンビニで必ず並べられているほどの定番商品となっている。
8. 新規事業を立ち上げるなら過去の事例から学ぶことが大切
日本では約2割の会社が新規事業の立ち上げを試みているといわれている。
時代の変化が激しい現代では、既存事業だけでは生き残るのが難しい証拠だともいえるだろう。
そして、新規事業を成功させるなら過去から学ぶことが大切。
成功事例をよく研究しながら、しっかりとアイデアを練ることをおすすめしたい。